結論(30秒でわかる要点)
特定技能「介護」の外国人ヘルパーは、2025年4月21日以降、一定の要件を満たせば訪問系サービスにも従事できるようになり、深刻な人手不足に悩む介護事業所にとって、いよいよ本格的な戦力となった。
- 重要ポイント①:2025年4月21日施行で訪問介護への従事が解禁(要件あり)
- 重要ポイント②:特定技能「介護」の在留者数は2025年末時点で67,871人
(受入上限に対する充足率50.3%)と急増中 - 重要ポイント③:受入事業所は研修・OJT・ICT整備など5つの遵守事項を満たす必要あり
対象読者:訪問介護事業所・介護施設の経営者・管理者、外国人ヘルパーの採用を検討している方
> ⚠️ 本記事に記載の制度情報は2025年4月時点のものです。制度は随時更新されますので、最新情報は厚生労働省の公式資料でご確認ください。
はじめに:ヘルパー不足は限界点に近づいている

「求人を出しても応募がない」「ベテランヘルパーが高齢化して現場が回らない」――訪問介護の現場では、こうした声が日常的に聞かれます。
公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度調査によると、訪問介護員について「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した事業所の割合は83.4%に達し、調査対象職種の中で最も高い数値を記録しています。厚生労働省の推計では、2026年には介護職員が2022年比で25万人不足するとされており(2,150,000人→2,400,000人)、もはや国内人材だけで賄える状況ではありません。
そこで注目されているのが、特定技能「介護」の外国人ヘルパーです。2025年4月21日には制度が大きく改正され、これまで施設系サービスに限られていた従事範囲が、一定の要件のもとで訪問系サービスにも拡大されました。
この記事でわかること:
- 特定技能「介護」外国人ヘルパーとは何か、現状と背景
- 訪問介護解禁の要件と、受入事業所が整えるべき体制
- 採用の成功事例と、よくある疑問への専門家回答
特定技能「介護」外国人ヘルパーとは?基礎知識と現状

用語の定義
特定技能「介護」外国人ヘルパーとは:介護技能評価試験および介護日本語評価試験に合格し、特定技能1号の在留資格を取得して日本の介護事業所で働く外国人介護職員のことを指す(日本語能力はJLPT N4相当以上が基準)。
対象となる主なサービス種別(2025年4月以降):
- 特別養護老人ホーム(施設系)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 介護老人保健施設
- 特定施設入居者生活介護
- 訪問介護・訪問入浴介護など訪問系サービス(2025年4月21日以降、要件を満たす場合)
急増する特定技能「介護」の在留者数
出入国在留管理庁のデータによると、特定技能「介護」の在留者数は制度開始直後の2019年末にはわずか19人でしたが、2025年12月末時点では67,871人にまで拡大しています(受入見込数13.5万人に対する充足率50.3%)。
約6年で約3,600倍という驚異的な増加です。
国籍別の内訳(2025年12月末時点)は以下のとおりです。
| 順位 | 国籍 | 人数 | 全体比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | インドネシア | 21,139人 | 31.1% |
| 2位 | ミャンマー | 19,803人 | 29.2% |
| 3位 | ベトナム | 10,401人 | 15.3% |
| 4位 | ネパール | 6,013人 | 8.9% |
| 5位 | フィリピン | 5,704人 | 8.4% |
上位5か国で全体の9割以上を占め、アジア圏からの人材が中心となっています。
人手不足が深刻化した背景
訪問介護の人手不足が特に深刻な理由は、複数の要因が重なっているためです。
- ヘルパーの高齢化:厚生労働省によると訪問介護員の平均年齢は54.4歳で、65歳以上が全体の24.4%を占める
- 若手の参入不足:夜間・早朝・土日の不規則な勤務形態が若年層に敬遠されやすい
- 事業所の廃業増加:人手不足と収益悪化により、廃止事業所数が増加傾向にある
- 2040年問題の圧力:厚生労働省推計では2040年に介護職員が272万人必要(2022年比+57万人)
こうした背景から、国は外国人ヘルパーの活用を推進し、2025年4月の制度改正に踏み切りました。
2025年4月21日施行:訪問介護解禁の要件と手続き

訪問系サービスに従事するための3つの基本要件
2025年4月21日以降、以下の要件をすべて満たす特定技能「介護」外国人は、訪問系サービスに従事できるようになりました。
要件①:研修修了
次のいずれかの研修を修了していること:
- 介護職員初任者研修課程
- 生活援助従事者研修
- 介護職員基礎研修
- 実務者研修
要件②:実務経験
介護事業所(施設・通所・短期入所系サービス)での実務経験が、原則として通算1年以上あること。入国直後の未経験者は、まず施設等でのキャリアを積む必要があります。
要件③:受入事業所の遵守事項
受入事業所が、国の定める5つの遵守事項をすべて整備していること(詳細は次項)。
受入事業所が整えるべき5つの遵守事項
| 項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①研修の実施 | 訪問介護業務の基本事項(接遇・日本の生活様式・緊急時対応など)に関する研修を行う |
| ②OJT(同行訪問) | サービス提供責任者等が同行し、一人で適切に業務ができると判断されるまで継続して指導する |
| ③説明と同意 | 外国人が訪問することについて、利用者・家族へ事前説明を行い、書面で同意を得る |
| ④ハラスメント対策 | 訪問先でのハラスメント防止のため、相談窓口の設置・対応マニュアルの整備を行う |
| ⑤ICT連絡体制 | スマートフォン・タブレット等を活用し、不測の事態に備えた緊急連絡体制を整備する |
実務経験1年未満の場合の例外規定
実務経験が1年に満たない外国人を訪問系サービスに従事させる場合には、追加の条件が設けられています。
- 日本語能力:JLPT N2以上を保有していること
- OJTの延長:通常より長い同行訪問期間を設け、より手厚い指導を行うこと
- JICWELS(国際厚生事業団)への適合確認申請:事前に申請を行い、「適合確認書」の交付を受けること
> ⚠️ OJTが不十分なまま単独訪問をさせることは絶対に避けてください。N2保有者であっても、日本の住宅事情や介護手順に慣れるまでは十分な同行期間が必要です。
現場の声:外国人ヘルパーが訪問介護を変えた事例
事例①:インドネシア人ヘルパーが利用者の信頼を獲得
関西のある訪問介護事業所では、特定技能「介護」の在留資格を持つインドネシア人スタッフが、大阪府内の有料老人ホームで約2年間の実務経験を積んだ後、訪問介護の現場に転職しました。
入職後は、日本の調味料を使った調理実習や清掃マナー(「玄関では靴をそろえて置く」など)の研修を受け、責任者との同行訪問を経て、現在は1日あたり7〜8軒を電動自転車で回っています。
最初は外国人スタッフのサービスを受け入れる利用者が全体の3割程度でしたが、丁寧な仕事ぶりと自然なコミュニケーションが評価され、現在は6割以上に増加したといいます。利用者からは「仕事がとても丁寧で、会話のやり取りもスムーズ。日本人との違いは感じない」という声も聞かれます。
事例②:育成支援が定着率を高めた取り組み
東北地方のある社会福祉法人では、外国人ヘルパーが自信を持って働けるよう、外国人向けの資格取得講座を独自に開設しました。介護現場で使われる専門用語を平易な日本語で説明するカリキュラムを整備し、ネパール人やミャンマー人スタッフが約3週間で必要な知識と技術を習得できる体制を整えています。
このような育成支援の充実が、外国人スタッフの定着率向上につながっているという声は、全国の受入事業所から多く聞かれます。
成功事例に共通するポイント:
- 入職前の丁寧な研修(文化・マナー・日本語)
- 責任者が伴走するOJT期間の確保
- 利用者・家族への事前説明と合意形成
- ICTツールを活用した緊急時の連絡体制
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏(看護師・介護福祉士)に、外国人ヘルパーの採用を検討する施設からよく寄せられる疑問についてお答えいただきました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 看護師・介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」外国人ヘルパーに介護福祉士の資格は必要ですか?
A. 特定技能1号の取得に介護福祉士資格は不要です。介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格、およびJLPT N4相当以上の日本語能力があれば就労できます。ただし、介護福祉士を取得すると「介護」の在留資格に変更でき、在留期間の更新が無期限になるなど、長期就労・永住への道が開かれます。厚生労働省の調査によると、外国人介護人材が国家試験を受ける理由として「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%と最多でした。
Q2. 特定技能「介護」外国人ヘルパーの受入上限はありますか?
A. はい、あります。特定技能「介護」の受入見込数は5年間で135,000人が上限として設定されています。2025年12月末時点で67,871人が在留しており、充足率は50.3%に達しています。半数近くが埋まっている計算になるため、採用を検討するなら早めに動き出すことが重要です。
Q3. 訪問介護で外国人ヘルパーを受け入れる際、利用者の同意は必須ですか?
A. はい、必須です。外国人介護職員が訪問することについて、利用者および家族に事前説明を行い、書面での署名(同意)を得なければなりません。重要事項説明書等にその旨を明記する必要があります。なお、参考事例では、最初は受け入れ同意が3割程度でも、実際にサービスを受けた利用者の満足度が上がることで、同意率が6割以上に増えたケースもあります。
Q4. 特定技能「介護」外国人が多い国籍はどこですか?
A. 2025年12月末時点では、
インドネシア(21,139人・31.1%)が最多で、ミャンマー(19,803人・29.2%)、
ベトナム(10,401人・15.3%)、ネパール(6,013人・8.9%)、フィリピン(5,704人・8.4%)と続きます。
上位5か国で全体の9割以上を占めており、アジア圏の人材が中心です。
Q5. 特定技能「介護」外国人ヘルパーの採用費用はどのくらいかかりますか?
A. 採用経路によって異なります。登録支援機関や人材紹介会社を利用する場合、紹介手数料として年収の10〜30%程度が目安とされることが多いです。そのほか、在留資格申請費用、住居確保費用、日本語・介護研修費用なども考慮が必要です。一方で、長期的な定着率の高さや育成コストを考えると、国内求人と比較してトータルコストが抑えられるケースも少なくありません。具体的な費用は、登録支援機関や専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
特定技能「介護」外国人ヘルパーは、2025年4月21日の制度改正により、訪問系サービスへの従事が可能となり、深刻なヘルパー不足の解決策として本格的に機能し始めています。
この記事の3つのポイント:
- 制度の変化:2025年4月21日以降、研修修了・実務経験1年以上・受入事業所の遵守事項を満たせば、特定技能外国人が訪問介護に従事できる
- 現場の実態:在留者数は2025年末で67,871人(充足率50.3%)と急増。インドネシア・ミャンマー・ベトナムが上位3か国
- 受入成功の鍵:OJT・ICT整備・利用者への丁寧な説明など、体制を整えることが定着と信頼獲得につながる
採用を検討している事業所は、まず登録支援機関や専門家への無料相談から始めてみてください。制度の要件確認、JICWELS への適合確認申請、キャリアアップ計画の作成など、一つひとつ着実に進めることが大切です。
> 【YMYL注意】本記事の制度情報は2025年4月時点のものです。特定技能制度は随時改正されますので、採用・受入れの最終判断は必ず厚生労働省の最新公式資料および専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能受入上限・国籍別ランキング・在留者数推移・都道府県別受入状況の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年・2026年・2040年の介護職員必要数の根拠
- 厚生労働省「特定技能外国人を訪問系サービスに従事させる場合の取扱いについて」(2025年4月21日施行)(https://www.mhlw.go.jp/)…訪問介護解禁の要件・遵守事項の根拠
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」…訪問介護員の人手不足割合83.4%の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・国家試験受験理由の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaikokujin-kaigo/)…改正概要・遵守事項・申請手続きの根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
