結論(30秒でわかる要点)
人材開発支援助成金とは、従業員に職業訓練を実施した事業主に対して、訓練経費や賃金の一部を国が助成する制度です。
- 重要ポイント①:申請できるのは事業主のみ。個人(従業員本人)は申請不可
- 重要ポイント②:厚生労働省の最新案内では7つのコースがあり、助成率・助成額はコース、企業規模、訓練内容、賃金要件などによって異なる
- 重要ポイント③:訓練開始前に計画届の提出が必須。事後申請では対象外になる
- 対象者:従業員の育成・スキルアップを検討している中小企業・大企業の人事・経営担当者
- ⚠️ 本制度の要件・助成率は年度ごとに改正されます。申請前に必ず厚生労働省の最新資料をご確認ください。
はじめに

「研修を実施したいが、費用が高くて踏み出せない」「人材育成に投資したいが、どの制度を使えばいいかわからない」——そう感じている企業の担当者の方は少なくないと思います。
少子高齢化の進展により、労働人口は年々減少しています。厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2022年時点で約215万人だった介護職員数は、2040年には約272万人が必要になると試算されています。人材の確保が難しくなる中、いまいる従業員の生産性を高めることが、企業存続の鍵になっています。
そこで活用したいのが「人材開発支援助成金」です。この記事では、制度の基礎から申請手順、活用事例まで、初めて読む方でも理解できるよう、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 人材開発支援助成金の仕組みと6つのコースの特徴
- 申請の流れと注意点(失敗しやすいポイントも紹介)
- 実際の活用事例と専門家によるアドバイス
人材開発支援助成金とは?基礎知識をわかりやすく解説

用語の定義
人材開発支援助成金とは:事業主が雇用する労働者に対して職業訓練を計画的に実施した場合に、訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です(厚生労働省が運営)。
- 申請できる人:事業主(法人・個人事業主)のみ。従業員個人は申請できない
- 対象となる訓練:Off-JT(職場外訓練)・OJT(職場内訓練)など、職務に関連する訓練
- 申請先:都道府県労働局(電子申請も可)
- 申請期限:訓練終了の翌日から2か月以内(年度末は3月31日まで)
制度が設けられた背景
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、政府は「人への投資」を国家戦略として掲げています。企業が自社の従業員を育成する取り組みを支援することで、日本全体の労働生産性を高めることが制度の目的です。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やグリーン化など、産業構造の変化に対応するためのリスキリング(学び直し)支援も、近年の制度改正で大幅に強化されています。
人材開発支援助成金と「キャリアアップ助成金」の違い
混同されやすい「キャリアアップ助成金」との違いを整理します。
- 人材開発支援助成金:訓練・研修の実施に対して助成。正規・非正規を問わず幅広い労働者が対象
- キャリアアップ助成金:非正規労働者の正社員転換や処遇改善に対して助成
目的と対象が異なるため、両制度を組み合わせて活用することも可能です。
7つのコースをわかりやすく比較|どれが自社に合う?

人材開発支援助成金は、厚生労働省の最新案内では7つのコースに分かれています。本記事では、企業の人材育成で特に活用されやすい主要コースを中心に紹介します。コースごとに対象訓練・助成率・上限額が異なるため、自社の状況に合ったコースを選ぶことが重要です。
| コース名 | 主な対象訓練 | 経費助成率(中小企業) | 賃金助成(1人1時間) | 年間上限額 |
|---|---|---|---|---|
| 人材育成支援コース | 10時間以上のOFF-JT、OJT付き訓練、有期実習型訓練など | 45〜75% | 800円(中小) | 1,000万円 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)、長期休暇制度 | 制度導入:30万円(定額) | 6,000円(最大150日) | 36万円 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材育成、サブスク型研修、自発的学習支援など | 45〜75% | 760〜1,000円 | 2,500万円 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新事業・DX・グリーン化に対応するスキル習得訓練 | 75%(最大) | 1,000円 | 1億円 |
| 建設労働者認定訓練コース | 建設関連の認定職業訓練・指導員訓練 | 経費の約16.6% | 3,800円/日 | 1,000万円 |
| 建設労働者技能実習コース | 建設労働者の技能向上のための実習(10時間以上) | 45〜75% | 7,600〜9,405円/日 | 500万円 |
※助成率・上限額は中小企業の目安です。大企業は助成率が低くなります。最新の支給要領で必ずご確認ください。
注目コース①:人への投資促進コース(令和8年度が最終年度)
デジタル人材の育成や、サブスクリプション型(定額制)の研修サービスを活用した訓練も対象になります。eラーニングや大学院での学習も助成対象になるなど、現代の多様な学び方に対応しているのが特徴です。ただし、令和8年度(2026年度)が最終年度となる見込みのため、活用を検討している企業は早めの準備が必要です。
注目コース②:事業展開等リスキリング支援コース(令和8年度が最終年度)
新事業への進出、DX推進、カーボンニュートラル対応など、事業変革に必要なスキルを習得させる訓練が対象です。中小企業の場合、経費助成率が最大75%と非常に手厚く、年間上限額は1億円と破格の水準です。こちらも令和8年度が最終年度となる予定です。
申請の流れをステップで解説|失敗しないための注意点

Step1:コース選定と訓練内容の設計
まず自社の課題を整理し、どのコースが最適かを判断します。訓練の目的・対象者・実施時間・実施形態(OFF-JT/OJT/eラーニング)を具体的に設計します。
チェックリスト(訓練設計前に確認)
- 雇用保険の適用事業所であるか
- 訓練を受ける従業員が雇用保険の被保険者であるか
- 自社が中小企業に該当するか(資本金・従業員数の基準を確認)
- 訓練内容が職務に関連しているか
Step2:訓練計画届の提出(訓練開始の1か月前までに)
最も重要なポイント:訓練を開始する前に、管轄の都道府県労働局に「職業訓練実施計画届」を提出しなければなりません。訓練開始後に提出しても対象外となるため、スケジュール管理が命です。
2023年4月からは、雇用関係助成金ポータルでの電子申請も可能になっています。24時間申請・申請状況の確認ができるため、積極的に活用することをおすすめします。
Step3:訓練の実施と記録管理
訓練を実施しながら、以下の記録を必ず残します。
- 出席簿・受講記録(誰が・いつ・何時間受講したか)
- 受講費用の領収書・請求書
- カリキュラム・修了証明書
- OJTを含む場合は指導記録
eラーニングの場合は、ログデータ(受講開始・終了時刻、修了テストの結果など)が特に重要です。「視聴しただけ」では実態の証明が難しくなるため、テストや課題提出がある講座設計を選ぶと申請が安定します。
Step4:支給申請(訓練終了翌日から2か月以内)
訓練終了後、2か月以内に支給申請書類を提出します。主な提出書類は以下の通りです。
- 支給申請書
- 支給要件確認申立書
- 経費・賃金内訳
- 実施結果報告書
- 各種証憑(領収書・出席簿など)
審査期間や支給までの期間は、申請内容、コース、管轄労働局の状況によって異なります。
余裕を持って資金計画を立てておきましょう。
申請時の3大注意点
- 助成金は後払い:研修終了後に申請・審査・支給という流れ。研修前に受け取ることはできない
- 要件が詳細に定められている:訓練時間・雇用形態・人数など、細かい条件を事前に確認すること
- 申請手続きが煩雑:書類が多く、期限も限られているため、社会保険労務士など専門家のサポートも検討する
なお、令和8年5月14日以降の支給申請では、対象となる訓練について「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要となる場合があります。また、令和8年8月3日以降にeラーニング訓練実施結果報告書を提出する場合は、改正後の様式を使用する必要があります。申請前には必ず最新の様式・支給要領を確認してください。
活用事例でわかる人材開発支援助成金の効果

事例①:製造業でのDX研修(事業展開等リスキリング支援コース)
関東のある製造業の中小企業が、生産管理システムのデジタル化に伴い、従業員20名にデータ分析・DX基礎知識の研修を実施した事例です。
研修費用の総額は約200万円でしたが、事業展開等リスキリング支援コースを活用することで経費助成率75%が適用され、実質的な自己負担を約50万円に抑えることができました。訓練計画を事前に提出し、受講記録を丁寧に管理したことで、スムーズに支給が決定しています。
学び:DXや新事業への対応が明確であれば、高額な研修費用も大幅に削減できる。計画届の事前提出が最大のポイント。
事例②:介護・福祉業界での資格取得支援(人材育成支援コース)
西日本のある介護事業者が、有期契約のスタッフに対して介護職員初任者研修を受講させ、正社員転換を目指した有期実習型訓練を実施した事例です。
OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練を設計し、訓練修了後に正社員として採用。経費助成率75%(正社員化した場合の加算含む)が適用され、採用・育成コストを大幅に削減できました。
学び:非正規から正規への転換を目指す訓練は助成率が高い。訓練後の正社員化を前提とした設計が重要。
よくある質問(専門家に聞く)
ここでは、看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、人材育成・外国人介護士採用に関する疑問をお聞きしました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 人材開発支援助成金は個人(従業員)でも申請できますか?
A. 申請できるのは事業主のみです。従業員本人が申請することはできません。事業主が訓練を実施し、その費用を負担した上で申請する制度です。なお、「人への投資促進コース」の自発的職業能力開発訓練では、従業員が自発的に受講を申し出た訓練費用を事業主が負担した場合も助成対象となります。
Q2. 人材開発支援助成金の申請に、特別な資格は必要ですか?
A. 申請自体に特別な資格は不要です。ただし、申請書類の作成や要件の確認が複雑なため、社会保険労務士(社労士)に依頼する企業も多くあります。初めて申請する場合は、管轄の都道府県労働局に相談するか、専門家のサポートを活用することをおすすめします。
Q3. 外国人労働者も人材開発支援助成金の対象になりますか?
A. 雇用保険の被保険者であれば、外国人労働者も対象になります。特定技能や技能実習など、雇用保険に加入している外国人従業員への訓練も助成対象です。ただし、在留資格の種類や雇用形態によって条件が異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
Q4. 訓練の途中で従業員が退職した場合はどうなりますか?
A. 訓練の途中で対象の従業員が退職した場合、その従業員分については助成対象外となるケースがほとんどです。ただし、コースや状況によって取り扱いが異なるため、管轄の労働局に個別に確認することが必要です。
Q5. eラーニングやサブスク型研修サービスは助成対象になりますか?
A. コースによっては対象になります。「人への投資促進コース」の定額制訓練では、サブスクリプション型の研修サービスも助成対象です(上限:1人1月あたり2万円)。ただし、受講管理が重要で、誰が・いつ・どの講座を・何時間受講したかをログで証明できることが条件です。視聴履歴だけでは不十分なケースもあるため、テストや課題提出のある講座設計を選ぶことをおすすめします。
Q6. 訓練計画を提出した後、内容を変更することはできますか?
A. 日程変更・対象者変更・訓練内容の変更が生じた場合は、変更届の提出が必要です。変更が発生した際は速やかに管轄の労働局に確認し、適切な手続きを踏むことが重要です。変更管理を怠ると、審査で問題が生じる可能性があります。
まとめ
人材開発支援助成金は、従業員の育成・スキルアップを国が支援する制度です。うまく活用すれば、研修費用の大部分を助成金でカバーでき、企業の人材投資を大幅に後押しします。
この記事の3つの要点
- コースは7種類:自社の目的(スキルアップ・DX・リスキリング・建設業特化・障害者職業能力開発など)に合ったコースを選ぶことが重要
- 事前の計画届が必須:訓練開始前に計画届を提出しなければ対象外。スケジュール管理が申請成功の鍵
- 記録管理を徹底する:出席簿・受講ログ・領収書など、証憑の整備が審査通過を左右する
次のステップ:まずは管轄の都道府県労働局または厚生労働省の公式サイトで最新のパンフレットを確認し、自社に合ったコースを見つけることから始めましょう。不安な点は社会保険労務士への相談も有効です。
⚠️【YMYL注意】本記事の情報は執筆時点の公開情報をもとにしています。制度の要件・助成率・コース内容は年度ごとに改正されます。最終的な判断は、厚生労働省の最新資料または専門家(社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」公式ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/助成金.html)…コース一覧・支給要領・申請様式の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年〜2040年の介護職員必要数データの根拠
- 厚生労働省「令和8年度版 人への投資促進コースのご案内」(令和8年4月8日版)…人への投資促進コースの助成率・対象訓練の根拠
- 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内」(令和8年4月8日版)…リスキリング支援コースの助成率・対象訓練の根拠
- 厚生労働省「雇用関係助成金ポータル」…電子申請手続きの根拠
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)支給要領」(令和8年8月3日版)…人材育成支援コースの詳細要件の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。