結論(30秒でわかる要点)
介護施設の人手不足による閉鎖は、低賃金・重労働・離職率の高さが複合的に絡み合い、経営を圧迫することで起こる構造的な問題です。
- 重要ポイント①:介護職の平均年収は他産業より約100万円低く、なり手不足が深刻
- 重要ポイント②:2025年の介護事業者倒産は176件で、2年連続で過去最多を更新。特に訪問介護の倒産が91件と突出している
- 重要ポイント③:2040年には272万人の介護職員が必要とされ、今後さらに不足が拡大する見込み
対象者:介護施設の経営者・管理職、介護業界の現状を知りたい方、閉鎖リスクへの対策を検討している方
> ⚠️ 本記事の制度・統計情報は執筆時点のものです。介護報酬改定や法制度は定期的に更新されるため、最新情報は厚生労働省などの公的資料でご確認ください。
はじめに

「人が足りない」「募集しても来ない」「ベテランが辞めていく」――介護施設の経営者や現場リーダーから、こうした声が後を絶ちません。人手不足は今や介護業界全体の構造的な課題であり、その深刻さは施設の閉鎖という形で表れ始めています。
介護ニーズが増え続ける一方で、なぜ施設は閉鎖に追い込まれるのでしょうか。「需要があるのになぜ?」と感じる方も多いはずです。実は、利用者が増えても人材が確保できなければ、サービスを維持することは不可能です。そしてその悪循環が、閉鎖という最悪の結末を招いています。
この記事でわかること:
- 介護施設が人手不足で閉鎖に至る根本的な原因
- 閉鎖リスクを高める施設の特徴と、今すぐできる対策
- 外国人介護士の活用など、具体的な人材確保の選択肢
介護施設の人手不足・閉鎖の現状と背景

用語の定義
「介護施設の人手不足による閉鎖」とは、必要な介護職員を確保できず、安全なサービス提供が困難になった結果、事業継続を断念せざるを得ない状態のことです。
閉鎖・倒産の現状データ
東京商工リサーチの調査によると、2025年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は176件となり、
2年連続で過去最多を更新しました。
特に目立つのが訪問介護事業者の倒産です。2025年の訪問介護の倒産は91件で、3年連続で最多を更新しています。また、人手不足を要因とする倒産も29件と過去最多を更新しており、介護現場の採用難が経営悪化に直結していることがわかります。
なお、年度ベースでは2024年度の介護事業者倒産が179件と過去最多でしたが、年次ベースでは2025年に176件となり、引き続き高水準で推移しています。
さらに、厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、介護職員の必要数は以下のように推移する見込みです。
| 年度 | 必要な介護職員数 | 2022年比 |
|---|---|---|
| 2022年(実績) | 215万人 | 基準 |
| 2026年(必要数) | 240万人 | +25万人 |
| 2040年(必要数) | 272万人 | +57万人 |
(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)
需要は急増しているのに、働き手が追いつかない。この構造的なギャップが、施設閉鎖の根本にある問題です。
人手不足が深刻化する背景
介護施設の人手不足が解消されない背景には、複数の要因が絡み合っています。
- 少子高齢化の加速:65歳以上の高齢者は2024年時点で約3,600万人(総人口の29.3%)に達し、過去最高を更新(内閣府調査)
- 介護需要の急拡大:団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」以降、介護サービスの需要はさらに増加
- 若年労働人口の減少:少子化により介護職の担い手となる若い世代そのものが減少している
- 他産業との競合:景気回復に伴い、より待遇の良い他産業に労働力が流れやすい状況が続いている
介護施設が閉鎖に至る5つの根本原因

原因①:賃金水準の低さ
厚生労働省が公表した令和7年の賃金構造基本統計調査に基づく集計では、賞与込み給与は、全産業平均が月39.6万円、介護職員が月31.4万円でした。
月額で8.2万円、年換算では約98.4万円の差があり、介護職員の賃金水準は改善傾向にあるものの、全産業平均との差は依然として大きい状況です。
夜勤や休日出勤が多い割に、労働の対価が見合っていないと感じる介護職員は多く、これが「なり手不足」と「離職」の両方を引き起こしています。
原因②:離職率の高さと悪循環
公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査では、
訪問介護員・介護職員を合わせた2職種計の離職率は12.4%、採用率は14.3%でした。
離職率は2年連続で低下している一方、採用率も低下しており、人材の入れ替わりが落ち着いたというよりも、新たな人材を採用しにくい状況が続いていると見る必要があります。
また、介護労働者の悩み・不安・不満では、「人手が足りない」が49.1%で最も高く、
次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が35.3%、「身体的負担が大きい」が24.6%となっています。
人員不足、賃金、身体的負担が重なることで、現場の疲弊と離職リスクが高まりやすくなっています。
人が辞めると残った職員の負担が増え、それがさらなる離職を招く。この悪循環が施設を疲弊させていきます。
原因③:身体的・精神的負担の大きさ
介護職は身体介助・夜勤・認知症対応など、心身ともに消耗する業務が多い職種です。「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが根強く残っており、就職希望者が集まりにくい構造になっています。
原因④:介護報酬改定による経営圧迫
介護事業所の収入は介護報酬(公定価格)が主体であり、3年に1度の改定に経営が大きく左右されます。2015年度のマイナス改定以降、倒産件数が急増したことからも、報酬改定の影響の大きさがわかります。人件費が上昇する一方で収入が増えない状況では、経営の継続が困難になります。
原因⑤:デジタル化・業務効率化の遅れ
介護現場では、記録業務、申し送り、シフト管理、請求業務などの間接業務が職員の負担になりやすく、
ICT化・介護ロボットの活用による業務効率化が重要になっています。
ただし、ICT機器や介護ロボットの導入状況は、記録ソフト、見守り機器、移乗支援機器、ナースコール、インカムなど機器の種類によって大きく異なります。そのため、「導入率1.0%」のように一つの数字だけで全体を説明するのではなく、自施設で負担が大きい業務から優先的に改善することが重要です。
閉鎖リスクを下げるための具体的な対策
Step1:待遇と評価制度を見直す
まず取り組むべきは、職員が「ここで働き続けたい」と感じられる環境づくりです。
- 介護職員等処遇改善加算の活用:令和6年6月から処遇改善関連の加算は「介護職員等処遇改善加算」に一本化されています。算定には計画書の提出、職場環境等要件への対応、実績報告などが必要です。未算定の事業所は、最新の要件を確認したうえで取得を検討することが重要です。
- 透明な人事評価制度の導入:頑張りが正当に評価される仕組みを作ることで、職員のモチベーションを維持できる
- 多様な働き方の導入:朝夕のみ・夜間のみ・副業OKなど、柔軟なシフト設計で幅広い人材を確保する
Step2:採用戦略を多角化する
従来の求人広告だけに頼らず、以下のような多角的なアプローチが効果的です。
- SNS・ホームページでの発信:施設の雰囲気や職員の声を積極的に発信し、3Kイメージを払拭する
- 外国人介護士の受け入れ:特定技能・技能実習・EPA・在留資格「介護」など複数の在留資格を活用できる。2024年12月時点で特定技能1号だけで44,367人が就労中(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)
- 資格取得支援制度の整備:介護福祉士などの資格取得を施設が支援することで、未経験者の採用間口を広げる
Step3:業務効率化で現場負担を軽減する
- ICTシステムの導入:記録業務・シフト管理・連絡業務をデジタル化し、間接業務の時間を削減する
- ユニットケアの導入:10名程度を1ユニットとし、担当スタッフを固定することで職員のストレスを軽減し、ケアの質も向上する
- ハラスメント相談窓口の設置:職場の人間関係トラブルに早期対応できる仕組みを整え、離職防止につなげる
具体的な事例から学ぶ:人手不足を乗り越えた施設の工夫

事例①:外国人介護士の受け入れで定員維持に成功
関東のある特別養護老人ホームでは、慢性的な人手不足により夜勤体制の維持が困難になっていました。そこで特定技能の在留資格を持つ外国人介護士を複数名採用。日本語でのコミュニケーション研修と、OJTによる実践指導を組み合わせることで、入職後3か月以内に独り立ちできる体制を整えました。
その結果、夜勤体制が安定し、定員割れを防ぐことができました。「最初は不安もあったが、利用者様との関係も良好で、職場全体が明るくなった」と現場リーダーは語っています。
学び:外国人介護士は「穴埋め」ではなく「新戦力」として位置づけ、受け入れ体制を整えることが定着のカギになります。
事例②:ICT導入と評価制度の見直しで離職率が改善
中部地方のある介護事業所では、記録業務に1日あたり平均1〜2時間かかっていたことが職員の大きな負担となっていました。ICTシステムを導入して記録・申し送りをデジタル化したところ、残業時間が月平均10時間以上削減。
さらに、人事評価制度を整備して「頑張りが見える化」されたことで、職員のモチベーションが向上。翌年度の離職率が前年比で約5ポイント改善するという結果につながりました。
学び:業務効率化と適切な評価制度の組み合わせが、定着率改善に効果的です。
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表で、元看護師・介護福祉士の大町潤一氏に、外国人介護士の活用と施設の人手不足解消について聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 外国人介護士は、どれくらいの期間働いてくれるものなのでしょうか?
「これは施設さんが一番気になるポイントですよね」と大町は理解を示します。
実際のデータから見ると:
- 平均勤続年数:3〜5年程度
- 長期定着:7年以上働く方も珍しくない
- 短期離職:1年未満は少数派
長く働く人の特徴:
- 職場環境が良い(人間関係、待遇)
- 生活面のサポートが充実
- キャリアパスが見えている
- 家族を呼び寄せられる(長期的な計画)
「日本人と同じで、『この職場で働きたい』と思えるかどうかが大きいです」
逆に、短期離職しやすいケース:
- 入職前の期待と現実のギャップ
- 孤立してしまう
- 給与・待遇への不満
「私たちは、定期的なフォローを通じて、早めに課題を見つけて対応するようにしています」
制度に関するよくある質問
Q1. 介護施設の人手不足対策として、外国人を雇用する場合、どの在留資格が使えますか?
A. 現在、介護分野で活用できる在留資格は主に4つあります。
- 特定技能1号:技能・日本語試験合格後に入国し、通算5年間就労可能。2024年12月末時点で44,367人が就労中
- 技能実習:現行制度では、介護職種で技能等を修得するための在留資格。制度改正により、2027年4月1日から育成就労制度へ移行予定
- 育成就労:2027年4月1日施行予定の新制度。人材育成と人材確保を目的に、原則3年間で特定技能1号水準の人材を育成する制度
- 在留資格「介護」:介護福祉士取得後に日本で長期就労が可能
- EPA(経済連携協定):フィリピン・インドネシア・ベトナムからの受け入れ。介護福祉士試験合格後は長期在留が可能
なお、特定技能「介護」は直接雇用が原則です。訪問系サービスについては、
2025年4月21日以降、一定の要件を満たす場合に従事できるようになりました。
具体的には、介護職員初任者研修課程等の修了、介護事業所等での実務経験、訪問業務に関する研修、同行訓練、緊急時対応体制、キャリアアップ計画の作成、適合確認書の発行などが必要です。誰でもすぐに訪問介護へ配置できるわけではないため、実際に従事させる場合は最新の厚生労働省資料と協議会事務局の案内を確認してください。
Q2. 人手不足で閉鎖しそうな介護施設の特徴はありますか?
A. 以下のような特徴が重なる施設は、閉鎖リスクが高い傾向にあります。
- 従業員5人未満の小規模事業所
- 設立から5年未満で実績・ノウハウが浅い
- 介護職員処遇改善加算を届け出ていない
- 経営方針が一貫していない
- 夜勤スタッフが1〜2名しか確保できていない
特に、従業員5人未満・設立5年未満の両方に該当する事業所は、過去の倒産統計でも多数を占めています。
Q3. 介護施設を閉鎖する際の手続きはどのように進めますか?
A. 閉鎖を決定した場合、おおむね以下の流れで進めることになります。
- 指定権者(都道府県・市区町村)へ事前報告
- ケアマネジャー・利用者・家族への説明(閉鎖3か月前を目安に)
- 廃止届出書の提出(廃業日の1か月前までが一般的)
- 職員の異動調整・退職手続き
- 事業所閉鎖
なお、廃業ではなくM&A(事業譲渡)を選択することで、利用者へのサービス継続・職員の雇用維持・廃業コストの軽減が期待できる場合もあります。閉鎖を検討する前に、介護業界に特化したM&A専門家への相談も選択肢の一つです。
Q4. 外国人介護士の介護福祉士国家試験の合格率はどのくらいですか?
A. 日本語能力レベルによって合格率に大きな差があります。
| 日本語能力レベル | 合格率 |
|---|---|
| N1保有者 | 86.7% |
| N2保有者 | 53.4% |
| N3保有者 | 25.2% |
| N4保有者 | 25.0% |
| N5保有者 | 12.5% |
(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」)
N2以上の日本語力を持つ方を採用・育成することが、国家資格取得と長期定着の両面で効果的です。施設として日本語学習支援を行うことも、合格率向上と定着率向上につながります。
Q5. 人手不足の介護施設が今すぐできる業務改善は何ですか?
A. 大きな投資をしなくても取り組める改善策として、以下が挙げられます。
- 記録業務のICT化:紙の記録をタブレット入力に切り替えるだけで、1日あたり1〜2時間の削減が見込める
- シフトの柔軟化:短時間勤務・時短正社員など多様な働き方を導入し、育児・介護中の職員が働き続けやすい環境を整える
- 1on1ミーティングの定期実施:管理職と職員が定期的に個別面談を行い、不満や悩みを早期に把握・解消する
- ハラスメント相談窓口の設置:職場環境の問題を放置せず、早期対応できる仕組みを整える
まとめ
介護施設の人手不足による閉鎖は、決して「他人事」ではありません。構造的な要因が複合的に絡み合っているからこそ、一つの対策だけでは解決が難しく、複数のアプローチを組み合わせることが重要です。
- 原因の本質は賃金・労働環境・離職の悪循環:低賃金→なり手不足→残った職員の負担増→さらなる離職という連鎖を断ち切ることが先決
- 外国人介護士の活用は有力な選択肢のひとつ:特定技能をはじめとする在留資格の活用で、即戦力となる人材を確保できる可能性がある。ただし「穴埋め」ではなく「長期的な仲間」として受け入れる体制が不可欠
- 閉鎖を防ぐには経営・採用・現場改善の三位一体が必要:処遇改善加算の活用、ICT導入、人事評価制度の整備を並行して進めることが、施設の持続可能性を高める
まずは自施設の現状を客観的に把握するところから始めてみましょう。「どこから手をつければいいかわからない」という場合は、外国人介護士の活用を含めた人材戦略の専門家への無料相談も選択肢のひとつです。
> 【YMYL注意】本記事の制度・統計情報は執筆時点のものです。介護報酬改定・在留資格制度・各種加算制度は定期的に更新されます。最終的な判断は、厚生労働省の最新公表資料および専門家(社会保険労務士・行政書士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年〜2040年の介護職員必要数の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能受入上限・在留者数推移・国籍別ランキング・施設種別受入状況の根拠
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」…介護職員の平均年収306万円・全産業平均410万円の根拠
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果の概要」…離職率13.6%・離職理由・ハラスメント関連データの根拠
- 内閣府「令和6年版高齢社会白書」…65歳以上人口約3,600万人・高齢化率29.3%の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別国家試験合格率の根拠
- 東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業の倒産調査」…2024年度倒産件数179件・小規模事業者の占める割合の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
