結論(30秒でわかる要点)
育成就労制度は、2027年4月1日に施行される外国人材受け入れの新制度で、廃止される技能実習制度に代わるものです。
- 制度の目的が変わる:「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ転換
- 転籍(転職)が可能になる:一定要件を満たせば本人の意思で転籍できる
- 特定技能への移行を前提に設計:3年間の育成後、特定技能1号へのキャリアパスが明確化
対象者:技能実習生の受け入れ実績がある企業・施設の担当者、外国人材の活用を検討している経営者・人事担当者
> ⚠️ 本記事の情報は2025年時点のものです。制度の詳細は今後の政省令・告示で変更される可能性があります。必ず出入国在留管理庁や厚生労働省の最新公式情報をご確認ください。
はじめに

「技能実習制度が廃止されると聞いたけど、うちの施設はどうなるの?」「育成就労制度って、結局何が変わるの?」——そんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省の調査によれば、2022年時点で約215万人の介護職員が就業していますが、2040年には約272万人が必要になると推計されています(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。人手不足が深刻化する中、外国人材の受け入れ制度が大きく変わることは、多くの企業・施設にとって無視できない問題です。
この記事では、育成就労制度をできる限りわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 育成就労制度の目的・仕組み・施行時期
- 技能実習制度・特定技能制度との違い
- 企業・施設が今から準備すべきポイント
育成就労制度とは何か|制度の基礎をわかりやすく理解する

育成就労制度の定義
育成就労制度とは:日本国内の人手不足分野において、外国人材を原則3年間就労させながら特定技能1号水準の技能と日本語能力を育成し、同時に人材を確保することを目的とした新しい在留資格制度です。
2024年6月に改正入管法および「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」が公布され、2027年4月1日の施行が決定しています(2025年9月26日閣議決定)。
対象となる分野(育成就労産業分野・全17分野)
- 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業
- 建設、造船・舶用工業、自動車整備
- 宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
- 鉄道、林業、木材産業、物流倉庫、資源循環、リネンサプライ
これらは特定技能制度の「特定産業分野」と原則一致する形で設定されています。
技能実習制度が廃止される背景
1993年に始まった技能実習制度は、「開発途上国への技能移転による国際貢献」を建前としていました。しかし実態は、日本国内の人手不足を補う労働力として機能しており、制度の目的と実態の乖離が長年にわたって指摘されてきました。
技能実習制度の主な課題
- 制度目的(国際貢献)と実態(労働力確保)の乖離
- 原則として本人意向による転籍(転職)が認められない
- 外国人技能実習生の権利保護が不十分
- 失踪・人権侵害問題が国際的にも批判を受ける
こうした問題を受けて、政府は2024年に技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設を閣議決定しました。
育成就労・技能実習・特定技能の3制度比較
| 比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 | 特定技能制度 |
|---|---|---|---|
| 制度目的 | 国際貢献・技能移転 | 人材育成・人材確保 | 即戦力人材の確保 |
| 在留期間 | 最長5年(1号〜3号) | 原則3年 | 1号:最長5年/2号:更新制限なし |
| 転籍(転職) | 原則不可 | 一定要件のもとで可能 | 制度上認められている |
| 日本語要件 | 原則なし(介護のみN4) | 就労開始前にA1相当以上 | 試験合格が必要(N4以上など) |
| 家族帯同 | 不可 | 原則不可 | 2号のみ可 |
| 特定技能への移行 | 同分野なら試験免除で移行可 | 試験合格が必要 | — |
| 受入れ対象分野 | 94職種168作業 | 17分野 | 19分野(2026年1月の閣議決定で拡大) |
※2026年1月23日の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環が追加され、現在19分野です。
育成就労制度の8つのポイントをわかりやすく解説

ポイント①:施行日と経過措置
育成就労制度の施行日は2027年4月1日です。ただし、以下の経過措置が設けられています。
- 施行日(令和9年4月1日)時点で在留している技能実習生は、引き続き技能実習を継続可能
- 同日までに技能実習計画の認定申請がされ、令和9年6月30日までに技能実習を開始した場合も継続可能
つまり、施行日と同時に技能実習が一斉終了するわけではありませんが、新規の技能実習生受け入れは将来的にできなくなる前提で今から準備を進めることが重要です。
ポイント②:転籍(転職)が可能になる
育成就労制度の最大の変更点の一つが、本人意向による転籍が認められることです。
技能実習制度では原則として転籍は禁止されていましたが、育成就労制度では以下の要件を満たせば同一業務区分内での転籍が可能になります。
転籍が認められる主な要件
- 就労開始から1年以上(分野によっては2年以上)経過していること
- 就労開始後1年経過時点での技能検定基礎級等と日本語試験(A1〜A2相当)に合格していること
- 転籍先が一定の要件を満たす受入れ機関であること
転籍の際の職業紹介は、監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワークが担当します。なお、民間の職業紹介事業者は関与できない点に注意が必要です。
ポイント③:日本語能力の要件が新設される
技能実習制度では原則として入国時の日本語能力要件はありませんでした(介護職種のみN4相当)。育成就労制度では、すべての分野で日本語能力要件が設けられます。
日本語能力の段階的な要件
- 就労開始前:CEFR A1相当(日本語能力試験N5等)の試験合格、または相当する日本語講習の受講
- 就労開始後1年経過時:A1〜A2相当の試験合格(転籍条件にも関係)
- 特定技能1号移行時:CEFR A2相当(N4等)の試験合格
また、育成就労実施者(受入れ企業)には、外国人材がA2相当目標講習(原則100時間以上)を受講できる機会を提供する義務があります。
ポイント④:特定技能への移行には試験合格が必要
技能実習制度では、技能実習2号を良好に修了すれば同分野の特定技能1号へ試験免除で移行できました。しかし、育成就労制度では試験合格が必須となります。
育成就労から特定技能1号への移行要件
- 特定技能1号評価試験または技能検定3級等への合格
- 日本語能力試験(JLPT N4またはJFT-Basic)への合格
試験に不合格となった場合は、再受験に必要な範囲で最大1年間の在留継続が認められます。
ポイント⑤:監理支援機関の許可制が導入される
技能実習制度における「監理団体」は、育成就労制度では「監理支援機関」に名称が変わり、新たに許可制となります。既存の監理団体も、育成就労制度の監理支援機関として活動するためには新たに許可を取得する必要があります。
監理支援機関の主な要件
- 育成就労実施者の数が原則2者以上
- 常勤役職員が2人以上、かつ役職員1人当たりの担当実施者数が8者未満・担当外国人数が40人未満
- 外部監査人の設置
- 育成就労実施者と密接な関係を持つ役職員は当該実施者への業務に関与不可
ポイント⑥:受入れ人数枠の仕組み
育成就労制度では、受入れ人数枠が要件によって変わります。
| 条件 | 受入れ可能人数の目安 |
|---|---|
| 通常(一般的な実施者) | 常勤職員総数の3/20 |
| 優良な実施者+優良な監理支援機関 | 常勤職員総数の3/10(2倍に拡大) |
| 指定区域内の優良実施者 | さらに拡大(最大3倍等) |
※常勤職員10名以上の実施者が対象。
ポイント⑦:前職要件・帰国後復職義務が廃止される
技能実習制度では、外国人材に対して「前職要件(実習内容に関連する職に就いていたこと)」や「帰国後の復職義務」が求められていました。育成就労制度ではこれらが廃止され、より幅広い人材が来日しやすくなります。
ポイント⑧:不法就労助長罪の厳罰化
育成就労制度の施行に合わせて、不法就労助長罪も厳罰化されました。
- 改正前:3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金
- 改正後(2025年6月〜):5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの併科
受入れ企業はコンプライアンス体制の整備がこれまで以上に重要になっています。
育成就労制度の活用事例|企業・施設が直面するリアル

事例①:介護施設での外国人材受け入れ準備
関東のある特別養護老人ホームでは、技能実習生を複数名受け入れてきた実績があります。育成就労制度への移行を前に、施設担当者が最も懸念しているのが「転籍リスク」です。
1〜2年で転籍されてしまうと、育成コストを回収できないのではないかという不安は多くの施設に共通しています。しかし専門家は「転籍を防ぐためには、給与・職場環境・キャリアパスの整備が最も効果的」と指摘します。優良な実施者として認められれば受入れ人数枠も拡大されるため、制度をうまく活用することで長期的な人材確保につながるという見方もあります。
なお、2024年12月末時点で特定技能1号の介護分野の在留者数は44,367人に達しており(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)、外国人介護人材の活用は着実に広がっています。
事例②:製造業での育成就労移行シミュレーション
中部地方のある製造業の企業では、技能実習制度で受け入れていた外国人材の多くが「特定技能1号への移行を希望している」という状況がありました。育成就労制度では特定技能への移行に試験合格が必要となるため、日本語教育と技能訓練を計画的に組み合わせた育成プログラムの構築が急務となっています。
同社の担当者は「試験免除がなくなることで一時的にハードルが上がるように感じるが、計画的に準備すれば十分対応できる」と語ります。
よくある質問(専門家に聞く)
ここでは、看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、育成就労制度や外国人介護人材の受け入れについて聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 看護師・介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
育成就労制度に関するよくある質問
Q1. 育成就労制度はいつから始まりますか?
A. 育成就労制度の施行日は2027年4月1日です(2025年9月26日閣議決定)。ただし、施行前から監理支援機関の許可申請や育成就労計画の認定申請(施行日前申請)が可能となっており、早めの準備が推奨されます。
Q2. 技能実習制度が廃止されたら、現在の技能実習生はどうなりますか?
A. 経過措置があります。2027年4月1日(施行日)時点で在留している技能実習生は引き続き技能実習を継続できます。また、施行日までに技能実習計画の認定申請がされ、同年6月30日までに技能実習を開始した場合も継続可能です。ただし、新規の技能実習生受け入れは将来的にできなくなるため、今から育成就労制度への移行準備を進めることが重要です。
Q3. 育成就労制度で外国人材が転籍してしまうリスクはありますか?
A. 転籍は一定の要件を満たした場合のみ可能です。就労開始から1年以上(分野によっては2年以上)経過し、かつ技能試験・日本語試験に合格していることが条件となります。また、転籍先も一定の要件を満たす必要があります。転籍リスクを軽減するためには、給与水準の適正化・職場環境の整備・キャリアパスの明示が有効です。
Q4. 育成就労制度で求められる日本語レベルはどのくらいですか?
A. 就労開始前にCEFR A1相当(日本語能力試験N5等)の試験合格、または相当する日本語講習の受講が必要です。就労終了・特定技能1号への移行時にはCEFR A2相当(N4等)の合格が求められます。なお、分野によってはより高い水準が求められる場合もあるため、各分野別運用方針を必ず確認してください。
Q5. 育成就労制度では家族の帯同はできますか?
A. 原則として、育成就労の在留資格では家族の帯同は認められていません。家族帯同が認められるのは特定技能2号からとなります。育成就労から特定技能1号、さらに特定技能2号へとキャリアアップすることで、長期的な家族帯同が可能になります。
Q6. 育成就労制度の受入れ対象分野は技能実習と同じですか?
A. 異なります。技能実習制度では94職種168作業が対象でしたが、育成就労制度では特定産業分野と原則一致する17分野に整理されます。技能実習の対象職種であっても、育成就労産業分野に該当しないケースがある点に注意が必要です。自社業務が対象分野に含まれるかどうか、早めに確認することをお勧めします。
まとめ
育成就労制度は、2027年4月1日に施行される外国人材受け入れの新制度です。技能実習制度の課題を解消しながら、人材育成と人材確保を両立させる仕組みとして設計されています。
この記事の3つの要点
- 制度目的が変わる:「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ。外国人材を3年間育成し、特定技能1号水準を目指す
- 転籍が可能になる:一定要件のもとで本人意向の転籍が認められ、外国人材の権利保護が強化される
- 試験合格が移行の条件:技能実習と異なり、特定技能1号への移行には技能試験・日本語試験の合格が必要になる
今すぐできる次のステップ
- 自社業務が育成就労産業分野(17分野)に該当するか確認する
- 現在の監理団体が監理支援機関の許可取得を進めているか確認する
- 日本語教育・育成計画の体制整備を今から始める
まずは、出入国在留管理庁や厚生労働省の公式情報を確認しつつ、専門家への相談を検討してみてください。
> ⚠️【YMYL注意】育成就労制度は今後の政省令・告示・分野別運用方針によって詳細が変更される可能性があります。最終判断は必ず最新の公的資料および専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和7年12月改訂)」https://www.moj.go.jp/isa/… …育成就労制度の目的・施行日・要件の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日 …特定技能介護分野の在留者数・国籍別ランキング・施設種別受入状況の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 …2022年実績215万人・2040年必要数272万人の根拠
- e-GOV法令検索「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号)」https://laws.e-gov.go.jp/ …育成就労制度の法的根拠
- 外国人技能実習機構(OTIT)「監理支援機関許可施行日前申請」https://www.otit.go.jp/ …監理支援機関の許可申請手続きの根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」 …日本語レベル別介護福祉士国家試験合格率の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料 …特定技能1号・技能実習・在留資格「介護」の在留者数の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
