結論(30秒でわかる要点)
特定技能「介護」の業務範囲を正しく把握することは、施設運営上の法的リスクを回避するうえで最重要の課題です。
- 主な業務:身体介護(食事・入浴・排泄・移乗介助など)が中心で、夜勤も1人体制で従事可能
- 関連業務:生活援助(掃除・洗濯・調理補助など)は補助的に従事可能だが、主業務の3分の1以内が目安
- 絶対NG:医療行為・調剤作業・訪問系サービス(2025年4月以降は要件を満たせば一部解禁)
- 対象者:特定技能「介護」の受け入れを検討している施設担当者・管理者の方
- ⚠️ 制度は随時更新されます。最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁の公式資料でご確認ください。
はじめに

介護現場の人手不足は、数字で見るとその深刻さが一目瞭然です。厚生労働省の推計によれば、2040年度に必要な介護職員数は272万人。2022年実績の215万人と比較すると、約57万人もの不足が見込まれています(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
こうした背景から、特定技能「介護」の活用を検討する施設が急増しています。2024年12月末時点での特定技能1号(介護)の在留者数は44,367人に達し、制度開始の2019年末(わずか19人)から約5年で約2,300倍という驚異的な伸びを見せています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
しかし現場では、「どこまでの業務を任せられるのか」「何をさせたら法律違反になるのか」という疑問が絶えません。業務範囲を誤って運用すると、不法就労として施設側が行政処分を受けるリスクもあります。
この記事でわかること:
- 特定技能「介護」で従事できる業務・できない業務の具体的な線引き
- 2025年4月から解禁された訪問介護の要件と注意点
- 業務範囲を誤った場合のリスクと適切な現場運用の考え方
特定技能「介護」の業務範囲とは|基礎と定義を整理する

用語の定義
「特定技能介護の業務範囲」とは、在留資格「特定技能1号(介護)」を持つ外国人材が、日本の介護施設において法律上従事できる業務の種類と限界を定めた規定のことです。
特定技能「介護」には1号のみが設けられており、2号は存在しません。これは、介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」へ移行するという、介護分野独自のキャリアパスが用意されているためです。
業務は「主な業務」と「関連業務」の2種類に分かれる
特定技能「介護」の業務は、大きく以下の2種類に分類されます。
主な業務(身体介護等)
- 食事介助(食事の準備・介助・後片付け)
- 入浴介助(浴槽への移乗・洗身・洗髪など)
- 排泄介助(トイレ誘導・おむつ交換・ポータブルトイレ対応)
- 移乗・移動介助(ベッドから車いすへの移乗など)
- 整容・更衣介助(洗顔・歯磨き・着替えの補助)
- 介護記録の作成(PC・タブレット入力を含む)
- 夜勤(1人体制での従事が制度上可能)
関連業務(補助的業務)
- 生活援助(掃除・洗濯・ゴミ出し・ベッドメイク・買い物・調理補助)
- お知らせ等の掲示物の作成
- 物品の補充や管理
- レクリエーションの企画・実施
関連業務はどのくらいの割合まで認められるか
特定技能「介護」の運用要領では、関連業務だけに専念することは認められていません。一方で、具体的な割合の上限は明文化されていないのが現状です。
参考になるのが技能実習「介護」の基準です。技能実習では、関連業務は全体の半分を超えないこと、周辺業務は3分の1以内とされています。特定技能の関連業務は技能実習の周辺業務に近い概念とされているため、主業務に該当しない部分が全体の3分の1を超えない範囲を目安とするのが現実的な運用指針となっています。
特定技能「介護」でできない業務|NGの具体例と判断基準

医師・看護師等の資格が必要な医療行為はできない
特定技能「介護」の外国人材が行ってはならない業務の最たるものが医療行為です。以下は絶対NGとなります。
- 点滴・注射・採血
- 褥瘡(床ずれ)の処置
- 経管栄養の管理・実施
- 摘便
- 調剤に関わる作業全般(薬の仕分け・配薬準備など)
なお、服薬介助(利用者様が自分で飲む薬を手渡す・確認する行為)については、一定の条件のもとで介護職員が行うことが認められていますが、その範囲の判断は慎重に行う必要があります。
他の在留資格の業務に該当する行為
特定技能「介護」の在留資格で、他の在留資格(例:医師・看護師など)に専属する業務を行うことも不法就労となります。資格外の業務を割り当てることは、施設側の法的責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
訪問系サービス(2025年4月以降は条件付きで解禁)
従来、特定技能「介護」の外国人材は訪問系サービスへの従事が一切認められていませんでした。しかし2025年4月、厚生労働省の告示改正により、以下の条件を満たす場合に限り訪問介護等への従事が解禁されました。
訪問系サービスに従事できる対象サービス:
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 訪問型サービス(総合事業)
従事するための必須要件:
- 介護職員初任者研修修了課程等を修了していること
- 介護事業所等での実務経験が原則1年以上あること
- JICWELS(公益社団法人国際厚生事業団)の適合確認書を取得していること
要件を満たさない状態での訪問系サービスへの従事は、従来どおり認められません。採用前に必ず要件の充足状況を確認してください。
特定技能「介護」が働ける施設種別と受け入れ状況

受け入れ可能な施設
特定技能「介護」の外国人材を受け入れられるのは、介護等の業務を行う対象施設として厚生労働省が定めた施設に限られます。
厚生労働省のデータ(2024年7月時点)によると、受け入れ施設種別の上位5位は以下のとおりです(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
| 順位 | 施設種別 | 受入件数 |
|---|---|---|
| 1位 | 特別養護老人ホーム | 7,827件 |
| 2位 | 病院 | 2,446件 |
| 3位 | 認知症対応型共同生活介護 | 2,340件 |
| 4位 | 特定施設入居者生活介護 | 1,996件 |
| 5位 | 介護老人保健施設 | 1,931件 |
上位5施設で全体(合計21,886件)の75.6%を占めており、特別養護老人ホームへの集中が顕著です。
雇用形態は直接雇用のみ
特定技能「介護」は、直接雇用のみが認められています。派遣契約やアルバイト契約での雇用は制度上認められていません。また、受入見込数の5年間上限は135,000人と定められており、枠の消化状況には常に注意が必要です。
業務範囲を正しく運用するための実践ステップ
Step1:主な業務と関連業務の比率を可視化する
最初に取り組むべきは、現在の業務割り当ての「見える化」です。特定技能外国人が1日・1週間のうちどの業務にどれだけの時間を使っているかを記録し、関連業務の比率が3分の1を超えていないかを確認します。
- 業務日誌・シフト記録の活用
- 月次での業務比率チェック
- 問題があれば速やかにシフト調整
Step2:医療行為・NG業務の周知徹底
施設内の全スタッフが「特定技能外国人に任せてはいけない業務」を理解していることが重要です。特に夜勤帯は指示する職員が少ないため、NGリストを掲示・共有しておくことが有効です。
- 医療行為リストの掲示(ナースステーション・休憩室など)
- 入職時のオリエンテーションで業務範囲を説明
- 緊急時の連絡フローを明確化し、判断に迷ったときの相談先を設定
Step3:訪問介護を検討する場合は要件確認を先行させる
2025年4月の解禁後、訪問介護への従事を検討する施設も増えています。ただし、要件(初任者研修修了・実務経験1年以上・JICWELS適合確認)を満たさない状態での従事は違法となります。
- 対象スタッフの研修修了証・実務経験期間を確認
- JICWELS適合確認書の取得手続きを事前に完了
- 訪問時の緊急対応マニュアルを整備
現場での活用事例|業務範囲を正しく理解した施設の変化
事例①:身体介護を中心にシフト設計した特養の例
関西のある特別養護老人ホームでは、特定技能「介護」の外国人材を受け入れた当初、生活援助(掃除・洗濯補助)を中心に業務を割り当てていました。しかし業務範囲の見直しを行い、移乗介助・排泄介助・食事介助といった身体介護を主業務として再設計したところ、日本人スタッフの身体的負担が大幅に軽減。外国人スタッフ自身も「やりがいのある仕事をしている」という実感を持てるようになり、定着率が向上しました。
ポイントは「関連業務に偏らせない」こと。業務範囲の正しい理解が、スタッフのモチベーションにも直結するという好例です。
事例②:夜勤独立を段階的に支援した施設の取り組み
首都圏のある介護老人保健施設では、入職後3か月間は先輩スタッフとのペア夜勤を実施し、業務の流れ・緊急時対応・記録の書き方を丁寧に習得させました。その後、独立夜勤に移行したところ、利用者様・ご家族からの信頼度が高まり、「外国人スタッフがいてくれて安心」という声も聞かれるようになったといいます。
制度上は入職初日から1人夜勤が可能ですが、段階的なサポートが定着と信頼構築の両方に効果的です。
よくある質問(専門家に聞く)
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」の業務範囲に関して、生活援助(掃除・洗濯)だけを担当させることはできますか?
A. できません。特定技能「介護」の運用要領では、関連業務(生活援助を含む)だけに専念させることは認められていません。身体介護等の「主な業務」を中心に従事させることが前提であり、関連業務はあくまで補助的な位置づけです。目安として、関連業務が全体の3分の1を超えないよう業務設計することをお勧めします。
Q2. 特定技能「介護」の外国人材に、夜勤を1人で任せることはできますか?
A. 特定技能「介護」の外国人材は、制度上、夜勤に従事することが可能です。
ただし、実際に1人体制の夜勤を任せるかどうかは、
本人の日本語力、介護技術、緊急時対応力、施設の人員配置基準、安全管理体制を踏まえて慎重に判断する必要があります。
入職直後から単独夜勤を任せるのではなく、まずは先輩職員との同行・ペア夜勤、緊急時対応の確認、記録業務の習熟を経て、段階的に独立夜勤へ移行する運用が安全です。
Q3. 特定技能「介護」の業務範囲で、服薬介助は認められますか?
A. 服薬介助(利用者様が自分で飲む薬を手渡す・確認する行為)は、一定の条件のもとで介護職員が行うことが認められており、特定技能「介護」の外国人材も対応可能です。ただし、調剤(薬の仕分け・配薬準備など)は医療行為に準じる行為として禁止されています。判断に迷う場合は、施設の看護師や管理者に確認するフローを整備しておくことが重要です。
Q4. 2025年4月から解禁された訪問介護に、新しく採用した特定技能外国人をすぐ従事させられますか?
A. 原則として、すぐには従事させられません。訪問介護への従事には「介護職員初任者研修修了」「介護事業所等での実務経験1年以上」「JICWELS適合確認書の取得」という3つの要件をすべて満たす必要があります。新規採用者がこれらの要件を満たすには一定の期間が必要なため、採用計画と並行して要件充足のスケジュールを立てることが重要です。
Q5. 特定技能「介護」の業務範囲を超えた業務をさせた場合、施設にどのようなリスクがありますか?
A. 業務範囲を超えた業務を従事させた場合、施設側が不法就労助長罪に問われる可能性があります。具体的には、出入国在留管理庁からの行政指導・処分、受け入れ資格の取り消し、さらには刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科されるリスクがあります。「知らなかった」では済まされないため、業務範囲の正確な理解と施設内での周知徹底が不可欠です。
まとめ
特定技能「介護」の業務範囲を正しく理解することは、施設の法的リスクを回避するだけでなく、外国人材が「やりがいを持って働ける環境」を整えることにも直結します。
記事の要点3つ:
- 主な業務(身体介護)を中心に:食事・入浴・排泄・移乗などの身体介護が主業務。関連業務(生活援助等)は全体の3分の1以内が目安
- 医療行為・調剤は絶対NG:不法就労リスクを防ぐため、NG業務リストを施設内で周知徹底する
- 訪問介護は要件確認が先決:2025年4月解禁後も、初任者研修修了・実務経験1年以上・JICWELS適合確認の3要件を満たさなければ従事不可
次のステップとして:
- 現在の業務割り当てが適切かどうかを見直す
- NG業務リストを作成し、全スタッフへ共有する
- 訪問介護への従事を検討する場合は、要件充足状況を確認したうえで専門家に相談する
まずは「今の運用に問題がないか」の確認から始めてみてください。不安や疑問がある場合は、登録支援機関や行政書士などの専門家への相談をお勧めします。
【⚠️ YMYL注意】本記事の内容は公開時点の情報に基づいています。特定技能制度は法改正・告示改正により随時変更されます。実際の運用にあたっては、厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公式資料および専門家(行政書士・社会保険労務士など)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2040年までの介護職員必要数・不足数の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能受入上限135,000人・国籍別ランキング・都道府県別受入状況・在留者数推移の根拠
- 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」…特定技能「介護」の対象施設・業務範囲・試験制度の一次情報
- 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」…特定技能1号(介護)在留者数の根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数等について」…受入見込数上限・分野別受付状況の根拠
- 厚生労働省「令和7年4月21日付告示改正(訪問系サービス解禁)」…特定技能「介護」の訪問介護従事解禁・要件の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・国家試験受験理由・職場支援内容の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。