結論(30秒でわかる要点)
特定技能「介護」で来日した外国人が介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」へ移行でき、期限なく日本で働き続けることができる。
- 特定技能1号の在留期間は通算5年が上限。延長には介護福祉士の取得が事実上必須
- 受験資格は「3年以上の実務経験+実務者研修修了」。特定技能の就労期間が算入可能
- 日本語能力がカギ。N2保有者の合格率53.4%に対し、N3では25.2%と大きく差が開く
- 2025年度から「パート合格制度」が導入され、在留期間の延長措置も整備された
対象読者:特定技能「介護」で就労中の外国人本人、または外国人介護士の定着を支援したい施設担当者の方
> ⚠️ 本記事の内容は、厚生労働省・出入国在留管理庁の公表情報をもとに作成していますが、制度は随時改正されます。最終判断は必ず最新の公的資料または専門家にご確認ください。
はじめに

「特定技能で来日したスタッフが、このまま日本で働き続けられるのか心配」「介護福祉士の試験を受けさせたいけど、どうサポートすればいいかわからない」――施設担当者からそんな声をよく耳にします。
特定技能「介護」の在留期間は通算5年が上限です。それを超えて日本で働き続けるには、介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行するのが現実的なルートとなります。しかし試験は専門用語が多く、外国人にとって決して簡単ではありません。施設側のサポート体制が合否を左右すると言っても過言ではないのです。
この記事でわかること:
- 特定技能から介護福祉士を取得するための具体的なルートと受験資格
- 試験の難易度・合格率の実態と、日本語レベルが与える影響
- 2025年度から始まったパート合格制度と在留期間延長の仕組み
- 施設側ができる具体的なサポート方法と成功のポイント
特定技能「介護」と介護福祉士取得の基礎知識

用語の定義
特定技能「介護」から介護福祉士取得とは、在留資格「特定技能1号」で介護施設に就労する外国人が、3年以上の実務経験と実務者研修修了を経て介護福祉士国家試験に合格し、在留資格「介護」へ移行することで期限なく日本で働き続けられるようにするキャリアパスのことを指します。
なぜ介護福祉士取得が重要なのか
特定技能「介護」には、他の多くの分野と異なる重要な特徴があります。それは「特定技能2号」が存在しないという点です。建設や製造などの分野では、特定技能1号から2号へ移行することで在留期間の上限がなくなりますが、介護分野にはこの仕組みがありません。
その理由は、2017年に在留資格「介護」が創設されたためです。介護福祉士の国家資格を取得することが「介護」ビザの取得条件となっており、これが実質的な長期就労の唯一の正規ルートとなっています。
深刻化する介護人材不足と外国人材の役割
厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2022年時点で215万人だった介護職員数は、2026年には240万人(2022年比+25万人)、2040年には272万人(同+57万人)が必要とされています。
こうした背景から、特定技能「介護」の在留者数は急増しています。制度開始直後の2019年12月末時点でわずか19人だったものが、2024年12月末には44,367人に達しており、約5年間で約2,300倍という驚異的な伸びを示しています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
国籍別では、インドネシアが12,242人(全体の27.6%)でトップ、続いてミャンマー11,717人(26.4%)、ベトナム8,910人(20.1%)となっており、上位5か国だけで全体の9割以上を占めています。
介護福祉士を取得するための3つのルートと受験資格

ルート①:特定技能・技能実習から実務経験ルート(最多数)
特定技能「介護」や技能実習「介護」で就労する外国人が最も現実的に活用できるルートです。
受験資格の要件(チェックリスト):
- ✅ 介護施設での実務経験が3年(1,095日)以上あること
- ✅ 従事日数が540日以上あること
- ✅ 実務者研修を修了していること(実技試験は免除)
- ✅ 特定技能の在留資格で就労中であること
試験は筆記試験のみで、実技試験は免除されます。また、外国籍の受験者は申請すれば試験時間が1.5倍に延長され、漢字にはふりがなが付記された試験用紙で受験できます。
ルート②:介護福祉士養成施設(留学ルート)
日本語学校で1〜2年学んだ後、専門学校などの介護福祉士養成施設で2年以上学ぶルートです。入学にはJLPT N2相当の日本語力が必要となります。時間とコストがかかりますが、体系的に介護の知識・技術を習得できる点が強みです。
ルート③:EPA介護福祉士候補者
インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国を対象に、経済連携協定(EPA)に基づいて来日するルートです。在留期間は原則4年間で、受験機会は1回のみとなります。筆記・実技の両方が必要ですが、実務者研修や介護技術講習会を受講すれば実技試験は免除されます。
試験の難易度と合格率の実態

全体合格率と外国人合格率の差
令和7年(2025年)1月実施の第37回介護福祉士国家試験では、受験者数75,387人に対して合格者数58,992人、全体合格率は78.3%でした。
一方、外国人の合格率は大きく下回ります。
| 区分 | 第36回(令和6年) | 第37回(令和7年) |
|---|---|---|
| 全体合格率 | 82.8% | 78.3% |
| 特定技能外国人 | 38.5%(751名合格) | 33.3%(1,643名合格) |
| EPA介護福祉士候補者 | 43.8%(228名合格) | 37.9%(498名合格) |
全体平均の78.3%に対し、特定技能外国人の合格率は33.3%と、半分以下の水準にとどまっています。この差を生む最大の要因は「言葉の壁」です。試験問題には「喀出」「絨毛」「咽頭」といった専門的な医療・介護用語が多数登場し、日本語を母国語としない受験者にとって非常に難易度が高い内容となっています。
日本語レベルと合格率の関係(重要データ)
令和6年度老人保健健康増進等事業の調査によると、日本語能力レベル別の合格率は以下のとおりです。
| 日本語能力レベル | 合格率 |
|---|---|
| N1保有者 | 86.7% |
| N2保有者 | 53.4% |
| N3保有者 | 25.2% |
| N4保有者 | 25.0% |
| N5保有者 | 12.5% |
N2とN3の間には合格率に約28ポイントの差があります。特定技能の要件はN4以上ですが、合格を目指すならN2取得が現実的な目標水準と言えます。施設が「まずN2を目指そう」と具体的な目標を設定してあげることが、合格率向上の第一歩となります。
合格に向けた実践的なステップと施設サポート

Step 1:入職後すぐに日本語学習計画を立てる
特定技能の在留期間は5年間。この期間内に試験合格を目指すためには、入職直後から逆算した計画が必要です。
- 入職1〜2年目:N4→N3取得を目標に日本語学習を継続
- 入職2〜3年目:N3→N2取得を目指しながら専門用語の学習開始
- 入職3年目以降:実務者研修の受講+試験対策を本格化
Step 2:実務者研修の受講タイミングを計画する
実務者研修は受験資格に必須です。通信+スクーリングで受講できるものも多く、働きながら取得が可能です。ただし修了まで6か月程度かかるケースもあるため、受験年度の前年には開始するのが理想的です。
Step 3:施設側のサポート体制を整える
調査によると、外国人介護人材が受けた職場からの支援として最も多かったのは「施設職員に勉強を教えてもらった(36%)」、次いで「日本語の先生に教えてもらった(26.7%)」「勤務時間やシフトの調整(24.8%)」でした(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
施設側ができる具体的なサポート:
- 試験前の勤務シフト調整(学習時間の確保)
- 専門用語の「わかりやすい言い換え集」の作成
- 先輩外国人スタッフによるメンター制度の導入
- 模擬試験の費用補助や学習教材の提供
- 週1回の勉強会や日本語学習の場の設置
2025年度からの新制度:パート合格と在留期間延長

パート合格(受験免除)制度とは
2025年度(第38回試験)から、介護福祉士国家試験に「パート合格制度」が導入されました。これは試験を複数のパートに分け、合格したパートは次回以降の受験が免除される仕組みです。
これにより、1回の試験で全科目合格できなかった場合でも、合格パートを積み上げながら段階的に資格取得を目指せるようになりました。
在留期間延長措置の概要
厚生労働省の令和8年1月21日通知(令和8年3月30日一部改正)により、5年の通算在留期間に達する前の最終年度の国家試験で「1パート以上合格し、かつ合格基準点(64点)の8割以上(52点以上)の得点があること」を条件に、在留期間の延長申請が可能となりました。
在留期間延長に関する重要ポイント(チェックリスト):
- ✅ 対象は在留資格「特定技能1号」のみ(技能実習・EPAは対象外)
- ✅ 5年目の国家試験では不合格パートのみでなく、全パート受験が必要
- ✅ 申請期限は試験結果確認後、在留期限前に厚生労働省へ書類送付
- ✅ 帰国後でも、帰国日から1年以内であれば申請可能
- ✅ 確認依頼書は特定技能所属機関(施設・事業所)がとりまとめて郵送
施設担当者は、合格発表前から学習計画(別紙様式2)などの書類を事前準備しておくことが強く推奨されています。
成功事例に学ぶ:外国人介護士の資格取得支援

事例①:シフト調整と勉強会で合格率を高めた施設
関西のある特別養護老人ホームでは、特定技能で採用した外国人スタッフ複数名に対し、試験の約6か月前から月2回の勉強会を実施しました。日本人の先輩介護士が専門用語をわかりやすく解説する場を設けるとともに、試験直前の1か月間はシフトを調整して学習時間を確保。その結果、受験したスタッフ全員が翌年度までに合格を果たし、在留資格「介護」への移行を実現しました。
この事例のポイント:
- 「教える側」の日本人職員のモチベーションも向上した
- 外国人スタッフが長期定着したことで採用コストが大幅に削減された
- 利用者様との信頼関係が深まり、サービスの質が向上した
事例②:N3からN2への日本語学習が合格の分岐点に
東北のあるグループホームに特定技能で入職した外国人スタッフは、入職時点でJLPT N3を保有していました。施設の担当者が「N2取得を3年目の目標にしよう」と早期に目標設定し、日本語学習の費用を一部補助。N2取得後に国家試験を受験したところ、1回で合格することができました。
この事例の学び:
- 合格率データ(N3:25.2% → N2:53.4%)が示すとおり、日本語力の向上が最大の合格要因
- 施設側が具体的な数値目標を示すことで、本人のモチベーションが大きく向上する
- 補助金制度(EPA候補者向けなど)を活用することで施設側の負担も軽減できる
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏(元看護師・介護福祉士)に、施設担当者からよく寄せられる疑問についてお聞きしました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」から介護福祉士を取得すると、在留資格はどう変わりますか?
A. 介護福祉士の国家試験に合格すると、在留資格「介護」(介護ビザ)への変更申請が可能になります。在留資格「介護」は更新回数に上限がなく、永続的に日本で就労できます。また、一定の要件を満たせば永住申請へのステップにもなります。なお、特定技能のまま5年を超えることはできないため、早めの計画が重要です。
Q2. 特定技能「介護」の5年間で介護福祉士試験に合格できなかった場合はどうなりますか?
A. 2025年度から導入されたパート合格制度と在留期間延長措置により、5年目の国家試験で「1パート以上合格かつ合格基準点の8割以上(52点以上)」を満たせば、在留期間の延長申請が可能となりました。ただし、この措置は「特定技能1号」のみが対象で、技能実習やEPAは対象外です。帰国後でも帰国日から1年以内であれば申請できますが、手続きは速やかに行う必要があります。
Q3. 特定技能「介護」の外国人が介護福祉士試験を受けるのに、施設側が費用を負担する義務はありますか?
A. 法律上の義務はありませんが、実務者研修の受講費用や学習教材費を施設側が補助するケースは増えています。EPA介護福祉士候補者については国からの補助金制度があります。特定技能外国人については自治体ごとに補助金制度が設けられている場合もあるため、所在都道府県の担当窓口への確認をお勧めします。
Q4. 介護福祉士試験で外国人に認められている特別措置はどのようなものですか?
A. 外国籍を有する受験者が申請した場合、①試験時間が通常の1.5倍に延長される、②漢字にふりがなが付記された試験用紙が使用できる、という2つの特別措置が認められています。実技試験については、実務者研修または介護技術講習会を修了していれば免除されます。
Q5. 特定技能「介護」の受入上限はありますか?
A. はい、5年間の受入見込数として135,000人の上限が設定されています。ただし、2024年12月末時点の在留者数は44,367人であり、制度全体としてはまだ上限には達していません。なお、2025年4月からは訪問介護などの訪問系サービスも特定技能の対象に追加されました。受入条件として「直接雇用のみ」が原則となっています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
まとめ
特定技能「介護」から介護福祉士取得までの道のりを、改めて整理します。
- 3年以上の実務経験+実務者研修修了が受験資格の基本条件。特定技能の就労期間はそのまま算入できる
- 日本語力の向上が合格率を左右する。N3(25.2%)からN2(53.4%)へのステップアップが最大の対策
- 2025年度からのパート合格制度により、5年以内に合格できなかった場合でも在留期間延長の道が開かれた
- 施設側のサポート(シフト調整・勉強会・費用補助)が、外国人スタッフの合格率と定着率を大きく左右する
外国人介護士の介護福祉士取得は、本人のキャリアアップだけでなく、施設にとっての長期戦力確保にもつながります。まずは現在在籍している特定技能スタッフの日本語レベルと実務経験年数を確認し、具体的な計画を立てることから始めてみてください。
不安なことや制度の詳細については、登録支援機関や専門家への相談も積極的に活用されることをお勧めします。
> ⚠️【YMYL注意】在留資格・国家試験に関する制度は法改正により随時変更されます。本記事の情報は作成時点のものです。最終判断は必ず厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公表資料、または行政書士等の専門家にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能1号在留者数44,367人・国籍別ランキング・受入上限135,000人・施設種別の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年240万人・2040年272万人の必要数データの根拠
- 厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で『特定技能1号』の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について」(社援発0330第27号 令和8年3月30日)…パート合格制度と在留期間延長措置の手続き根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率(N1〜N5)・職場サポート内容の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…特定技能1号44,367人・技能実習15,909人・在留資格「介護」12,227人・EPA3,180人の在留者数データの根拠
- 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター(https://www.sssc.or.jp/)…介護福祉士国家試験の受験資格・試験概要・合格基準の確認先
- 国際厚生事業団(JICWELS)「令和8年度外国人介護人材受入・定着支援等事業よくあるご質問」…在留資格の種類・特定技能試験の要件・業務範囲の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
