結論(30秒でわかる要点)
2025年4月21日から、特定技能外国人による訪問介護がついに解禁されました。これにより、施設系サービスに限られていた特定技能「介護」の活用範囲が、利用者の自宅へのサービス提供にも広がりました。
- ポイント①:解禁日は2025年4月21日、技能実習は同年4月1日から
- ポイント②:外国人側に「実務経験1年以上」「初任者研修修了」などの要件あり
- ポイント③:受入事業所は研修・同行OJT・ICT整備・適合確認申請が必須
対象読者:訪問介護事業所の経営者・管理者、外国人介護人材の受け入れを検討している方
> ⚠️ 本記事の制度情報は2025年8月時点のものです。制度は随時更新されるため、最新情報は厚生労働省の公式資料や専門家へご確認ください。
はじめに

「訪問介護の人手が足りない」「ヘルパーの高齢化が進んでいる」——そんな声が全国の訪問介護事業所から聞こえてきます。厚生労働省の調査では、訪問介護員の有効求人倍率が14.14倍(全産業平均1.17倍)に達しており、業界全体が深刻な人材不足に直面しています。
こうした状況を受け、政府は2025年4月、特定技能外国人および技能実習生による訪問介護への従事を解禁しました。これは介護業界にとって大きな転換点であり、事業所の人材確保戦略を根本から見直すチャンスでもあります。
この記事でわかること:
- 特定技能訪問介護が解禁された背景と制度の概要
- 外国人側・受入事業所側それぞれに求められる要件
- 採用から就業開始までの具体的な5ステップ
- 受け入れのメリット・デメリットと対策
特定技能訪問介護とは何か|解禁の背景と制度の基礎

用語の定義
「特定技能訪問介護」とは:特定技能1号の在留資格を持つ外国人介護人材が、一定の要件を満たしたうえで、利用者の居宅において訪問介護サービスを提供することを認める制度のことです(2025年4月21日施行)。
訪問介護の人材不足はなぜ深刻なのか
訪問介護は、他の介護サービスと比較しても特に人材確保が難しい分野です。その背景には、いくつかの構造的な問題があります。
- 高齢化が進む現場:訪問介護員の平均年齢は54.4歳、65歳以上が全体の24.4%を占める(厚生労働省調査)
- 過酷な労働環境:利用者宅への移動時間、基本的に一人での対応、精神的負担の大きさ
- 賃金水準の低さ:2024年6月時点の介護職員の平均月額給与は30万3千円で、全産業平均(38万6千円)より約8万円低い(厚生労働省)
- 事業所の廃止増加:2023年3月〜2024年3月の単月比較で、廃止事業所が前年比約40件増加
こうした状況を受け、令和5年度介護労働実態調査では訪問介護事業所の81.9%が「人手不足」と回答。新規利用者の受け入れを断らざるを得ない事業所も増えています。
解禁までの経緯
2024年3月11日の閣議決定を経て、政府は訪問介護への外国人介護人材の従事を認める方向性を打ち出しました。厚生労働省は「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」を設置し、関係団体と議論を重ねた結果、2024年6月に「一定の条件のもとで訪問系サービスへの従事を認めるべき」との中間まとめを公表。その後、2025年2月17日の有識者会議でも同様の結論が示され、同年4月21日に正式施行となりました。
介護業界全体の人材需要と特定技能の現状
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、介護職員の必要数は2026年に240万人(2022年比+25万人)、2040年には272万人(2022年比+57万人)に達すると推計されています。
一方、特定技能「介護」の在留者数は急速に拡大しており、2024年12月31日時点で44,367人(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。制度開始の2019年末には19人だったことを考えると、約5年で約2,300倍という驚異的な伸びです。受入施設の種別では特別養護老人ホームが最多(7,827件)ですが、今後は訪問介護への広がりも期待されます。
特定技能訪問介護の受け入れ要件|外国人側・事業所側の両方を確認

外国人側に求められる3つの前提条件
特定技能外国人が訪問介護に従事するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 特定技能「介護」の在留資格を持っていること
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験の合格、または技能実習2号修了が必要
- 日本語能力試験N4以上またはJFT-Basic合格も要件の一つ
- 介護職員初任者研修課程等を修了し、介護事業所での実務経験が原則1年以上あること
- 実務経験1年未満の場合は例外規定あり(後述)
- 施設系サービスでの実務経験が対象
- 協議会への要件確認と適合確認書の発行を完了していること
- 受入事業所が国際厚生事業団(JICWELS)へ適合確認申請を行う
- 申請から発行まで通常1〜2か月程度を要する
実務経験1年未満の場合の例外規定
実務経験が1年に満たない外国人介護人材を訪問系サービスに従事させる場合は、以下の2点が追加で必要となります。
- N2相当以上の日本語能力を有していること
- 週1回のサービス提供を行う利用者に対し、原則6か月間の同行訪問を実施すること(利用者・家族の同意がある場合は3か月の同行訪問+見守りカメラ等ICT活用で対応可)
受入事業所が遵守すべき5つの事項
厚生労働省が定める以下の5項目は、受入事業所が必ず履行しなければならない義務です。
- 訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
- 生活支援技術、利用者とのコミュニケーション、日本の生活様式など
- 一定期間、責任者等が同行する等により必要なOJTを行うこと
- サービス提供責任者や先輩職員が同行し、実地指導を実施
- キャリアアップ計画を作成すること
- 業務の内容や意向を丁寧に確認しながら、個別の計画を策定
- ハラスメント防止のための相談窓口等を設置すること
- 多言語対応・匿名相談受付体制の整備が推奨される
- ICTを活用した環境整備を行うこと
- GPS機能付きスマートフォン、ビデオ通話システムなどの導入
- 緊急時に管理者と即座に連絡が取れる体制を構築
また、外国人介護職員がサービス提供を行う前には、利用者・家族への事前説明と同意取得が義務付けられています。説明内容には、資格・経験・能力の詳細、研修・指導体制、同行訪問の期間・方法、緊急時の対応方法などが含まれます。
対象となるサービス種別
今回の解禁により、外国人介護人材が従事できる訪問系サービスが拡大しました。ただし、各サービスに従事するためには、サービスごとに必要な研修課程の修了等の要件を満たす必要があります。
- 訪問介護(身体介護・生活援助・通院等乗降介助)
- 居宅介護(障害福祉サービス)
- 重度訪問介護(一定の経験を持つ職員とのチーム対応が必要)
- 同行援護・行動援護
- 訪問入浴介護(複数人でのサービス提供が要件)
- 移動支援事業(各都道府県の対象研修を確認)
採用から就業開始まで|5ステップで進める実践手順

ステップ1:受け入れ要件の最終確認
まず自事業所が特定技能訪問介護の受入れ対象となるか確認します。厚生労働省が公表している「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」の資料をもとに、事業所の体制・研修計画・ICT環境の整備状況を点検しましょう。
ステップ2:求人・採用ルートの選定
採用ルートは大きく「公的ルート」と「民間ルート」に分かれます。
- 公的ルート:ハローワーク(地域採用に最適)、国際厚生事業団(JICWELS)、出入国在留管理庁の登録支援機関(RSO)検索
- 民間ルート:介護特化の人材紹介会社、求人媒体、送り出し機関
求人票には、同行OJTの期間・方法、ICT支援体制、ハラスメント対策を具体的に記載することで、ミスマッチを防ぐことができます。
ステップ3:各種申請・手続きの実施
採用する人材が決まったら、2つの公的手続きを並行して進めます。
- 適合確認申請:JICWELSへの申請(申請から発行まで約1.5〜2か月)
- 在留資格手続き:
- 国内在住者:在留資格変更許可申請 → 在留カード更新 → 就労開始
- 海外在住者:在留資格認定証明書(COE)交付申請 → 査証申請 → 入国
手続きに不安がある場合は、特定技能(介護)の実績を持つ行政書士や登録支援機関の活用が有効です。
ステップ4:受け入れ体制の構築
定着率を高めるためには、就業開始前から以下の体制を整えておくことが重要です。
- 研修計画書・同行訪問チェックシートの作成
- ICT機器(スマートフォン・タブレット・ビデオ通話ツール)の準備
- ハラスメント相談窓口の設置(多言語対応が望ましい)
- 月1回程度の個別面談体制の整備
ステップ5:雇用契約と就業開始後のサポート
採用して終わりではありません。就業開始後も継続的なサポートが定着の鍵を握ります。
- キャリアアップ計画の定期的な見直し・更新
- JICWELSによる巡回訪問への対応(改善点は速やかに対処)
- 月1回程度の個別面談で目標達成状況を確認
受け入れのメリットと課題|現場で押さえておきたいポイント

特定技能訪問介護を導入するメリット
- 若い人材の確保:訪問介護員の平均年齢が高齢化するなか、20〜30代の意欲ある人材を確保しやすい
- 人手不足の補完:有効求人倍率14.14倍という深刻な状況に対し、一定の補完効果が期待できる
- 職場の多様性向上:異なる文化背景を持つ職員が加わることで、チームの視野が広がる
- 長期的な戦力化:特定技能1号は最長5年、その後在留資格変更により長期就労も可能
- 利用者への丁寧なケア:外国人介護士は真面目で学習意欲が高く、利用者を大切にする姿勢が評価されている
想定されるデメリットと対策
| 課題 | 対策 |
|——|——|
| 日本語能力の個人差による意思疎通の問題 | ICTツールの活用、やさしい日本語でのマニュアル整備 |
| 文化的な違いへの対応 | 入職前オリエンテーション、定期的な文化交流の機会設定 |
| サポート体制の不備によるトラブル | 同行OJTの徹底、相談窓口の多言語化 |
| 手続きの複雑さ | 登録支援機関・行政書士への依頼 |
成功事例から学ぶ|訪問介護現場での外国人介護士の活躍

事例①:施設系からのステップアップ
関西のある訪問介護事業所では、特別養護老人ホームで2年間の実務経験を積んだ東南アジア出身の外国人介護士が、訪問介護に転籍。同行訪問期間中に日本語コミュニケーションの研修を並行して受け、3か月後には一人での訪問が可能になりました。利用者からは「丁寧で安心できる」という声が寄せられ、現在は複数の利用者を担当しています。
この事例のポイントは、施設系での実務経験を十分に積んでから訪問介護に移行したこと。基礎的な介護技術と日本語力が備わっていたため、スムーズな移行が実現しました。
事例②:ICT活用で安全性を確保
東日本のある訪問介護事業所では、外国人介護士の訪問中にビデオ通話システムを導入。判断に迷う場面でサービス提供責任者にすぐ相談できる体制を整えました。これにより、外国人介護士本人の不安が解消され、利用者・家族の信頼も得やすくなったといいます。
この事例の学びは、ICT整備が「義務」ではなく「安心の基盤」になるという点です。外国人介護士が「一人で抱え込まない」環境をつくることが、定着率向上にもつながります。
よくある質問(専門家に聞く)
外国人介護人材の受け入れについて、元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能訪問介護で、介護福祉士の資格は必要ですか?
A. 現時点(2025年)では、介護福祉士の資格は必須ではありません。出入国在留管理庁からも、介護福祉士資格がなくても一定の基準を満たせば従事可能との回答が出ています。ただし、在留資格「介護」での訪問介護従事には介護福祉士資格が必要となりますので、在留資格の種類によって要件が異なる点にご注意ください。
Q2. 技能実習生も訪問介護で働けるようになりましたか?
A. はい。技能実習生については2025年4月1日から、特定技能外国人については同年4月21日から、それぞれ訪問系サービスへの従事が認められています。ただし、特定技能と技能実習では要件や手続きが異なりますので、在留資格ごとに厚生労働省の通知を確認することをお勧めします。
Q3. 適合確認申請はどこに提出すればよいですか?
A. 公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)が巡回訪問等実施機関として指定されており、同機関のホームページから申請手続きを行います。在留資格(特定技能・技能実習)によって申請ページが異なりますのでご注意ください。申請から適合確認書の発行まで、通常1〜2か月程度かかります。
Q4. 特定技能「介護」の受入上限はありますか?
A. 特定技能「介護」の受入見込数(5年間の上限)は135,000人と定められています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。また、直接雇用のみが認められており、派遣形態での受け入れはできません。
Q5. 特定技能訪問介護の試験はどこで受けられますか?
A. 介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、国内47都道府県に加え、フィリピン・インドネシア・ベトナム・ミャンマーなど13か国で実施されています。2025年1月時点の累計合格者数は、介護技能評価試験が120,220人、介護日本語評価試験が113,572人に上ります(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
まとめ
特定技能訪問介護の解禁は、深刻な人材不足に悩む訪問介護事業所にとって、確かな選択肢が一つ増えた出来事です。制度を正しく理解し、適切な体制を整えることで、外国人介護士との協働が事業所の大きな力になります。
この記事の3つのポイント
- 解禁日と要件を正確に把握する:2025年4月21日施行。外国人側は実務経験1年以上・初任者研修修了、事業所側は5つの遵守事項と適合確認申請が必須
- 採用は5ステップで計画的に:要件確認→採用ルート選定→申請手続き→受け入れ体制構築→就業後サポートの流れを逆算してスケジューリング
- 「仲間として迎える」姿勢が定着の鍵:外国人介護士を「補充要員」ではなく「共に育つ仲間」として受け入れることが、長期的な信頼関係と定着率向上につながる
まずは自事業所の受け入れ要件の確認と、JICWELSへの適合確認申請の準備から始めてみてください。不安や疑問がある場合は、特定技能(介護)の実績を持つ専門家や登録支援機関への相談が第一歩です。
> ⚠️【YMYL注意】本記事の制度情報は2025年8月時点のものです。在留資格・受入要件・手続きは随時更新される可能性があります。最終的な判断は、厚生労働省の最新公式資料および行政書士等の専門家にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能受入上限・国籍別ランキング・在留者数推移・試験実施国の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」(https://www.mhlw.go.jp/)…訪問介護解禁の概要・5つの遵守事項・申請様式の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」令和7年3月31日付け社援発0331第40号・老発0331第12号…実務経験要件・同行訪問期間・ICT活用要件の根拠
- 厚生労働省「介護人材確保の現状について」令和7年5月9日…訪問介護員の有効求人倍率・人手不足感の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・職場支援内容の根拠
- 公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)公式ホームページ(https://www.jicwels.or.jp/)…適合確認申請手続き・巡回訪問対応の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
