結論(30秒でわかる要点)
特定技能外国人を雇用する事業者は、就労環境の整備、正社員転換、職業訓練などの取り組みに応じて、国や自治体の助成金・補助金を利用できる可能性があります。
- ポイント①:人材確保等支援助成金の外国人労働者就労環境整備助成コースは、2026年度も1制度につき20万円、上限80万円
- ポイント②:多くの制度では、取り組み開始前の計画提出や認定が必要
- ポイント③:キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、雇用形態・訓練内容などによって対象可否と支給額が異なる
- ポイント④:自治体の補助金は、所在地・業種・年度によって内容が大きく異なる
- ポイント⑤:複数制度を利用する場合は、同一経費への重複申請がないか事前確認が必要
助成金は「特定技能外国人を採用すれば自動的にもらえる制度」ではありません。必ず取り組み開始前に、最新の公的資料と管轄労働局・自治体窓口で確認してください。
対象者:特定技能外国人の雇用を検討中、またはすでに受け入れている施設・企業の担当者向け
⚠️ 本記事は2026年度の公的資料をもとに整理しています。助成金・補助金の要件、金額、申請期限は随時改定されるため、申請前に必ず最新の公的資料や所管窓口でご確認ください。
はじめに

「特定技能で外国人を採用したいけれど、コストが心配…」「助成金があると聞いたけれど、どれが使えるのかよくわからない」——そんな声を、介護・建設・飲食など様々な業種の担当者から日々耳にします。
外国人雇用に関する助成金・補助金は、国・都道府県・市区町村で用意されている場合があります。対象経費や交付条件を確認しながら活用することで、採用・定着にかかるコストの一部を抑えられる可能性があります。ただし、申請の手順を誤ったり、期限を見落としたりすると受給できなくなることも少なくありません。
この記事でわかること
- 特定技能外国人雇用に活用できる国の主要助成金の概要と申請手順
- 都道府県・市区町村レベルの補助金の探し方と活用事例
- 申請時に陥りやすい落とし穴と対策
外国人雇用と助成金・補助金の基礎知識

「助成金」と「補助金」の定義
特定技能外国人雇用に関する助成金・補助金とは:外国人労働者の採用・定着・スキルアップを支援するために、国や地方自治体が事業主に対して費用の一部を給付する制度の総称。
両者には明確な違いがあります。
- 助成金:厚生労働省が所管。雇用保険料を財源とし、要件を満たせば原則として受給できる(審査はあるが採択競争はない)
- 補助金:経済産業省や各自治体が所管。予算の範囲内で採択されるため、申請しても受給できないケースがある
どちらも「後払い」が基本であり、費用を立て替えてから申請・受給という流れになります。資金繰りを考慮した計画が必要です。
外国人雇用が拡大している背景
厚生労働省の公表データによれば、介護分野だけを見ても、2022年の介護職員数は215万人だったのに対し、2026年には240万人(約25万人増)、2040年には272万人(約57万人増)が必要とされています(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
この深刻な人手不足を補う手段として、特定技能制度の活用が急速に広がっています。特定技能「介護」の在留者数は、制度開始直後の2019年12月末にわずか19人だったものが、2024年12月末には44,367人に達し、約5年で約2,300倍という驚異的な増加を見せています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
外国人雇用が増加している主な要因
- 少子高齢化による国内労働力の構造的不足
- 特定技能制度の整備・対象分野の拡大(現在16分野)
- 海外での特定技能評価試験の実施国拡大(現在13か国で実施)
- 政府による外国人材受け入れ積極化の方針
特定技能外国人雇用で使える国の主要助成金

制度1:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人雇用に最も直接的に関連する国の助成金です。外国人労働者特有の事情(言語の壁・雇用慣行の違いなど)に配慮した就労環境を整備した事業主に対して支給されます。
主な受給要件
- 外国人労働者を雇用している事業主であること
- 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、以下の措置を新たに導入・実施すること
- ①雇用労務責任者の選任(必須)
- ②就業規則等の社内規程の多言語化(必須)
- ③苦情・相談体制の整備(③〜⑤からいずれか1つ選択)
- ④一時帰国のための休暇制度の整備
- ⑤社内マニュアル・標識類等の多言語化
- 就労環境整備計画期間終了後の一定期間における外国人労働者の離職率が15%以下であること
受給額:受給要件をすべて満たした場合、1制度の導入につき20万円、上限80万円です。2026年4月1日以降に就労環境整備計画を提出する場合は、厚生労働省の2026年度版ガイドブック・Q&A・支給要領を確認してください。
対象経費の例:通訳費、翻訳料、翻訳機器導入費、弁護士・社会保険労務士等への委託料、多言語標識類の設置・改修費
制度2:キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員化した場合に、事業主へ助成する制度です。
特定技能外国人についても、在留資格の名称だけで対象・対象外が決まるわけではありません。転換前の雇用区分、転換後の正社員の定義、就業規則、雇用契約、賃金増額など、複数の要件を満たす必要があります。
確認すべき主なポイント
- 対象労働者が有期雇用労働者等に該当するか
- 転換後の雇用区分が、就業規則上の正社員として明確に規定されているか
- 転換前後の賃金、賞与、退職金、昇給などの要件を満たすか
- 正社員化の取り組みを行う前日までに、キャリアアップ計画を作成・提出しているか
- 取り組みを行った日に対応する2026年度版の支給額・申請様式を使用しているか
支給額は、企業規模、対象労働者、転換内容、各種加算などによって異なります。「特定技能1号は一律対象外」「特定技能2号なら自動的に対象」とは判断せず、事前に管轄労働局または社会保険労務士へ確認してください。
制度3:人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
外国人社員を含む雇用保険の被保険者に対し、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。
2026年度の人材育成支援コースには、職務に関連する訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者の正社員化を目指す訓練などがあります。対象となる訓練時間、OJTの割合、助成率、支給上限、計画届の提出期限は、訓練の種類によって異なります。
確認すべき主なポイント
- 訓練内容が、受講者の職務に直接関連しているか
- 対象となる訓練類型と時間数の要件を満たしているか
- 訓練開始前に、職業訓練実施計画届など必要な書類を提出しているか
- 訓練費用を事業主が適正に負担し、領収書などを保存しているか
- 2026年5月14日以降の支給申請では、必要に応じて「受講料等の価格設定に関する疎明書」を提出しているか
日本語教育や語学研修であっても、すべてが自動的に対象になるわけではありません。一般教養や趣味的な内容ではなく、業務上必要な訓練として認められるかを、実施前に管轄労働局へ確認してください。
申請時の注意点・よくある落とし穴
- 事前計画の提出が重要:就労環境整備助成コースは「就労環境整備計画」、キャリアアップ助成金は「キャリアアップ計画」、人材開発支援助成金は「職業訓練実施計画届」などを、各制度で定められた時期までに提出する必要があります。取り組み開始後では対象にならない場合があります
- 離職率の管理:就労環境整備助成コースは離職率15%超で支給要件を満たさなくなります。少人数の施設では1人退職しただけで基準を超えることがあるため注意が必要です
- 書類の保存義務:計画書、契約書、賃金台帳、出勤簿、請求書、領収書、訓練記録などを、各制度で定められた期間保存する必要があります
- 支給まで時間がかかることがある:助成金・補助金は原則として後払いです。審査期間は申請内容や制度によって異なるため、受給までの立て替え資金を準備しておきましょう
自治体独自の補助金を活用する

都道府県・市区町村レベルの補助金
国の助成金に加えて、都道府県や市区町村が、外国人材の受け入れや定着を支援する補助金を設けている場合があります。
介護分野では、次のような経費が対象になる制度があります。
- 外国人介護人材の受け入れに必要な研修費
- 日本語学習や介護福祉士国家試験対策の費用
- 翻訳・通訳、多言語マニュアルの作成費
- 住居の確保や生活支援に必要な費用
- 受け入れ施設の職場環境整備費
- 特定技能外国人の採用・定着支援費
ただし、自治体の制度は年度ごとに新設・変更・終了されます。記事内で紹介する場合は、必ず次の情報をセットで記載してください。
- 自治体名
- 正式な制度名
- 対象年度
- 対象事業者・対象経費
- 補助率・上限額
- 申請期間
- 公式ページ
自治体補助金の探し方
- 自社の所在地の都道府県・市区町村の公式サイトで「外国人」「特定技能」「補助金」などのキーワードで検索
- 地域の商工会議所・商工会に問い合わせる
- 厚生労働省・経済産業省の補助金ポータルサイトを活用する
複数制度を組み合わせる際のルール
国の助成金と自治体の補助金を併用できる場合もありますが、併用可否は各制度の交付要綱・支給要領によって異なります。同一経費への重複給付が認められない場合があるため、申請前の確認が必要です。
複数制度を利用する場合は、対象経費を明確に区分し、各窓口に併用可否と経費の整理方法を確認してください。単に費用を按分すれば必ず併用できるとは限りません。
助成金活用のモデルケース
モデルケース①:就労環境整備に助成金を活用する場合
例えば、特定技能外国人を受け入れる介護施設が、就業規則の多言語化、苦情・相談体制の整備、社内マニュアルの多言語化などを新たに導入する場合、人材確保等支援助成金の対象になる可能性があります。
実際の支給額は、導入する制度数や支給要件の充足状況によって決まります。助成金を職場改善のきっかけとして活用することで、外国人職員が相談しやすく、長く働きやすい環境づくりにつなげることができます。
学び:助成金の申請を「義務的な手続き」ではなく「職場改善のきっかけ」と捉えることで、外国人スタッフの定着率向上という本質的な成果につながります。
モデルケース②:国と自治体の制度を併用できるか検討する場合
例えば、日本語教育、技能研修、多言語マニュアル作成など複数の取り組みを行う場合、国の助成金と自治体補助金で対象経費が異なれば、両方を利用できる可能性があります。
ポイント:申請前に各制度の担当窓口へ、併用可否、対象経費の区分、他制度から給付を受ける場合の申告方法を確認してください。
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、外国人介護士の受け入れに関する疑問をお聞きしました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能外国人を1人しか雇っていなくても助成金は受けられますか?
A. はい、受けられる可能性があります。人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の受給要件には「外国人労働者を雇用している事業主であること」とあるだけで、雇用人数の下限は定められていません。ただし、雇用関係助成金に共通する要件や離職率要件などもあるため、まずは管轄の労働局またはハローワークに相談してください。
Q2. 特定技能1号の外国人はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象になりますか?
A. 在留資格が特定技能1号であることだけを理由に、一律で対象・対象外と判断することはできません。転換前の雇用区分、転換後の正社員の定義、就業規則、雇用契約、賃金要件などを満たすかによって判断されます。
また、在留期間に上限があることと、雇用契約に期間の定めがあることは同じではありません。正社員化を予定している場合は、取り組み前に管轄労働局または社会保険労務士へ確認してください。
Q3. 助成金と補助金を同時に申請することはできますか?
A. 複数制度を利用できる場合もありますが、併用可否は各制度の交付要綱・支給要領によって異なります。同一経費への重複給付が認められないこともあるため、申請前に各制度の担当窓口へ確認してください。
Q4. 特定技能外国人向けの自治体補助金はどうやって探せばよいですか?
A. 自治体の補助金は頻繁に新設・終了するため、定期的な情報収集が必要です。主な探し方としては、①自社所在地の都道府県・市区町村の公式ウェブサイトで「特定技能」「外国人」「補助金」で検索、②地域の商工会議所・商工会への問い合わせ、③厚生労働省や経済産業省の補助金ポータルサイトの活用、などが効果的です。特に介護分野は都道府県レベルの補助金が充実している傾向があります。
Q5. 助成金の不正受給をした場合、どのようなペナルティがありますか?
A. 不正受給が発覚した場合、受給した全額の返還に加えて、延滞金・違約加算金(20%)が科されます。さらに、企業名の公表、刑事告発、5年間の助成金受給停止という重い行政処分を受ける可能性があります。「実施していない研修の虚偽報告」「対象外経費の水増し」「出勤実績の改ざん」などが典型的な不正事例です。少しでも不明な点があれば、必ず申請前に担当窓口に確認することが大切です。
まとめ
特定技能外国人の雇用に活用できる助成金・補助金は、国・都道府県・市区町村の三層構造で用意されており、適切に組み合わせることで採用・定着コストを大幅に抑えることができます。
この記事の3つの要点
- 国の助成金は目的別に確認する:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、2026年度も1制度につき20万円、上限80万円。キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、雇用区分・訓練内容などによって対象可否と支給額が異なる
- 自治体補助金は年度と所在地で確認する:自治体ごとに対象者、対象経費、補助率、申請期間が異なる。国の助成金との併用可否も事前確認が必要
- 申請の順序と期限管理が最重要:事前計画の提出が必須の制度が多く、着手後の申請は原則不可。スケジュール管理表で各期限を把握し、余裕を持った準備を
次のステップ:まずは管轄のハローワーク・労働局に相談し、自社が活用できる助成金の種類と申請スケジュールを確認することから始めましょう。外国人雇用の専門家や社会保険労務士への相談も有効です。
⚠️【YMYL注意】助成金・補助金の要件・金額・申請期限は制度改正により変更されることがあります。最終的な判断は、必ず最新の公的資料および所管窓口・専門家にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能「介護」在留者数の推移・受入上限・国籍別データの根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(https://www.mhlw.go.jp/)…2026年・2040年の介護職員必要数データの根拠
- 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/gaikokujin.html …2026年度の受給要件・受給額・ガイドブック・Q&A
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html …2026年度の正社員化コース、キャリアアップ計画、申請様式
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html …2026年度の人材育成支援コース、制度改正、申請書類
- 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(2024年10月末時点)」(https://www.mhlw.go.jp/)…外国人労働者数約230万人・過去最多更新の根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」(https://www.moj.go.jp/isa/)…特定技能1号・2号の区分・対象16分野・義務的支援内容の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・職場支援内容に関するデータの根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
