結論(30秒でわかる要点)
育成就労制度は2027年4月1日から施行される新しい外国人材受入制度で、企業にとってはメリットも大きい一方、費用負担・転籍リスク・職種制限・教育義務など4つの主要なデメリットがある。
- 費用負担の増加:1人あたり初期費用が50万円以上増加する可能性がある
- 転籍リスク:1〜2年で育てた人材が同業他社へ移れる仕組みになった
- 職種の縮小:技能実習の94職種から育成就労は17分野に大幅絞り込み
- 日本語教育義務:就労開始前からN5レベル以上の日本語能力確認が必要
対象者:育成就労制度の導入を検討している企業の人事・経営担当者、現行の技能実習から移行を考えている監理団体・受入機関の担当者。
⚠️ 制度の詳細は随時更新されます。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式資料で必ずご確認ください。
はじめに

2027年4月1日、長年にわたって外国人材の受入れを支えてきた技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」が始まります。「外国人を長く雇用できる」「日本語能力の高い人材を確保できる」といったメリットが注目される一方、企業側には見過ごせないデメリットや課題も存在します。
「育成就労制度に移行すると、コストはどのくらい増えるのか」「転籍されたら投資が無駄になるのでは」「うちの業種は対象になるのか」——そんな疑問を持つ企業担当者は多いはずです。
この記事でわかること:
- 育成就労制度の4つの主要なデメリットと、その具体的な内容
- 技能実習制度との違いを踏まえた、リスクの正確な把握方法
- デメリットを軽減するための実践的な対策と準備の進め方
育成就労制度とは?基礎知識と制度の背景

育成就労制度の定義
育成就労制度とは:外国人材が原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を習得し、日本の人材確保と育成を同時に目指す新たな在留資格制度のことです(2027年4月1日施行予定)。
技能実習制度は「国際貢献・途上国への技術移転」を建前としていましたが、実態は労働力確保の手段として機能しており、外国人材の権利保護が不十分なまま運用されてきたという批判が国内外から相次ぎました。
出入国在留管理庁のデータによると、2023年には技能実習生の失踪者数が9,753人と過去最多を記録しましたが、
2024年は約6,510人と3割ほど減少しています。それでも高水準が続いていることが、
制度の構造的問題として指摘されてきました。
こうした背景から、2024年6月に改正法が公布され、2027年4月1日の施行が正式に決定。2030年までの3年間は技能実習制度との移行期間として両制度が並存します。
技能実習制度との主な違い
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 制度目的 | 国際貢献・技術移転 | 人材確保・人材育成 |
| 在留期間 | 最長5年 | 原則3年 |
| 対象職種 | 94職種(171作業) | 17分野(特定技能と同じ) |
| 転籍 | 原則不可 | 一定条件で可能 |
| 日本語要件 | なし(介護職種を除く) | N5相当以上(A1レベル)必須 |
| 特定技能への移行 | 2号良好修了で試験免除あり | 原則として試験合格が必要 |
施行スケジュールの整理
- 2024年6月:改正法公布
- 2027年4月1日:育成就労制度施行開始
- 2027〜2030年:技能実習制度と育成就労制度の併用期間
- 2030年:技能実習制度の完全廃止
育成就労制度の4つのデメリット|企業が直面する課題

デメリット①:企業の費用負担が大幅に増加する
技能実習制度では、渡航費や送り出し機関への手数料の多くを外国人材自身が負担するケースが一般的でした。しかし育成就労制度では、外国人材が送り出し機関に支払う手数料を月給の2か月分までとし、それを超える分は企業または監理支援機関が負担する仕組みに変わります。
参考情報として、政府資料をもとにした試算では1人あたり初期費用が50万円以上になる可能性が指摘されています。費用の主な内訳は以下のとおりです。
- 渡航費用:航空券・ビザ取得費など
- 日本語教育費:入国前・入国後の語学研修費、教材費
- 試験対策費:技能評価試験・日本語評価試験の対策費用
- 生活支援費:住居確保、生活立ち上げ支援など
- 監理支援機関への管理費:月次の管理費用
特に中小企業にとっては、これらのコストが経営に直接影響するため、事前の資金計画が欠かせません。
デメリット②:転籍によって育てた人材を失うリスクがある
技能実習制度では原則として転籍(転職)が認められていませんでしたが、育成就労制度では一定の条件を満たせば転籍が可能になります。これは外国人材の権利保護という観点では大きな前進ですが、受入企業にとっては「育てた人材が他社に移ってしまう」というリスクを意味します。
転籍が認められる主な条件は以下のとおりです。
- 同一企業での就労期間が、育成就労産業分野ごとに定められた1年〜2年の所定期間を超えていること
- 技能検定試験基礎級などに合格していること
- 日本語能力がA1〜A2相当の試験に合格していること
- 転籍先が同一の業務区分であること
つまり、採用・入国・研修にかかった費用を回収する前に、人材が転籍してしまう可能性があるのです。特に賃金水準や労働環境の良い都市部の企業への転籍が進んだ場合、地方の中小企業が不利になるとの懸念も業界内で指摘されています。
デメリット③:受入可能な職種が大幅に絞り込まれる
技能実習制度では94職種(171作業)での受入れが可能でしたが、育成就労制度では特定技能制度(19分野)から航空・自動車運送業を除いた17分野に限定されます。
対象となる17分野は以下のとおりです。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
- リネンサプライ
- 物流倉庫
- 資源循環
(※新規3分野は評価試験等の整備中のため、実際の受入開始は2027年頃の見込み。航空・自動車運送業は特定技能のみの対象で、育成就労では受入不可)
この17分野に含まれない職種——
たとえば一部の製造業の細分類、繊維・衣服関連、印刷業などは、
育成就労制度では対象外となる見込みです。現在、技能実習生を受け入れている企業でも、業種によっては2030年以降に外国人材の受入れ自体が困難になる可能性があります。
技能実習3号を利用していた企業も注意が必要です。育成就労制度では技能実習1号・2号・3号がすべて廃止されるため、技能実習3号で受入れ可能だった職種が特定技能の対象外である場合、移行先の選択肢が限られます。
デメリット④:日本語教育支援の義務が企業に課せられる
育成就労制度では、就労開始前から日本語能力A1相当以上(JLPT N5レベル)の能力保有が要件となります。さらに、育成就労から特定技能1号へ移行するためにはJLPT N4またはJFT-Basicへの合格が必要となるため、企業は段階的な日本語教育支援を計画的に実施しなければなりません。
企業に求められる日本語教育支援の主な内容:
- 学習環境の整備(日本語講師の確保、オンライン学習環境の準備)
- 学習時間の確保(業務時間内での学習機会の提供)
- 定期的な習熟度確認と個別面談
- 試験不合格者への再学習・再受験サポート
2024年11月時点では、育成就労制度単体での国や自治体からの日本語教育支援は限定的であり、費用の多くを企業が負担しなければならない状況です。ただし、一部の自治体ではビジネス日本語eラーニング研修(年2回、各回100名程度)や外国人労働者の日本語教育費用の一部補助(最大20万円)といった支援を実施しているケースもあります。自治体の最新情報は随時確認するようにしてください。
デメリットへの対策|企業が今すぐ取り組めること

Step1:自社の対象職種を確認する(今すぐ)
まず最初に行うべきは、自社の業務が育成就労制度の17分野に該当するかどうかの確認です。
- 出入国在留管理庁の公式サイトで対象分野・職種を照合する
- 現在受け入れている技能実習生の職種が継続対象かどうかを確認する
- 対象外の場合は、2030年までの移行計画を立てる
Step2:費用計画を立てる(6か月以内)
育成就労制度への移行に備えた資金計画を早めに策定することが重要です。
- 1人あたりの初期費用(50万円以上を目安)を予算に組み込む
- 日本語教育費・管理費の年間コストを試算する
- 転籍による費用回収リスクを考慮した採用計画を立てる
- 利用可能な助成金・補助金を調査する
Step3:定着率向上のための職場環境を整える(1年以内)
転籍リスクを軽減するための最も効果的な対策は、「この職場で長く働きたい」と思える環境づくりです。
- 適切な賃金水準の確保(同業他社と比較した競争力のある給与)
- キャリアパスの明示(特定技能1号・2号への移行支援を明確に提示)
- 生活支援の充実(住居・生活相談窓口の整備)
- 文化的配慮(宗教的慣習への対応、母国語でのコミュニケーション機会)
Step4:日本語教育体制を構築する(制度施行前まで)
効率的な日本語教育を実現するための取り組みを段階的に進めましょう。
- オンライン学習の活用:AIを活用した会話練習ツールやeラーニングシステムの導入
- 社内リソースの活用:先輩社員による指導体制の整備、教育担当者の育成
- 外部機関との連携:地域の日本語学校との提携、複数企業での共同研修の検討
- 自治体支援の活用:地域の日本語教育支援事業への申し込み
事例から学ぶ|育成就労制度への移行で成功するポイント

事例①:早期の費用計画で安定した受入れを実現
関東地方のある製造業(工業製品製造業)では、育成就労制度の施行決定を受け、2年前から費用シミュレーションを実施。1人あたりの初期費用を60万円と試算し、年間採用計画に組み込んだうえで、複数名を同時採用することでスケールメリットを生かしたコスト削減を図りました。また、日本語教育についてはオンラインeラーニングを活用することで、従来の対面講師派遣に比べてコストを抑えながら学習継続率を高めることに成功したといいます。
ポイント: 「費用が増える」という事実を早期に把握し、採用計画全体で吸収できる体制を整えることが重要です。
事例②:キャリアパスの明示で転籍リスクを低減
九州地方のある介護施設では、育成就労外国人に対して入職時から「特定技能1号・2号へのキャリアパス」を文書で明示。試験対策の学習時間を業務時間内に確保し、合格者には一時金を支給する仕組みを導入しました。「日本で長く働き続けたい」という外国人材の意欲(参考:令和6年度老人保健健康増進等事業調査では「日本で長く住み続けたいため」が国家試験受験理由の55.2%を占める)に応える職場環境を整えた結果、転籍者がほぼゼロという定着率を実現しています。
ポイント: 転籍を防ぐための最大の武器は「この会社で働き続けることへの明確なメリット」の提示です。
よくある質問(専門家に聞く)
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町潤一氏(看護師・介護福祉士、GENSAI Career Consulting Corp代表)は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町氏は語ります。
看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
育成就労制度に関するよくある質問
Q1. 育成就労制度のデメリットは技能実習制度と比べてどのくらい大きいですか?
A. 費用負担と転籍リスクという2点では、育成就労制度の方が企業にとってデメリットが大きいといえます。技能実習制度では外国人材が渡航費・手数料の多くを自己負担していましたが、育成就労制度では月給2か月分を超える費用を企業が負担します。また、技能実習制度では転籍が原則不可だったのに対し、育成就労制度では1〜2年で転籍が可能になります。一方で、技能実習制度には権利保護の不備・失踪問題といった深刻なリスクがあり、育成就労制度の方が制度的に安定しているという側面もあります。どちらが「大きいデメリット」かは自社の状況によって異なるため、総合的な判断が必要です。
Q2. 育成就労制度のデメリットとして「職種が減る」とありますが、介護分野は対象になりますか?
A. はい、介護は育成就労制度の16分野のひとつとして対象に含まれています。介護分野は特定技能制度でも対象分野であるため、育成就労→特定技能1号→特定技能2号というキャリアパスを一貫して活用できます。なお、特定技能「介護」については2025年4月21日の制度改正により、一定の要件(初任者研修等の修了・介護事業所での実務経験原則1年以上・JICWELS適合確認)を満たせば訪問系サービスへの従事も可能となりました。最新の制度情報は厚生労働省の公式資料でご確認ください。
Q3. 育成就労制度の転籍リスクを法的に防ぐことはできますか?
A. 法的に転籍を完全に禁止することはできません。育成就労制度は外国人材の権利保護を目的としているため、一定条件を満たせば転籍は認められる仕組みになっています。ただし、転籍には「所定期間(1〜2年)の就労実績」「技能試験合格」「日本語試験合格」という要件があるため、制度開始直後の転籍は現実的には限定的です。企業としては法的な制限ではなく、「この職場で働き続けたい」と思える職場環境の整備・キャリアパスの明示・待遇改善によって定着率を高めることが現実的な対策です。
Q4. 育成就労制度の施行前に技能実習生を採用することはできますか?
A. 2027年4月1日の施行前であれば、引き続き技能実習制度を利用して外国人材を受け入れることができます。2027〜2030年の移行期間中も両制度の併用が可能です。ただし、育成就労制度の施行日前に技能実習計画の認定申請を行っていても、技能実習計画の開始日によって技能実習生として受け入れ可能かどうかが変わる点には注意が必要です。詳細は外国人技能実習機構(OTIT)にご確認ください。
Q5. 育成就労制度で受け入れた外国人材が特定技能1号に移行できなかった場合、どうなりますか?
A. 育成就労の在留期間(原則3年)終了後に特定技能1号への移行要件(技能試験合格・日本語試験N4またはJFT-Basic合格)を満たせなかった場合、原則として帰国となります。ただし、再試験のための1年延長が認められるケースも検討されています。企業としては、育成就労期間中から計画的に試験対策支援を行い、移行率を高める取り組みが重要です。参考として、介護福祉士国家試験の合格率はJLPT N2保有者で53.4%、N3保有者では25.2%(令和6年度老人保健健康増進等事業調査)であり、日本語能力の向上支援が試験合格率に直結することがデータからも示されています。
まとめ
育成就労制度のデメリットを正確に理解することは、制度を上手に活用するための第一歩です。
- 4つのデメリット:費用増加(1人50万円以上の可能性)・転籍リスク(1〜2年で可能)・職種縮小(94職種→16分野)・日本語教育義務(N5〜N4レベル支援が必要)
- 対策の核心:早期の費用計画・定着率向上のための職場環境整備・計画的な日本語教育体制の構築
- 長期的なメリット:育成就労→特定技能1号→特定技能2号という一貫したキャリアパスで、長期雇用が実現しやすくなる
制度移行まで時間的な余裕があるように見えて、準備に必要な期間を考えると決して余裕はありません。まずは自社の対象職種の確認と費用計画の策定から始めることをお勧めします。外国人材の受入れや育成就労制度への移行に不安がある場合は、専門の支援機関や登録支援機関への相談も有効な選択肢です。
【YMYL注意】本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。育成就労制度は施行前であり、詳細は今後変更される可能性があります。最終的な判断は出入国在留管理庁・厚生労働省の最新公式資料および専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和7年12月改訂)」…育成就労制度の施行日・制度概要・対象分野の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」(令和7年3月28日)…特定技能「介護」の受入状況・訪問系サービス従事要件変更の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(社援発0331第40号・老発0331第12号、2025年3月31日付)…2025年4月21日施行の訪問系サービス従事要件の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・受験理由・職場支援内容の根拠
- 法務省出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」…技能実習制度廃止の背景(2023年失踪者数9,753人)の根拠
- e-GOV法令検索「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号)」…育成就労法の法的根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
