結論(30秒でわかる要点)
外国人介護士の定着支援とは、採用後の生活・言語・キャリアを継続的にサポートし、長期就労につなげる取り組みの総称です。
- 重要ポイント①:定着支援は「採用後」が本番。受入環境の整備が離職防止の鍵
- 重要ポイント②:国・都道府県の補助金を活用すれば、支援コストを大幅に抑えられる
- 重要ポイント③:介護福祉士国家試験の合格率は日本語レベルで大きく差が開く(N1:86.7%、N3:25.2%)
対象者:外国人介護士の採用を検討中、または受入後の定着に課題を感じている介護施設の管理者・人事担当者
> ⚠️ 本記事で紹介する制度・補助金は更新される場合があります。最新情報は各都道府県の担当窓口や厚生労働省の公式資料でご確認ください。
はじめに

「せっかく採用した外国人介護士が1年以内に辞めてしまった」「日本語の壁が思っていた以上に高くて、現場がうまく回らない」――そんな声を、介護施設の管理者からよく耳にします。
外国人介護士の受入数は年々増加しており、特定技能1号の在留者数は2024年12月末時点で44,367人(出典:厚生労働省)に達しました。しかし、採用すること自体がゴールではありません。定着支援の質が、施設の安定経営と外国人介護士のキャリアを左右します。
この記事では、次の3点を中心に解説します。
- 外国人介護士の定着支援が必要な背景と現状
- 施設が今すぐ実践できる定着支援の具体的な手順
- 国・都道府県の補助金・支援制度の活用方法
外国人介護士の定着支援が急務な理由

用語の定義
外国人介護士の定着支援とは、採用後の外国人介護職員が安心して長期就労できるよう、生活・言語・技術・キャリアの面から継続的に支援する施設の取り組みを指します。
深刻化する介護人材不足の現状
厚生労働省の推計によると、介護職員の必要数は2022年の215万人から2026年には240万人(+25万人)、2040年には272万人(+57万人)へと拡大する見通しです(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
国内の人材確保だけでは到底追いつかない状況の中、外国人介護士の役割はますます大きくなっています。特定技能「介護」の在留者数は、制度開始直後の2019年12月末の19人から、2024年12月末には44,367人へと約5年で約2,300倍増という急成長を遂げました。
受入施設の種別を見ると、特別養護老人ホームが最も多く7,827件、次いで病院2,446件、認知症対応型共同生活介護2,340件と続いており、幅広い施設形態で外国人介護士が活躍しています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
定着支援が不十分だと起きる問題
定着支援が整っていない施設では、次のような課題が連鎖的に発生しがちです。
- 言語の壁:業務指示が伝わらず、ヒヤリハットが増える
- 孤立感:生活相談ができず、精神的に追い詰められる
- キャリア不安:介護福祉士取得の見通しが立たず、モチベーションが下がる
- 早期離職:結果として1〜2年で帰国・転職してしまう
外国人介護士が国家試験を受験した理由(複数回答)を見ると、「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%、「日本で長く住み続けたいため」が55.2%と、長期定着への強い意欲が数字に表れています(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。この意欲を活かせるかどうかは、施設側の定着支援の質にかかっています。
外国人介護士の定着支援:施設がとるべき3ステップ

Step1:受入前の環境整備(採用決定〜入職1か月前)
定着支援は、外国人介護士が来日する前から始まっています。入職後に慌てて対応するのではなく、事前準備を丁寧に行うことが、その後の定着率を大きく左右します。
チェックリスト:受入前に整えておくこと
- [ ] 多言語対応の就業規則・マニュアルの準備(翻訳機・多言語ソフトの導入検討)
- [ ] 住居・生活用品・銀行口座開設のサポート体制の確認
- [ ] 担当メンター(日本人職員)の選定と役割説明
- [ ] 入職後の研修スケジュールの策定
- [ ] 緊急時の連絡体制(多言語対応)の整備
翻訳機や多言語対応の介護記録ソフトウェアの導入は、都道府県の補助金(例:群馬県の外国人介護人材定着促進事業では備品購入費に補助率3/4・上限30万円)を活用できる場合があります。
Step2:入職後の生活・言語サポート(入職〜6か月)
入職後の最初の6か月は、外国人介護士にとって最も不安が大きい時期です。この時期にどれだけ丁寧にサポートできるかが、長期定着の分岐点になります。
実践的なサポート内容
- 日本語学習の継続支援:施設職員が勉強を教えた割合は36%、日本語教師を手配した施設は26.7%、シフト調整で学習時間を確保した施設は24.8%(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。学習時間の確保は、費用対効果の高い支援策のひとつです。
- 生活相談窓口の設置:住居・医療・役所手続きなど、日常生活の困りごとを気軽に相談できる窓口を設ける
- 定期的な1on1面談:月1回程度、メンターまたは管理者との個別面談を実施し、悩みを早期に把握する
- 夜勤導入は段階的に:特定技能外国人の夜勤業務は、安全に業務を行えるまでの一定期間(目安6か月)、経験のある職員とチームで対応することが求められています(出典:JICWELS FAQ)
Step3:中長期のキャリア支援(6か月〜)
外国人介護士の多くは、介護福祉士の取得を目指しています。施設がキャリア支援を行うことは、定着率向上と施設の人材力強化につながります。
介護福祉士国家試験の合格率(日本語レベル別)
| 日本語レベル | 合格率 |
|—|—|
| N1保有者 | 86.7% |
| N2保有者 | 53.4% |
| N3保有者 | 25.2% |
| N4保有者 | 25.0% |
| N5保有者 | 12.5% |
(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)
この数字が示すように、日本語力の向上が合格率に直結します。施設としては、N3以上を目指した継続的な日本語学習支援が最も効果的な投資といえます。
研修受講料の補助制度も活用できます。たとえば、介護職員初任者研修の受講料補助(1人あたり上限5万円)や介護福祉士実務者研修の受講料補助(1人あたり上限10万円)を設けている都道府県もあります(補助率3/4)。
定着支援の成功事例から学ぶポイント

成功事例①:日本語学習支援と交流会の組み合わせ
関東のある特別養護老人ホームでは、外国人介護士向けに週1回の日本語学習会を開催しつつ、日本人職員との交流イベントを定期的に実施しました。その結果、入職から3年以上在籍する外国人介護士が増加し、複数名が介護福祉士の受験資格を取得するまでに成長しました。
ポイントは「孤立させない」こと。外国人介護士同士の横のつながりも大切ですが、日本人職員との関係構築が精神的な安定につながります。都道府県が主催する「外国人介護人材の交流会」(複数会場で年複数回開催)への参加も、孤立防止に有効です。
成功事例②:補助金を活用した翻訳ツール導入
近畿のある認知症グループホームでは、都道府県の補助金を活用して携帯型翻訳機と多言語対応の介護記録ソフトを導入しました。これにより、業務指示の伝達ミスが減少し、外国人介護士が「自分の仕事が正確に伝わっている」という実感を持てるようになったと報告されています。
学び:ツール導入は「外国人介護士のため」だけでなく、日本人職員の負担軽減にもつながります。補助金の申請は法人単位で行う場合が多く、複数施設をまとめて申請できる制度もあります。
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、外国人介護士の定着支援に関する疑問を聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 外国人介護士の定着支援に使える補助金はありますか?
A. はい、国・都道府県ともに複数の補助制度があります。たとえば、ある都道府県では外国人介護人材の定着支援を目的とした補助金として、生活支援・コミュニケーション促進・介護福祉士資格取得に要する経費を対象に、補助率2/3・1施設あたり上限20万円(1法人5施設まで)の補助を実施しています。また別の都道府県では、翻訳機や多言語ソフトの導入に補助率3/4・上限30万円の補助を設けています。補助金の内容は都道府県によって異なるため、お住まいの都道府県の福祉・介護担当課に問い合わせることをおすすめします。
Q2. 特定技能「介護」の受入上限はありますか?
A. 特定技能「介護」分野の受入見込数(5年間の上限)は135,000人と定められています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。また、訪問系サービスは対象外で、直接雇用のみが認められています。制度の詳細は随時更新されるため、最新情報は厚生労働省または出入国在留管理庁の公式資料でご確認ください。
Q3. 外国人介護士は夜勤業務に就けますか?
A. 特定技能外国人は、対象施設に該当するサービス内であれば夜勤業務を行うことができます。ただし、安全に業務を行えるまでの一定期間(目安6か月)は、経験のある職員とチームでケアに当たる体制を整えることが求められています。最終的な夜勤導入のタイミングは、施設側の判断に委ねられています(出典:JICWELS「令和8年度外国人介護人材受入・定着支援等事業よくあるご質問」)。
Q4. 外国人介護士の在留資格にはどのような種類がありますか?
A. 現行制度では、主に次の4つの在留資格による受入ルートがあります。
- EPA(経済連携協定):インドネシア・フィリピン・ベトナムとの二国間協定に基づく受入(在留者数3,180人、2025年4月1日時点)
- 在留資格「介護」:介護福祉士の資格を持つ外国人が対象(在留者数12,227人、2024年12月31日時点)
- 技能実習:技術・知識の習得を目的とした制度(在留者数15,909人、2023年12月31日時点)
- 特定技能1号:介護技能・日本語評価試験の合格等が要件(在留者数44,367人、2024年12月31日時点)
なお、技能実習制度は令和9年4月1日からの制度見直しに向けた改正が進められています。最新の制度情報は厚生労働省・出入国在留管理庁でご確認ください。
Q5. 外国人介護士の国籍別の割合はどうなっていますか?
A. 特定技能「介護」の在留者44,367人(2024年12月31日時点)の国籍別内訳は次のとおりです。
- 1位:インドネシア 12,242人(27.6%)
- 2位:ミャンマー 11,717人(26.4%)
- 3位:ベトナム 8,910人(20.1%)
- 4位:フィリピン 4,538人(10.2%)
- 5位:ネパール 3,602人(8.1%)
上位5か国で全体の9割以上を占めており、各国の文化・宗教的背景を理解した上での定着支援が求められます(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
まとめ
外国人介護士の定着支援は、採用して終わりではなく、「採用後が本番」です。この記事の要点を3点でまとめます。
- 定着支援の3本柱は「生活支援」「日本語・技術支援」「キャリア支援」。この3つをバランスよく整えることが長期定着の鍵
- 補助金を積極活用することで、翻訳ツールの導入・研修費用・生活支援コストを大幅に軽減できる
- 日本語力の向上が介護福祉士合格率を大きく左右するため、日本語学習支援への投資は最優先で取り組む価値がある
外国人介護士の定着に課題を感じている施設は、まず都道府県の外国人介護人材支援センターや専門家への無料相談から始めてみてください。一つひとつの課題を丁寧に解決していくことが、施設全体の人材力強化につながります。
> ⚠️【YMYL注意】本記事で紹介した制度・補助金・在留資格に関する情報は、公表時点のものです。制度は随時改正・更新されますので、最終的な判断は厚生労働省・出入国在留管理庁の最新資料、または専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能受入上限・国籍別ランキング・在留者数推移・受入施設種別の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年・2026年・2040年の介護職員必要数の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…在留資格別在留者数(特定技能・技能実習・介護・EPA)の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…介護福祉士国家試験の日本語レベル別合格率・職場支援内容・受験理由の根拠
- 国際厚生事業団(JICWELS)「令和8年度外国人介護人材受入・定着支援等事業よくあるご質問」…在留資格の種類・夜勤業務・特定技能制度概要の根拠
- 各都道府県「外国人介護人材定着支援事業」(愛媛県・群馬県・大阪府・栃木県等)…補助金制度の具体的な内容・補助率・上限額の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。