結論(30秒でわかる要点)
特定技能「介護」から永住権を目指すには、介護福祉士国家資格の取得→在留資格「介護」への変更→10年在留・5年就労という段階的なルートが現実的な正攻法です。
- 重要ポイント①:介護分野には特定技能2号が存在せず、永住権への近道は介護福祉士資格の取得
- 重要ポイント②:永住権の原則要件は「10年以上の継続在留」+「就労資格で5年以上」
- 重要ポイント③:特定技能1号の在留期間(最長5年)は「5年就労」要件にカウントされない点に注意
対象読者:特定技能「介護」で働く外国人材の長期定着・永住権取得を支援したい施設担当者、または自身のキャリアパスを描きたい外国人介護士の方
> ⚠️ 在留資格・永住権に関する制度は法改正により変更される可能性があります。最新情報は出入国在留管理庁の公式資料および専門家にご確認ください。
はじめに

「せっかく育てた外国人スタッフが、5年で帰国しなければならない」「もっと長く一緒に働き続けられないのか」——介護施設の担当者から、こうした声をよく聞きます。一方、外国人介護士の側からも「日本でずっと働き続けたい」「家族を呼び寄せて安定した生活を送りたい」という声は後を絶ちません。
特定技能「介護」の在留者数は2024年12月末時点で44,367人(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)と急増しており、永住権に関する疑問や関心もますます高まっています。しかし、「介護分野は特定技能2号がない」「特定技能1号のままでは永住できない」といった情報が断片的に広まり、正確な全体像を把握できていない方が多いのが現状です。
この記事では、以下の点をわかりやすく解説します。
- 特定技能「介護」から永住権を取得できる具体的なルートと手順
- 永住権の取得要件と、よく誤解されるポイント
- 施設側が外国人介護士の永住権取得をサポートするための実践的な方法
特定技能「介護」と永住権の基礎知識

「特定技能介護福祉士永住権」とは何か
定義:特定技能「介護」の在留資格で就労する外国人が、介護福祉士国家資格の取得と在留資格「介護」への変更を経て、日本の永住許可を得るまでの一連のキャリアパスのことを指します。
永住権(正式名称:在留資格「永住者」)とは、国籍を変えることなく日本での長期滞在を認める在留資格です。取得すると以下のメリットがあります。
- 在留期間の制限がなくなる(7年ごとの在留カード更新は必要)
- 職業選択が自由になる
- 家族の帯同・呼び寄せがしやすくなる
- 日本社会における信用度が高まり、住宅ローン審査なども通りやすくなる
介護分野に特定技能2号がない理由
多くの分野では「特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(在留期間の上限なし)→永住権申請」という流れが可能です。しかし、介護分野には特定技能2号が設定されていません。
その背景には、2017年に創設された在留資格「介護」の存在があります。介護福祉士国家資格を取得することで「介護」ビザに切り替えられ、在留期間の上限なく日本で働き続けられる制度がすでに整備されているためです。つまり、介護分野においては「介護福祉士資格の取得=特定技能2号に相当するステップ」と位置づけられています。
永住権の原則要件(重要ポイント整理)
出入国在留管理庁が定める永住許可の主な要件は以下のとおりです。
- 10年以上の継続在留:原則として引き続き10年以上日本に在留していること
- 5年以上の就労・居住資格での在留:上記10年のうち、就労資格または居住資格で5年以上在留していること
- 素行が善良であること:罰金刑・懲役刑などを受けていないこと
- 独立生計能力があること:安定した収入があり、公的支援(生活保護等)を受けていないこと
- 最長在留期間の付与を受けていること:現在の在留資格で最長の在留期間が付与されていること
- 公的義務の履行:税金・年金・健康保険料を適切に納付していること
> ⚠️ 重要な落とし穴:「技能実習」と「特定技能1号」の在留期間は、「10年在留」の計算には含まれますが、「5年就労」の要件にはカウントされません。この点を見落とすと、計画が大幅にずれ込む可能性があります。
特定技能「介護」から永住権を取得する具体的なルート

ステップ1:特定技能1号(介護)として就労しながら実務経験を積む
特定技能「介護」の在留資格で就労できる期間は最長5年です。この期間を有効に活用することが、永住権取得への第一歩となります。
介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、介護施設での実務経験3年以上+実務者研修(450時間・約6か月以上)の修了が必要です(実務経験ルートの場合)。特定技能1号の最長5年という期間内に、この条件を満たすことは十分に可能です。
ただし、実務者研修は受験したい国家試験の実施年度の3月31日までに修了していることが条件となるため、逆算してスケジュールを立てることが重要です。
ステップ2:介護福祉士国家試験に合格する
介護福祉士国家試験は年1回の実施です。外国人受験者には日本人の1.5倍の試験時間が設けられていますが、合格率は全体平均と比べると大きく差があります。
第37回介護福祉士国家試験(2025年1月実施)の合格率データは以下のとおりです(出典:厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」)。
| 区分 | 合格率 |
|—|—|
| 全体平均 | 78.3% |
| 特定技能外国人 | 33.3% |
| EPA介護福祉士候補者 | 37.9% |
合格率を左右する最大の要因は日本語能力です。令和6年度の調査によると、日本語能力試験(JLPT)のレベル別合格率は以下のとおりです(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」)。
- N1保有者:86.7%
- N2保有者:53.4%
- N3保有者:25.2%
- N4保有者:25.0%
- N5保有者:12.5%
N2レベルを目安に日本語能力を高めることが、合格への現実的な目標となります。
ステップ3:在留資格「介護」に変更する
介護福祉士国家試験に合格し、登録証が交付された後(合格年の翌年度4月1日以降)、在留資格を「介護」に変更申請します。
在留資格「介護」の主な特徴は以下のとおりです。
- 在留期間の上限なし(本人が希望する限り更新可能)
- 家族の帯同が認められる(配偶者・子どもは「家族滞在」ビザで来日可能)
- 業務範囲の制限がなくなる
- 永住権申請への道が開かれる
ステップ4:在留資格「介護」で就労を継続し、永住権の要件を満たす
在留資格「介護」での就労期間は「就労資格での5年」にカウントされます。技能実習や特定技能1号の期間も「10年在留」の計算には含まれるため、早い段階から日本に在留している方ほど有利です。
具体的なモデルケース(例)
| 在留資格 | 期間 | 10年在留 | 5年就労 |
|—|—|—|—|
| 技能実習 | 3年 | ○カウント | ×カウント外 |
| 特定技能1号 | 5年 | ○カウント | ×カウント外 |
| 在留資格「介護」 | 5年以上 | ○カウント | ○カウント |
上記の例では、技能実習3年+特定技能1号5年+在留資格「介護」5年以上で、合計13年以上在留し、うち就労資格での在留が5年以上となり、永住権の申請要件を満たすことができます。
ステップ5:永住許可を申請する
永住許可申請は、在留期間の満了日より前に行う必要があります。申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 永住許可申請書・写真(縦4cm×横3cm)
- 理由書
- 住民票(家族全員分)
- 在職証明書または確定申告書の写し
- 直近5年分の住民税の課税・納税証明書
- 過去2年間の年金・健康保険料の納付証明書
- 預貯金通帳の写し
- 身元保証書・身元保証人の身分証明書
- 了解書(2021年10月1日より義務化)
- 在留カード(提示)・パスポート(提示)
審査期間は標準で約4か月です。許可された場合の手数料は8,000円(収入印紙)です。申請先は、居住地を管轄する地方出入国在留管理官署となります。
施設が外国人介護士の永住権取得をサポートする実例

事例①:日本語教育と資格取得支援を組み合わせた定着成功例
関西のある介護施設では、特定技能「介護」の外国人スタッフに対して、入職初年度からJLPT N2取得を目標とした日本語学習支援を実施しました。週1回の日本語レッスン費用を施設が全額負担し、勤務シフトも学習時間を確保できるよう配慮。入職から3年後に実務者研修を修了し、4年目に介護福祉士国家試験に合格。5年の特定技能期間内に在留資格「介護」への変更を実現しました。
令和6年度の調査によると、外国人介護人材が職場から受けた支援として「施設職員に勉強を教えてもらった」が36%、「日本語の先生に教えてもらった」が26.7%、「勤務時間やシフトの調整」が24.8%という結果が出ています(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。施設全体でのサポート体制が、合格率と定着率の向上に直結することがわかります。
事例②:長期キャリアパスの明示が採用・定着に効果
東北地方のある特別養護老人ホームでは、採用面接の段階から「介護福祉士取得→在留資格『介護』→永住権申請」という長期キャリアパスを図示して候補者に提示しています。「将来のビジョンが明確だったから入職を決めた」という声が複数の外国人スタッフから上がっており、採用後の離職率も大幅に低下しました。
また、同施設では「なぜ介護福祉士を取りたいのか」という動機を入職時に丁寧に確認しています。令和6年度の調査では、外国人介護人材が国家試験を受けた理由として「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%、「日本で長く住み続けたいため」が55.2%と上位を占めており(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)、永住への強い意志が合格へのモチベーションになっていることがわかります。
よくある質問(専門家に聞く)
介護業界の専門家であり、GENSAI Career Consulting Corp代表・元看護師・介護福祉士の大町潤一氏に、現場目線でのアドバイスをいただきました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」から永住権を取るには、最低何年かかりますか?
A. 最短でも10年以上かかります。「10年以上の継続在留」かつ「就労資格または居住資格で5年以上」という要件を満たす必要があるためです。技能実習や特定技能1号の期間は「10年在留」にカウントされますが、「5年就労」にはカウントされません。在留資格「介護」(就労資格)での5年以上の在留が必要になるため、早めに介護福祉士資格を取得し、在留資格を切り替えることが重要です。
Q2. 特定技能1号のまま永住権を申請することはできますか?
A. 原則として困難です。特定技能1号の在留期間は最長5年であり、永住権の要件である「10年以上の継続在留」を特定技能1号のみで満たすことはできません。また、特定技能1号の在留期間は「5年就労」の要件にもカウントされないため、別の就労資格(在留資格「介護」など)に切り替えることが必要です。
Q3. 介護福祉士の国家試験に落ちた場合、特定技能の在留期間はどうなりますか?
A. 在留期間の最終年に不合格となった場合は、帰国が必要になるケースもあります。ただし、状況によっては在留期間の延長が認められる場合もあるため、所属施設や専門の行政書士に早めに相談することをお勧めします。N2レベルの日本語能力を目標に、計画的に試験対策を進めることが合格率向上の鍵です。
Q4. 在留資格「介護」を取得すると、家族を日本に呼べますか?
A. はい、可能です。在留資格「介護」を取得すると、配偶者と子どもは「家族滞在」ビザを申請できます。また、資格外活動許可を受ければ、配偶者・子どもも原則として週28時間以内の就労が認められます。これは特定技能1号では認められていない大きなメリットです。
Q5. 永住権を取得した後も、在留カードの更新は必要ですか?
A. はい、必要です。永住権を取得しても、7年ごとに在留カードの更新手続きが必要です。更新を怠ると最悪の場合、永住権が失効する可能性があるため、期限管理を徹底してください。なお、更新自体に費用はかかりません。また、永住権は日本国籍の取得ではないため、選挙権は付与されません。
Q6. 永住権の申請にかかる費用はどのくらいですか?
A. 永住許可申請が認められた場合、入国管理局での手続きに8,000円(収入印紙)が必要です。申請自体に費用はかかりませんが、必要書類の取得費用(住民票・納税証明書等)や、行政書士に代行依頼する場合の報酬が別途かかります。審査期間は標準で約4か月です。
まとめ
特定技能「介護」から永住権を目指すルートを整理すると、以下の3点がポイントです。
- 介護福祉士国家資格の取得が最初の関門:特定技能1号の5年間を有効活用し、実務経験3年以上+実務者研修修了→国家試験合格を目指す
- 在留資格「介護」への切り替えが永住権への鍵:在留期間の上限がなくなり、「5年就労」要件のカウントが始まる
- 日本語能力(N2レベル)の向上が合格率を大きく左右する:施設全体でのサポート体制が定着率・合格率の向上に直結する
外国人介護士の永住権取得は、本人にとってのキャリア安定だけでなく、施設にとっての長期的な人材確保にもつながります。まずは在留資格の現状確認と、介護福祉士取得に向けた学習計画の策定から始めてみてください。不明点は専門家(行政書士・登録支援機関)への早めの相談をお勧めします。
> 【YMYL注意】本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。在留資格・永住権に関する制度は法改正により変更される場合があります。最終的な判断は、出入国在留管理庁の最新公式資料および専門家(行政書士・弁護士)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能「介護」在留者数推移・国籍別ランキング・受入上限の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年・2026年・2040年の介護職員必要数データの根拠
- 厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」…特定技能外国人・EPA候補者の合格率データの根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・受験動機・職場支援内容の根拠
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」(令和7年10月30日改訂)(https://www.moj.go.jp/)…永住権の取得要件・申請書類・審査期間の根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(https://www.moj.go.jp/)…特定技能1号から永住権取得の可否に関する公式見解の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…在留資格別の外国人介護人材在留者数データの根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
