結論(30秒でわかる要点)
外国人介護人材が介護施設の人員配置基準に算定できるかどうかは、在留資格の種類によって異なる。
- 特定技能1号・在留資格「介護」:就労開始時点から人員配置基準に算定可能
- EPA・技能実習:原則として就労開始後6か月経過後から算定可能(ただしN2以上は就労開始時点から算定可)
- 訪問系サービス:特定技能1号は対象外(施設系・通所系のみ受け入れ可)
対象者:外国人介護人材の受け入れを検討している施設管理者・施設長・人事担当者の方
⚠️ 本記事の制度情報は執筆時点のものです。制度は随時更新されるため、最新の公的資料(厚生労働省・出入国在留管理庁)および専門家にご確認ください。
はじめに

「外国人介護士を採用したいけれど、人員配置基準にちゃんと入れられるのか不安…」
そんな声を、介護施設の管理者・施設長の方からよくお聞きします。人材不足が深刻化するなかで、外国人介護人材への期待は年々高まっています。しかし、在留資格ごとに算定ルールが異なるため、「せっかく採用しても人員配置に算定できない期間がある」と知らずに採用してしまうケースも少なくありません。
この記事では、以下のポイントをわかりやすく解説します。
- 在留資格別の人員配置基準への算定ルール(特定技能・EPA・技能実習・在留資格「介護」)
- 受け入れ施設が押さえておくべき条件と注意点
- 外国人介護人材の受け入れを成功させるための実践的なポイント
制度の複雑さに戸惑っている方も、この記事を読めば全体像がスッきり整理できます。
外国人介護人材と人員配置基準の基礎知識

「外国人介護人材の人員配置基準」とは
外国人介護人材の人員配置基準とは、介護保険サービスの運営基準において、外国人介護士を施設の「必要人員数」としてカウントできるかどうかを定めたルールのことである。
在留資格ごとに算定開始時期や条件が異なるため、採用前に必ず確認が必要です。
外国人介護人材をめぐる現状と背景
日本の介護業界は、構造的な人材不足に直面しています。厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2022年の介護職員数は約215万人でしたが、2026年には約240万人(2022年比+25万人)、2040年には約272万人(同+57万人)が必要とされています。
この需給ギャップを埋める重要な手段として、外国人介護人材への期待が高まっています。特定技能1号の在留者数は、制度開始直後の2019年12月末時点でわずか19人でしたが、2024年12月末時点では4万4,367人にまで増加しました(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。約5年間で約2,300倍という驚異的な伸びです。
外国人介護人材の4つの在留資格
外国人介護人材の受け入れには、現在4つの制度があります。
- EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者
- インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から受け入れ
- 4年以内に介護福祉士国家試験に合格することが必要
- 技能実習
- 介護技術の移転を目的とした制度
- 最大5年間の在留が可能
- 特定技能1号
- 即戦力として就労できる制度
- 5年間の受入上限は13万5,000人
- 訪問系サービスは対象外・直接雇用のみ
- 在留資格「介護」
- 介護福祉士養成校を卒業した外国人が取得できる資格
- 更新が続く限り永続的に就労可能
在留資格別・人員配置基準への算定ルール

就労開始時点から算定できる在留資格
特定技能1号と在留資格「介護」は、就労開始と同時に介護報酬上の配置基準に算定することができます。
これは「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -介護分野の基準について-」にも明記されており、採用した当日から人員配置に組み込めるという大きなメリットがあります。日本人スタッフと同様の扱いになるため、施設運営の計画が立てやすくなります。
就労開始後6か月経過後から算定できる在留資格
EPA介護福祉士候補者と技能実習生については、原則として就労開始後6か月が経過してから人員配置基準に算定できるルールになっています。
ただし、日本語能力試験N2以上を取得している場合は例外として、就労開始時点から算定することが可能です。
この6か月ルールの根拠は「介護技能や業務に必要な日本語能力がある程度向上するまでの期間」とされています。一方、日本人スタッフは介護経験ゼロでも就労初日から人員配置基準に算定できるため、制度間の整合性については社会保障審議会・介護給付費分科会でも議論が続いています。
在留資格別・算定ルール一覧
| 在留資格 | 算定開始時期 | 備考 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 就労開始時点から | 訪問系サービスは対象外 |
| 在留資格「介護」 | 就労開始時点から | 制限なし |
| EPA(N2以上) | 就労開始時点から | 日本語能力試験N2以上が条件 |
| EPA(N2未満) | 就労開始後6か月経過後 | 原則ルール |
| 技能実習(N2以上) | 就労開始時点から | 日本語能力試験N2以上が条件 |
| 技能実習(N2未満) | 就労開始後6か月経過後 | 原則ルール |
注意:訪問系サービスへの制限
特定技能1号については、訪問介護・訪問入浴介護などの訪問系サービスは対象外となっています。受け入れ可能なのは施設系・通所系サービスに限られます。採用計画を立てる際は、自施設のサービス種別を必ず確認してください。
受け入れ成功のための実践的ステップ

Step1:自施設に合った在留資格を選ぶ
まず、自施設のサービス種別・受け入れ規模・サポート体制に合った在留資格を選ぶことが最初の一歩です。
- 即戦力が欲しい・人員配置をすぐに安定させたい → 特定技能1号または在留資格「介護」
- 長期的に介護福祉士資格の取得を目指してほしい → EPA・技能実習
- 訪問系サービスを運営している → 特定技能1号は不可。EPA・技能実習・在留資格「介護」から選択
Step2:受け入れ条件を整備する
在留資格によって受け入れ条件が異なります。特にEPA介護福祉士候補者を受け入れる場合は、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 法令に基づく職員配置基準を満たす定員30人以上の施設
- 常勤介護職員の4割以上が介護福祉士資格を保有していること
- 候補者に対して日本人と同等以上の報酬を支払えること
- 適切な研修体制が確保できること
- 候補者の宿泊施設が用意できること
- 候補者の帰国費用の確保・帰国担保措置を講じることができること
Step3:日本語・生活・キャリア支援の体制を整える
外国人介護人材の定着率を高めるためには、採用後のサポート体制が非常に重要です。厚生労働省の調査(令和6年度老人保健健康増進等事業)によれば、外国人介護人材が職場から受けた支援として、「施設職員に勉強を教えてもらった」が36%、「日本語の先生に教えてもらった」が26.7%、「勤務時間やシフトの調整」が24.8%という結果が出ています。
具体的な支援の例として以下が挙げられます。
- 日本語学習の時間を勤務時間内に確保する
- 介護福祉士国家試験の学習サポートを提供する
- 生活面での相談窓口を設ける
- 文化の違いを理解したうえでコミュニケーションを取る
なお、介護福祉士国家試験の合格率は日本語能力と強い相関があります。N1保有者の合格率は86.7%、N2保有者は53.4%、N3保有者は25.2%と大きく差が開きます(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。日本語教育への投資は、長期的な定着と戦力化に直結します。
受け入れ事例に学ぶ成功のポイント
事例①:特定技能1号で即戦力を確保した施設の例
関東のある特別養護老人ホームでは、慢性的な夜勤スタッフ不足を解消するために特定技能1号の外国人介護士を複数名採用しました。就労開始時点から人員配置基準に算定できるため、採用計画と運営計画をシンプルに組み立てられたことが大きなメリットだったと担当者は語ります。
採用後は、日本語学習の時間を月に数回確保し、先輩スタッフがOJTでサポートする体制を整えました。その結果、採用から半年以内に夜勤も独り立ちできるレベルに成長し、施設全体の夜勤シフトが安定したとのことです。
学び:就労開始時点から算定できる在留資格を選ぶことで、採用計画と人員計画を連動させやすくなる
事例②:EPA制度で長期的な人材育成に取り組んだ施設の例
関西のある介護老人保健施設では、EPA介護福祉士候補者を受け入れ、4年間かけて介護福祉士資格の取得をサポートしました。最初の6か月は人員配置基準への算定ができないため、その期間は「育成期間」と位置づけ、OJTや日本語研修に集中投資しました。
候補者は真面目で学習意欲が高く、3年目に介護福祉士国家試験に合格。その後も継続して施設に勤務し、後輩の外国人介護士の指導役を担うまでに成長しました。
学び:6か月の算定制限期間を「コスト」ではなく「育成投資」と捉えることで、長期的な定着と戦力化につながる
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏(元看護師・介護福祉士)に、外国人介護人材の受け入れに関するリアルな疑問を聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能1号の外国人介護士は、採用した初日から人員配置基準に算定できますか?
A. はい、算定できます。特定技能1号は就労開始と同時に介護報酬上の配置基準に算定することが認められています。「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -介護分野の基準について-」に明記されており、日本人スタッフと同様の扱いになります。ただし、訪問系サービスは受け入れ対象外となっている点にご注意ください。
Q2. EPA・技能実習の外国人介護士は、なぜ就労開始後6か月は算定できないのですか?
A. 「介護技能や業務に必要な日本語能力がある程度向上するまでの期間」として設けられたルールです。ただし、日本語能力試験N2以上を取得している場合は例外として、就労開始時点から算定が可能です。この制限については、日本人スタッフや特定技能との整合性の観点から、社会保障審議会・介護給付費分科会でも見直しの議論が行われています。
Q3. 外国人介護士が人員配置基準に算定される場合、夜勤も一人で担当できますか?
A. 在留資格によって異なります。EPA介護福祉士候補者については、単独での夜勤は不可とされています。一方、特定技能1号や在留資格「介護」については、施設の判断と本人のスキル・日本語能力に応じて夜勤に就くことが可能です。ただし安全面への配慮から、独り立ちの判断は慎重に行うことが推奨されます。
Q4. 特定技能1号の受け入れ上限はありますか?
A. はい、あります。特定技能「介護」の受入見込数は5年間で13万5,000人と定められています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。また、雇用形態は直接雇用のみで、派遣形態での受け入れは認められていません。
Q5. 外国人介護士を採用する際、どの国籍の人材が最も多いですか?
A. 2024年12月31日時点の特定技能「介護」在留者4万4,367人の国籍別内訳は、1位がインドネシア(1万2,242人・27.6%)、2位がミャンマー(1万1,717人・26.4%)、3位がベトナム(8,910人・20.1%)、4位がフィリピン(4,538人・10.2%)、5位がネパール(3,602人・8.1%)となっています。上位5か国で全体の9割以上を占めています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
まとめ
外国人介護人材の人員配置基準への算定ルールは、在留資格ごとに異なります。最後に要点を整理します。
- 特定技能1号・在留資格「介護」は就労開始時点から算定可能。採用計画と人員計画を連動させやすい
- EPA・技能実習は原則6か月後から算定可能(N2以上は就労開始時点から算定可)。育成期間として積極的に活用することが定着のカギ
- 訪問系サービスは特定技能1号の対象外。自施設のサービス種別を必ず確認すること
外国人介護人材の受け入れは、「人手不足の一時的な解消策」ではなく、施設の将来を担う仲間を迎える長期的な取り組みです。在留資格の選択から受け入れ体制の整備、日本語・キャリア支援まで、総合的に準備を進めることが成功への近道です。
まずは自施設の状況を整理し、どの在留資格が最も適しているかを専門家に相談することをお勧めします。
【YMYL注意】本記事の制度情報は執筆時点のものです。介護保険制度・在留資格制度は随時改正されます。最終判断は必ず厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公的資料、および専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能受入上限・国籍別ランキング・在留者数推移・都道府県別受入状況の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年・2026年・2040年の介護職員必要数データの根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…在留資格別在留者数(特定技能・技能実習・在留資格「介護」・EPA)の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…介護福祉士国家試験の日本語レベル別合格率・受験理由・職場支援内容の根拠
- 社会保障審議会・介護給付費分科会(2022年8月26日開催)資料…EPA・技能実習の人員配置基準算定ルール見直し議論の根拠
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -介護分野の基準について-(厚生労働省)…特定技能1号の就労開始時点からの算定可否の根拠
- 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)…EPA介護福祉士候補者受け入れ条件・マッチング制度の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
