結論(30秒でわかる要点)
育成就労制度では、受入企業が外国人材に対して段階的な日本語教育を提供することが法的義務として明文化されている。
- 入国後講習は、日本語能力や入国前講習の有無により、総時間数が110時間〜320時間となる
- 育成期間中にA2相当目標講習100時間以上の受講機会を提供する義務がある
- eラーニング単独では要件を満たせず、登録日本語教員によるライブ授業が必要
対象者:育成就労制度への移行を検討している受入企業の人事・管理担当者、監理支援機関の担当者
⚠️ 本制度は2027年4月1日施行予定ですが、省令・分野別運用方針は随時更新されます。最終判断は必ず最新の公的資料または専門家にご確認ください。
はじめに

「育成就労の日本語教育って、具体的に何をすればいいの?」「eラーニングで対応できると思っていたが、それだけでは足りないと聞いた」——そんな疑問や不安を抱えている受入企業の担当者は、今まさに増えています。
2027年4月1日、技能実習制度に代わる「育成就労制度」がいよいよ施行されます。この新制度の最大の特徴は、外国人材の「育成」が受入企業の法的義務として明確に位置づけられた点です。そしてその育成の中核に据えられているのが、日本語教育です。
この記事では、以下の疑問をすべて解決します。
- 育成就労制度における日本語教育の義務の全体像(時間数・レベル・形式)
- なぜeラーニング単独では要件を満たせないのか
- 登録日本語教員・認定日本語教育機関とは何か
- 受入企業が2027年4月までに準備すべき具体的なアクション
育成就労における日本語教育義務の基礎知識

「育成就労 日本語教育 義務」とは何か
育成就労制度における日本語教育義務とは、受入企業(育成就労実施者)が外国人材の入国前後から育成期間中にわたり、段階的な日本語能力の習得を法令に基づいて支援・提供しなければならない一連の義務のことを指す。
従来の技能実習制度では、日本語教育はあくまで「努力義務」の色合いが強く、対応の質にばらつきがありました。しかし育成就労制度では、「3年間で特定技能1号水準の人材を育てる」という明確なゴールが法律で定められており、日本語能力の達成基準も段階ごとに設定されています。
技能実習制度との決定的な違い
技能実習制度は建前上「技術移転による国際貢献」を目的としており、日本語要件は介護分野を除き原則として設けられていませんでした。一方、育成就労制度では、就労開始時にA1相当以上の日本語能力を有していること、またはA1相当の講習を受講していることが求められます。さらに、育成期間中や特定技能1号への移行時にも、段階的な日本語能力の基準が設けられています。
制度の目的と実態の乖離、外国人の権利保護の不十分さなどが技能実習制度の廃止理由として指摘されてきました。育成就労制度はこれらの課題を解消するため、「育成」を正面から掲げた制度として設計されています。
日本語能力の段階別目標
育成就労制度では、以下のように段階ごとに日本語能力の目標が設定されています。
| 時期 | 求められる日本語レベル | 対応する試験の目安 |
|---|---|---|
| 就労開始前(入国前後) | A1相当以上 | JLPT N5・JFT-Basic等 |
| 就労開始後1年経過時 | A1相当以上の試験受験(転籍条件としてA2.1相当) | JFT-Basic A2.1等 |
| 育成就労終了・特定技能1号移行時 | A2相当以上 | JLPT N4・JFT-Basic A2.2等 |
| 特定技能2号移行時 | B1相当以上 | JLPT N3等。ただし、介護分野は特定技能2号の対象外 |
※分野によって求められる日本語水準や試験は異なります。なお、介護分野は特定技能2号の対象外であるため、長期就労を目指す場合は、介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ変更するルートが中心になります。必ず最新の分野別運用方針をご確認ください。
日本語教育義務の具体的な内容と時間数

Step1:入国後講習(入国直後に実施)
育成就労外国人が入国した直後に実施する「入国後講習」は、日本語教育の最初の関門です。必要な総時間数は、外国人のA1相当試験の合否と、入国前講習の実施有無によって変わります。
| 日本語能力・入国前講習の状況 | 入国後講習の総時間数 | 補足 |
|---|---|---|
| A1相当以上を証明できない場合 | 320時間以上 | 過去6か月以内に160時間以上の入国前講習を受けている場合は160時間以上 |
| A1相当以上を試験等で証明できる場合 | 220時間以上 | 過去6か月以内に160時間以上の入国前講習を受けている場合は110時間以上 |
入国前に日本語レベルを客観的に把握しておくことで、入国後の教育計画が大きく変わります。入国前講習の有無やA1相当以上の日本語能力を証明できるかによって、入国後講習の総時間数が大きく変わります。そのため、採用前に日本語能力を客観的に確認しておくことが重要です。
Step2:就労課程100時間(認定日本語教育機関での履修)
入国後講習の中には、認定日本語教育機関が設置する「就労のための課程」において100時間以上の授業を受けさせることが義務として定められています(育成就労法施行規則13条7号ヘ)。
ただし、A1相当以上の試験に既に合格している場合は、この100時間要件が免除される場合があります。
Step3:育成期間中のA2目標講習(育成就労実施者の義務)
育成就労実施者には、外国人材が特定技能1号評価試験を受験するまでの間に、A2相当目標講習(原則100時間以上)を受講する機会を提供する義務があります。この費用は受入企業が負担することが求められます。
なぜeラーニング単独ではダメなのか
育成就労制度で義務化されている日本語教育には、以下の形式要件があります。
- 1クラス20人以下の少人数制
- 対面または双方向オンライン(リアルタイム)での実施
- 認定日本語教育機関の「就労」課程による授業、または当分の間は登録日本語教員による一定の講習
eラーニングは「録画・非同期型」が多く、双方向性・リアルタイム性の要件を満たしません。eラーニングは自習ツールとして補完的に活用することはできますが、義務要件の時間数にはカウントされないと理解しておく必要があります。
登録日本語教員・認定日本語教育機関とは

登録日本語教員とは
登録日本語教員とは、2024年に新設された国家資格を持つ日本語教師のことです。それまで日本語教師には国家資格が存在せず、誰でも教えられる状況でしたが、この資格の創設により教育の質が制度として担保されるようになりました。
育成就労制度では、施行後当分の間は「登録日本語教員による授業」を認定日本語教育機関の就労課程での受講とみなす経過措置が設けられています。
認定日本語教育機関とは
文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関のことです。カリキュラムや教員配置などについて一定の基準を満たしていることが審査されており、育成就労制度における義務的な日本語教育は、原則としてこうした認定機関が設置する「就労のための課程」で行うことが求められます。
企業の選択肢:認定機関との連携 vs 自社での教員確保
| アプローチ | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 認定日本語教育機関と連携 | カリキュラム・教員の質が保証される、準備の手間が少ない | 近隣に機関がない場合は調整が必要、費用が発生する |
| 登録日本語教員を確保(自社または外部委託) | 柔軟なスケジュール調整が可能、施設の実情に合わせやすい | 教員の資格確認が必須、1クラス20人以下の人数制限あり |
どちらのアプローチを選ぶにしても、2027年4月の施行に向けた準備は早ければ早いほど選択肢が広がります。
受入企業の準備事例:現場で起きている変化
事例①:早期に日本語レベル測定を導入した施設の場合
関東地方のある介護施設では、育成就労制度への移行を見据え、採用選考の段階から外国人材の日本語レベルをJFT-BasicやJLPTで客観的に測定する仕組みを導入しました。その結果、入国後講習に必要な時間数をあらかじめ計画に組み込むことができ、「入国してから何時間必要かわからない」という混乱を防ぐことができました。
日本語レベルがA1相当以上であれば入国後講習は220時間以上(入国前講習なしの場合)に短縮されるため、採用前の測定は教育コスト・時間の両面で大きなメリットをもたらします。
事例②:認定機関との連携で体制を整えた監理支援機関の場合
中部地方のある監理支援機関では、傘下の受入企業に代わって近隣の認定日本語教育機関と連携協定を締結し、オンラインでのライブ授業(双方向・20名以下)を一括で手配する体制を構築しました。
受入企業側は個別に教員を探す必要がなくなり、教育の質も担保されるという双方にメリットのある仕組みです。「制度対応は準備した企業が有利になる」という言葉の通り、早期に動いた機関ほど選択肢が広がっています。
よくある質問(専門家に聞く)
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護士・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
育成就労の日本語教育に関するよくある質問
Q1. 育成就労の日本語教育義務は、いつから適用されますか?
A. 育成就労制度の施行日は2027年4月1日です(2025年9月26日の閣議決定)。ただし、施行前の準備期間として監理支援機関の許可申請や育成就労計画の事前認定申請は施行前から行うことができます。施行日以降に受け入れる育成就労外国人に対して、日本語教育義務が適用されます。
Q2. 日本語教育の費用は誰が負担するのですか?
A. 入国後講習および育成期間中のA2目標講習にかかる費用は、受入企業(育成就労実施者)が負担することが求められています。外国人材本人に費用を負担させることは認められていません。また、A2目標講習の受講時間については、労働時間として扱うことが原則とされています。
Q3. 外国人材がA1相当の試験に合格していれば、入国後講習の日本語部分は免除されますか?
A. 入国後講習の総時間数は短縮されます(320時間→220時間、または160時間→110時間)。さらに、認定日本語教育機関の就労課程100時間の要件についても、A1相当の試験に既に合格している場合は免除される構造となっています。ただし、施行規則の条文を正確に確認し、個別の状況に応じて判断することをお勧めします。
Q4. 育成就労外国人の日本語能力が転籍(転職)に影響するのですか?
A. はい、大きく影響します。本人意向による転籍の条件として、就労開始後1年経過時に「技能検定基礎級等+日本語試験(A1〜A2相当の範囲内で分野ごとに設定)」の合格が求められています。特に、A2.1相当(JFT-Basic)が転籍条件として新設されており、日本語能力の合否が人材の定着・流動性に直結する仕組みになっています。
Q5. 介護分野では日本語要件が特に厳しいと聞きましたが、具体的にどう違いますか?
A. 介護分野は、利用者様とのコミュニケーションが業務の核心であるため、他分野より高い日本語水準が重要になります。
ただし、介護分野は特定技能2号の対象外です。そのため、長期的に日本で働き続けるには、介護福祉士を取得し、在留資格「介護」へ変更するルートが中心になります。
また、介護福祉士国家試験の合格率は日本語レベルと強い関係があります。厚生労働省の調査では、N1保有者86.7%、N2保有者53.4%、N3保有者25.2%と、日本語レベルによって合格率に大きな差が出ています。介護施設では、早期から高い日本語水準を目指した教育支援が重要です。
厚生労働省の調査(令和6年度老人保健健康増進等事業)によると、介護福祉士国家試験の合格率はN1保有者で86.7%、N2保有者で53.4%、N3保有者で25.2%と、日本語レベルによって大きな差があります。介護施設においては、早期から高い日本語水準を目指した教育投資が、長期的な人材定着につながると考えられます。
まとめ:2027年4月に向けて今すぐ動くべき理由
育成就労制度における日本語教育義務のポイントを整理すると、以下の通りです。
- 入国後講習:外国人材の日本語レベルに応じて110〜320時間が必要。採用前のレベル測定が鍵
- 就労課程100時間:認定日本語教育機関または登録日本語教員によるライブ授業が必要(eラーニング単独は不可)
- 育成期間中のA2目標講習:受入企業が費用を負担して100時間以上の受講機会を提供する義務あり
受入企業が今すぐ取り組むべきアクションは次の5点です。
- 自社の分野別・段階別の日本語要件を確認する
- 採用予定者の日本語レベルを客観的に測定する仕組みを整える
- 認定日本語教育機関との連携か、登録日本語教員の確保かを早期に決定する
- 講習の時間割・費用・担当者を具体的に計画する
- 個人別の日本語学習プランをフォーマット化する
「準備した企業から動ける」——育成就労制度への対応は、今すぐ始めることが他社との差を生みます。まずは専門家への無料相談から、一歩を踏み出してみてください。
【YMYL注意】本記事の内容は2026年時点の情報に基づいています。育成就労制度に関する省令・分野別運用方針は随時更新されるため、最終的な判断は必ず最新の公的資料または専門家にご確認ください。
出典・参考
- 出入国在留管理庁「育成就労制度 FAQ(よくあるご質問)」…制度の目的・施行時期・日本語要件・転籍要件など制度全般の根拠
- 法務省・厚生労働省「育成就労制度の概要」(2025年9月30日公布の関係省令)…入国後講習の時間数・就労課程100時間要件の条文根拠(施行規則13条7号ハ・ニ・ヘ)
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能受入上限・国籍別ランキング・在留者数推移の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別介護福祉士国家試験合格率(N1〜N5)の根拠
- 文部科学省「日本語教育機関の認定等に関する法律(令和5年法律第41号)」…認定日本語教育機関・登録日本語教員制度の法的根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数(240万人・272万人)の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
