結論(30秒でわかる要点)
- 外国人介護福祉士のビザは主に4種類あり、それぞれ要件と特徴が大きく異なる
- 在留資格「介護」は最も安定した長期雇用が可能だが、介護福祉士資格とN2レベルの日本語力が必要
- 特定技能「介護」が現在最も活用されており、比較的取得しやすく即戦力として期待できる
- 介護施設にとって外国人介護福祉士は人手不足解決の重要な選択肢となっている
- 制度は頻繁に更新されるため、最新の厚生労働省資料での確認が必要
はじめに
日本の介護現場では深刻な人手不足が続いており、2040年には約57万人の介護職員が不足すると予測されています(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。この課題解決の切り札として、外国人介護福祉士の受け入れが急速に拡大しています。
しかし、外国人介護福祉士のビザ制度は複雑で、「どのビザが最適なのか分からない」「要件が厳しそうで不安」といった声を多く耳にします。実際、在留資格によって取得要件、就労期間、業務範囲が大きく異なるため、正しい理解が不可欠です。
この記事でわかること
- 外国人介護福祉士が取得できる4つのビザの詳細要件
- 各ビザのメリット・デメリットと適用場面
- 施設が外国人介護福祉士を採用する際の具体的な流れと注意点
外国人介護福祉士ビザの基礎知識

用語の定義
「外国人介護福祉士ビザ」とは:外国人が日本で介護業務に従事するために取得する在留資格の総称で、主に4つの制度が存在する。
4つの在留資格の概要
外国人が日本で介護業務に従事できる在留資格は以下の4種類です:
- 在留資格「介護」:介護福祉士資格を持つ外国人向け
- 特定技能「介護」:一定の技能と日本語力を持つ外国人向け
- 技能実習「介護」:技能移転を目的とした研修制度
- 特定活動(EPA):経済連携協定に基づく制度
外国人介護人材の現状
厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」(2025年資料)によると、外国人介護人材の在留者数は:
- 特定技能1号:44,367人(2024年12月31日時点)
- 技能実習:15,909人(2023年12月31日時点)
- 在留資格「介護」:12,227人(2024年12月31日時点)
- EPA:3,180人(2025年4月1日時点)
特定技能制度開始以降、外国人介護人材の受け入れが急激に増加しており、介護現場の重要な戦力となっています。
各ビザの取得要件と特徴
在留資格「介護」
取得要件
- 介護福祉士国家資格の取得
- 介護福祉士養成校卒業ルート
- 実務経験3年以上+実務者研修修了ルート
- 日本語能力
- 日本語能力試験N2相当以上
- 養成校入学時または資格取得時に必要
- 雇用契約
- 介護施設との雇用契約締結
- 日本人と同等以上の報酬条件
メリット・デメリット
メリット
- 在留期間の更新回数に制限なし(実質的に永続雇用可能)
- 家族の帯同が可能(家族滞在ビザ)
- 訪問介護を含むすべての介護業務に従事可能
- 高い日本語能力によるコミュニケーション力
デメリット
- 介護福祉士国家試験の合格が必要(高いハードル)
- 対象人材が少なく、採用競争が激しい
- 養成校ルートの場合、2年間の学費負担
特定技能「介護」
取得要件
以下のいずれかを満たすこと:
- 試験合格ルート
- 介護技能評価試験合格
- 日本語能力試験N4以上合格
- 介護日本語評価試験合格
- 技能実習修了ルート
- 介護職種の技能実習2号を良好に修了
- その他のルート
- EPA介護福祉士候補者4年間修了
- 介護福祉士養成施設修了
特徴
- 在留期間:最長5年(更新可能)
- 転職:同一分野内で転職可能
- 家族帯同:原則不可
- 業務範囲:身体介護、一定条件下で訪問系サービス可能
厚生労働省データによると、介護技能評価試験の累計合格者数は128,567人、介護日本語評価試験は120,845人(2019年4月~2025年3月)となっており、着実に人材が育成されています。
技能実習「介護」
取得要件
- 基本要件
- 18歳以上
- 制度趣旨を理解していること
- 本国への技能移転が期待されること
- 介護固有要件
- 1年目:日本語能力試験N4相当
- 2年目:日本語能力試験N3相当
- 母国での介護関連業務経験または必要な訓練
特徴
- 在留期間:最長5年
- 転職:原則不可
- 目的:技能移転(人材確保ではない)
- 夜勤:2年目以降、他の介護職員との同時配置が必要
特定活動(EPA)
対象国と要件
対象国:インドネシア、フィリピン、ベトナム
要件
- インドネシア・フィリピン:看護系学校卒業または母国介護士資格
- ベトナム:看護系学校卒業
- 日本語能力:国により異なる(N3~N5相当)
特徴
- 期間:4年間(介護福祉士試験受験期間)
- 試験合格後:在留資格「介護」への変更可能
- 不合格の場合:帰国が必要
採用から定着までの実践ガイド

Step1:採用ルートの選択
- 養成校ルート
- 近隣の介護福祉士養成校への求人掲載
- 卒業予定者の採用活動
- 留学生アルバイトからの正社員登用
- 在留資格変更ルート
- 技能実習生の特定技能移行支援
- 特定技能から在留資格「介護」への移行支援
- EPA候補者の国家試験対策支援
- 海外からの直接採用
- 登録支援機関との連携
- 送り出し機関との契約
- 現地面接・選考
Step2:受け入れ準備
- 環境整備
- 多言語対応マニュアルの作成
- 生活支援体制の構築
- 住居確保・生活用品準備
- 職員研修
- 異文化理解研修
- コミュニケーション方法の共有
- 指導担当者の選定・研修
- 法的手続き
- 在留資格申請サポート
- 雇用契約書の多言語化
- 労働条件の明確化
Step3:定着支援
- 日本語学習支援
- 業務時間内での日本語研修
- 外部日本語教師の活用
- 介護福祉士国家試験対策
- キャリア形成支援
- 個別面談の実施
- 昇進・昇格制度の説明
- 長期的なキャリアプランの共有
- 生活サポート
- 定期的な生活相談
- 地域コミュニティとの交流支援
- 家族との連絡サポート
成功事例と学びのポイント

成功事例①:特定技能から在留資格「介護」への移行
関東のある特別養護老人ホームでは、ベトナム人特定技能外国人2名を採用し、3年間の手厚いサポートにより介護福祉士国家試験に合格させることに成功しました。
成功要因
- 業務時間内での日本語学習時間確保(週3時間)
- 専任指導員による個別指導
- 施設全体での受け入れ体制構築
- 家族的な雰囲気での継続的なサポート
変化と効果
- 利用者満足度の向上
- 職員の国際感覚向上
- 施設の魅力度アップによる日本人職員採用にも好影響
成功事例②:EPA候補者の長期定着
関西のグループホームでは、フィリピン人EPA候補者を10年以上継続雇用し、現在はリーダー職として活躍している事例があります。
ポイント
- 文化の違いを理解し、柔軟な働き方を提供
- 母国の家族との定期的な交流をサポート
- 日本人職員との平等な待遇と昇進機会の提供
- 地域住民との交流促進
学び
- 長期的な視点での人材育成の重要性
- 文化的多様性が組織にもたらすプラス効果
- 地域全体での外国人受け入れ意識の向上
よくある質問(専門家に聞く)
Q1. 元看護士・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
Q2. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
制度に関するよくある質問
Q1. 外国人介護福祉士ビザの取得にかかる期間はどのくらいですか?
A. ビザの種類により大きく異なります。在留資格「介護」の場合、介護福祉士養成校ルートで最短2年、実務経験ルートで3年以上の準備期間が必要です。特定技能「介護」は試験合格後、数ヶ月で取得可能ですが、日本語学習期間を含めると1~2年程度の準備期間を見込んでおくことが現実的です。
Q2. 外国人介護福祉士ビザの費用はどのくらいですか?
A. 直接的な申請費用は4,000円程度ですが、準備費用が大きく異なります。養成校ルートの場合は学費として年間100~150万円程度、試験対策費用として数十万円が必要です。海外からの招聘の場合は、渡航費、住居確保費、生活立ち上げ費用なども考慮する必要があります。
Q3. 外国人介護福祉士は夜勤業務に従事できますか?
A. 在留資格により異なります。在留資格「介護」と特定技能「介護」は夜勤可能です。技能実習は2年目以降、他の介護職員との同時配置が条件となります。EPAは介護福祉士資格取得後であれば夜勤可能です。
Q4. 外国人介護福祉士の家族は日本に呼び寄せできますか?
A. 在留資格「介護」とEPA介護福祉士のみ、家族滞在ビザでの家族帯同が可能です。特定技能と技能実習では原則として家族帯同は認められていません。
Q5. 介護福祉士国家試験の外国人合格率はどのくらいですか?
A. 令和6年度老人保健健康増進等事業調査によると、日本語能力別の合格率は以下の通りです:
- N1保有者:86.7%
- N2保有者:53.4%
- N3保有者:25.2%
- N4保有者:25%
- N5保有者:12.5%
日本語能力の向上が合格率に大きく影響することが分かります。
まとめ
- 外国人介護福祉士ビザは4種類あり、それぞれ要件・期間・業務範囲が大きく異なる
- 特定技能「介護」が現在最も活用されており、比較的取得しやすく即戦力として期待できる
- 在留資格「介護」は最も安定した長期雇用が可能だが、介護福祉士資格取得の高いハードルがある
外国人介護福祉士の受け入れは、単なる人手不足解決策ではなく、組織の国際化と成長の機会として捉えることが重要です。成功のカギは、長期的な視点での人材育成と、文化的多様性を活かした職場環境づくりにあります。
まずは自施設の状況と目標を整理し、最適なビザ制度を選択することから始めましょう。専門的なサポートが必要な場合は、経験豊富な登録支援機関や人材紹介会社への相談をお勧めします。
【YMYL注意】 在留資格制度は法改正により変更される可能性があります。実際の申請時は最新の厚生労働省・出入国在留管理庁の公式資料で詳細を確認し、必要に応じて行政書士等の専門家にご相談ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…外国人介護人材の在留者数データ
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…介護職員必要数の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語能力別合格率データ
- 出入国在留管理庁「在留資格別在留外国人数の推移」…在留外国人統計データ
- 厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」…制度概要の根拠
- 公益社団法人日本介護福祉士会「専門性を活かして在留資格『介護』で働く外国人介護職員活躍のためのガイドブック」…実践的な受け入れ方法
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
