結論(30秒でわかる要点)
- 介護施設の人手不足は深刻で、2040年には2022年比で約57万人の追加確保が必要とされている
- 外国人採用には「EPA」「在留資格『介護』」「技能実習」「特定技能」の4つのルートがある
- 特定技能1号は2024年12月末時点で44,367人と急増しており、最も活用しやすい制度として注目されている
- 受け入れ成功のカギは「即戦力への過度な期待を持たず、長期的な視点で関係を築くこと」
この記事の対象者:外国人介護士の採用を検討している施設長・採用担当者、および制度の概要を把握したい介護業界関係者
> ⚠️ 本記事で紹介する制度・数値は執筆時点の情報です。在留資格や受入制度は法改正により変更されることがあります。最新情報は厚生労働省や出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。
はじめに:「採用しても来ない」「辞めてしまう」が続く介護現場の現実

「求人を出しても応募がない」「やっと採用できても半年で辞めてしまう」——そんな悩みを抱えている介護施設は、今や珍しくありません。
介護業界の有効求人倍率は2016年以降一貫して3倍以上で推移しており、2024年6月時点でも3.71倍と高止まりしています(出典:厚生労働省)。全職業平均が1倍前後であることを考えると、いかに介護業界の採用難が突出しているかがわかります。
そうした状況の中、注目されているのが外国人介護士の採用です。政府は受け入れ制度を段階的に整備してきており、今では4つの在留資格ルートを通じて外国人が介護現場で活躍できる環境が整っています。
この記事でわかること
- 介護施設の人手不足がなぜここまで深刻なのか、背景と数字で理解できる
- 外国人採用の4つのルートと、それぞれの特徴・向いている施設がわかる
- 受け入れから定着までの実践的な手順と注意点がわかる
介護施設の人手不足はなぜ深刻なのか|現状と背景を数字で理解する

「介護施設の人手不足×外国人採用」とは
介護施設における外国人採用とは、少子高齢化による慢性的な介護人材不足を補うため、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4制度を活用して外国人介護士を雇用・育成する取り組みのことです。
人手不足の現状:2040年に向けて加速する需給ギャップ
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、介護職員の必要数は次のように推計されています。
- 2022年実績:215万人
- 2026年必要数:240万人(2022年比+25万人)
- 2040年必要数:272万人(2022年比+57万人)
57万人という数字は、現在の介護職員全体の約4分の1に相当します。日本人だけで賄うのは、構造的に難しい状況です。
人手不足の主な原因
- 少子高齢化の加速:2023年の高齢化率(65歳以上の割合)は29.1%。2040年には34.8%に達する見込み(出典:内閣府)
- 生産年齢人口の減少:2023年に7,395万人だった15〜64歳人口は、2040年には6,213万人まで減少する見通し
- 賃金水準の課題:介護職員の給与は全産業平均と比べて低い水準にあり、採用競争での不利につながりやすい
- 業務の体力的・精神的負担:夜勤・身体介護など、他業種と比べてハードルが高いと感じる求職者が多い
- 他業種との人材獲得競争:介護労働安定センターの調査では、採用困難の理由として「同業他社・他業種との競合」が最多回答
外国人採用の4つのルート|特徴と選び方を整理する

在留資格の種類と基本的な違い
外国人が介護現場で働くためには、いずれかの在留資格が必要です。現在は以下の4制度が設けられています。
| 制度 | 目的 | 在留期間 | 訪問系サービス | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| EPA | 介護福祉士資格取得・国際連携 | 資格取得前:原則4年/取得後:制限なし | 介護福祉士資格取得後は従事可能 | 日本語・介護知識の要件が厳しい。受入人数に制限あり |
| 在留資格「介護」 | 専門的・技術的分野の労働力確保 | 更新回数の制限なし | 可 | 介護福祉士資格を持つ人が対象。資格取得ルートは問わず、長期就労が可能 |
| 技能実習 | 発展途上国への技術移転(国際貢献) | 最長5年 | 条件付き可 | 監理団体を通じた受け入れ。技能実習2号修了後は特定技能へ移行可 |
| 特定技能1号 | 人手不足分野への即戦力確保 | 最長5年 | 条件付き可 | 試験合格または技能実習修了で取得可能。直接雇用のみ |
特定技能1号が急増している理由
4制度の中でも、現在最も活用が広がっているのが特定技能1号です。
厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」(令和7年3月28日)によれば、特定技能「介護」の在留者数は次のように推移しています。
- 制度開始(2019年12月末):19人
- 2023年12月末:28,400人
- 2024年6月末:36,719人
- 2024年12月末:44,367人
約5年で約2,300倍という急増ぶりです。5年間の受入見込数(上限)は135,000人と設定されており、まだ伸びしろは大きい状況です。
国籍別では次の通りです(2024年12月末時点、計44,367人)。
- 1位:インドネシア 12,242人(27.6%)
- 2位:ミャンマー 11,717人(26.4%)
- 3位:ベトナム 8,910人(20.1%)
- 4位:フィリピン 4,538人(10.2%)
- 5位:ネパール 3,602人(8.1%)
上位5か国で全体の9割以上を占めています。
受け入れ施設種別の傾向
特定技能「介護」外国人の受入施設種別(上位5位、2024年7月時点・複数回答)は以下の通りです。
- 1位:特別養護老人ホーム 7,827件
- 2位:病院 2,446件
- 3位:認知症対応型共同生活介護 2,340件
- 4位:特定施設入居者生活介護 1,996件
- 5位:介護老人保健施設 1,931件
上位5施設で全体の75.6%を占めており、入所系・施設系サービスでの活用が中心となっています。
外国人採用の進め方|受け入れから定着までのステップ

Step1:自施設に合った在留資格ルートを選ぶ
まず、自施設のサービス形態・採用目的・予算・受け入れ体制を整理しましょう。
- 訪問系サービスがある施設:在留資格「介護」またはEPA(資格取得後)が必要
- 入所系・施設系サービスのみの施設:特定技能1号が最も手続きがシンプル
- 育成・研修を重視したい施設:技能実習からスタートし、特定技能へ移行するルートも有効
- 即戦力を求める施設:介護福祉士資格取得済みの在留資格「介護」保有者を探す
Step2:採用ルートを確保する
特定技能1号の場合、採用の流れは大きく2パターンあります。
【国内在住の外国人を採用する場合】
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験に合格していることを確認
- 在留資格変更許可申請を行う
- 就労開始(目安:申請から約3〜4か月)
【海外から招へいする場合】
- 現地で試験合格を確認(試験は13か国で実施)
- 在留資格認定証明書交付申請を行う
- 来日・入職(目安:申請から約5〜7か月)
介護技能評価試験の累計合格者数は120,220人(2019年4月〜2025年1月)で、うち海外合格者が79,498人と国内の約2倍に達しています(出典:厚生労働省)。
Step3:受け入れ環境を整える
特定技能外国人を雇用する場合、事業者には以下の支援義務があります。
- 事前ガイダンス(労働条件・入国手続きの説明)
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション(8時間以上)
- 公的手続きへの同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応(母国語での対応が望ましい)
- 日本人との交流促進
- 定期的な面談(3か月に1回以上)
これらは「登録支援機関」に委託することも可能です。
受け入れ時の注意点・コツ
- 業務マニュアルは平易な日本語(やさしい日本語)で作成する:専門用語の多用を避け、イラストや図を積極的に活用する
- 日本人スタッフへの事前説明を怠らない:「なぜ外国人を採用するのか」を丁寧に共有することで、職場全体の受け入れ態勢が整う
- 小さな成功体験を積ませる:最初から難しい業務を任せず、できることを少しずつ広げていく
- 宗教・文化への配慮:食事制限(ハラール対応など)や祈祷時間への理解が、信頼関係の構築につながる
外国人採用の効果と課題|現場からの声をもとに整理する

受け入れ施設が感じるメリット
実際に外国人介護士を受け入れた施設からは、次のような声が多く聞かれます。
- 人材不足の解消:日本人だけでは埋まらなかったシフトが安定した
- 若い労働力の確保:特定技能在留者の約7割が18〜29歳(2021年12月末時点・厚労省資料)と若年層が中心
- 職場の活性化:外国人介護士が加わることで「施設の雰囲気が明るくなった」「コミュニケーションが活発になった」という声が多い(日本介護福祉士会の見解より)
- 長期雇用の可能性:在留資格「介護」への移行により、長期的な戦力として活躍するケースも増えている
外国人介護士が介護福祉士国家試験を受けた理由(複数回答)を見ると、「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%、「日本で長く住み続けたいため」が55.2%と、長期就労・定住を希望している割合が高いことがわかります(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
現場が感じる課題と対処法
- 日本語コミュニケーション:介護記録や電話対応など、高度な日本語が必要な場面での不安は依然として残る。ただし実際に一緒に働くと「想定よりコミュニケーションがとれる」と感じる職員も多い
- できる業務の制限:訪問系サービスへの従事不可(技能実習・特定技能の場合)など、在留資格によって業務範囲が異なる点を事前に理解しておく必要がある
- 在留期限の問題:技能実習・特定技能1号は最長5年だが、在留資格「介護」への移行により継続雇用が可能なケースもある
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、フィリピンで10年以上にわたり人材事業を手がけてきたGENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、施設担当者からよく寄せられる疑問にお答えいただきました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 外国人介護士は、どれくらいの期間働いてくれるものなのでしょうか?
「これは施設さんが一番気になるポイントですよね」と大町は理解を示します。
実際のデータから見ると:
- 平均勤続年数:3〜5年程度
- 長期定着:7年以上働く方も珍しくない
- 短期離職:1年未満は少数派
長く働く人の特徴:
- 職場環境が良い(人間関係、待遇)
- 生活面のサポートが充実
- キャリアパスが見えている
- 家族を呼び寄せられる(長期的な計画)
「日本人と同じで、『この職場で働きたい』と思えるかどうかが大きいです」
逆に、短期離職しやすいケース:
- 入職前の期待と現実のギャップ
- 孤立してしまう
- 給与・待遇への不満
「私たちは、定期的なフォローを通じて、早めに課題を見つけて対応するようにしています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」と技能実習の違いは何ですか?
A. 最大の違いは「目的」と「転職の可否」です。技能実習は「発展途上国への技術移転」を目的とした制度であり、転職(実習先の変更)が原則認められていません。一方、特定技能1号は「人手不足への対応」を目的とした就労資格であり、同一分野内での転職が可能です。即戦力として長く働いてほしい場合は特定技能が適しており、育成を重視したい場合は技能実習からスタートして特定技能へ移行するルートも選択肢になります。
Q2. 特定技能「介護」の採用にかかる費用はどのくらいですか?
A. 採用方法や支援機関の選択によって異なりますが、一般的には国内採用で30〜60万円程度、海外からの招へいで50〜100万円程度が目安とされています(登録支援機関への委託費用・渡航費・住居準備費用などを含む)。なお、外国人材の採用・定着を支援する助成金制度も設けられており、賃金要件を満たす場合は支給対象経費の3分の2(上限72万円)が支給される制度もあります。詳細は最新の公的資料でご確認ください。
Q3. 日本語能力が低い外国人でも採用できますか?
A. 特定技能1号の取得要件として、日本語能力試験N4以上(または国際交流基金日本語基礎テスト合格)が必要です。N4は「日常的な場面での基本的な日本語を理解できるレベル」に相当します。ただし、介護福祉士国家試験の合格率はN2保有者で53.4%、N3保有者で25.2%と日本語レベルによって大きく差があります(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。長期的なキャリア形成を見据えるなら、日本語学習支援を入職後も継続することが重要です。
Q4. 訪問介護で外国人を活用することはできますか?
A. 技能実習・特定技能1号については、現在のところ訪問系サービスへの従事は認められていません。訪問系サービスで外国人介護士を活用したい場合は、在留資格「介護」(介護福祉士取得後)またはEPA介護福祉士(資格取得後)が対象となります。なお、訪問系サービスへの従事拡大については、厚生労働省の検討会で議論が進んでいますので、最新情報を随時確認することをお勧めします。
Q5. 外国人介護士が職場に定着するために、施設側で特に重要なことは何ですか?
A. 令和6年度老人保健健康増進等事業の調査によると、外国人介護人材が職場から受けた支援として「施設職員に勉強を教えてもらった」が36%、「日本語の先生に教えてもらった」が26.7%、「勤務時間やシフトの調整」が24.8%となっています。技術・日本語の両面でのサポートと、働きやすいシフト調整が定着に直結していることがわかります。また、生活面のサポート(住居・銀行口座開設・公的手続きの同行など)も、安心して働き続けるための重要な要素です。
まとめ:外国人採用は「選択肢」から「必須戦略」へ
介護施設における人手不足は、少子高齢化の構造的な問題であり、短期的な解決策はありません。外国人介護士の採用は、もはや「やってみようかな」という選択肢ではなく、事業継続のための重要な戦略の一つになっています。
この記事の要点3つ
- 2040年には約57万人の介護職員が不足する見込み。外国人採用は人材確保の重要な柱であり、特定技能1号の在留者数は2024年末に44,367人まで増加している
- 4つの在留資格にはそれぞれ特徴がある。施設のサービス形態・採用目的・予算に合わせて最適なルートを選ぶことが成功の第一歩
- 定着のカギは「長期的な視点」と「生活・学習サポート」。外国人介護士は学ぶ意欲が高く、職場環境が整えば長期就労につながりやすい
まずは自施設の状況を整理し、どの在留資格ルートが合っているかを検討するところから始めてみてください。制度や手続きに不安がある場合は、登録支援機関や専門家への相談も有効な手段です。
> 【YMYL注意】本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。在留資格制度・受入要件・助成金制度は法改正により変更される場合があります。採用・雇用の最終判断は、厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公的資料および専門家(行政書士・社会保険労務士など)への確認のうえで行ってください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能受入上限・国籍別ランキング・都道府県別受入状況・在留者数推移の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数(240万人・272万人)の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別国家試験合格率・職場支援内容・受験理由の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の確保・定着」2025年資料…在留資格別在留者数(特定技能1号・技能実習・在留資格「介護」・EPA)の根拠
- 内閣府「令和5年版高齢社会白書」…高齢化率・生産年齢人口推計の根拠
- 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」…受け入れ手順・支援義務の根拠(厚生労働省公式サイト)
- 全国老施協「令和4年度外国人介護人材に関する実態調査結果」…外国人受け入れ状況・施設の意向に関するデータの根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
