結論(30秒でわかる要点)
特定技能外国人の転職率・離職率は、日本人の新卒者と比べてむしろ低い水準にあり、「すぐ辞める」という印象は実態と異なる。
- 重要ポイント①:特定技能全体の自己都合離職率は16.1%で、日本人大卒3年以内離職率(31.5%)より低い
- 重要ポイント②:転職率は2021年の29.2%から2024年には12.2%へと3年連続で低下中
- 重要ポイント③:退職後も約45%が日本国内での就労を継続しており、「働き続けたい」意欲は高い
この記事は、特定技能外国人の採用・定着に課題を感じている施設・企業の担当者向けです。
> ⚠️ 特定技能制度の運用ルールは随時更新されます。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式資料でご確認ください。
はじめに

「せっかく採用した特定技能外国人がすぐ辞めてしまうのでは?」「転職が自由な制度だから、定着しないのでは?」——そんな不安を抱えている採用担当者や施設長の方は少なくありません。
確かに、特定技能制度は転職が認められており、技能実習制度とは大きく異なる仕組みです。しかし、実際のデータを見ると、特定技能外国人の離職率・転職率は、多くの人が想像するよりもずっと低い水準にあることがわかります。
この記事では、以下の3点を中心に解説します。
- 特定技能外国人の転職率・離職率の実態(公式統計データに基づく)
- 転職・離職が起きる主な原因と背景
- 定着率を高めるための具体的な5つの対策
正確なデータと現場の知見をもとに、「どうすれば長く働いてもらえるか」という問いに正面から答えていきます。
特定技能外国人の転職率・離職率の実態

「特定技能外国人の転職率」とは
特定技能外国人の転職率とは、特定技能1号の在留資格で就労中の外国人が、同一の所属機関(雇用先)を離れ、別の職場へ移った割合を示す指標のことです。
公式統計データで見る転職率・離職率の現状
まず、出入国在留管理庁が公表している公式統計をもとに、実態を整理します。
【自己都合離職率:16.1%】
制度施行(2019年4月)から2022年11月末までの期間において、特定技能外国人の自己都合による離職者数は19,891名、在留者数に対する離職率は16.1%でした(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」)。
この数字を日本人と比較すると、以下のようになります。
| 区分 | 就職後3年以内の離職率 |
|---|---|
| 特定技能外国人(3年半以内) | 16.1% |
| 日本人・大学卒(3年以内) | 31.5% |
| 日本人・短大等卒(3年以内) | 41.9% |
| 日本人・高校卒(3年以内) | 35.9% |
| 日本人・中学卒(3年以内) | 57.8% |
(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)
特定技能外国人の離職率は、日本人の新規学卒就職者のいずれの学歴区分と比べても明らかに低い水準です。「特定技能外国人はすぐ辞める」という印象は、データ上は根拠が薄いといえます。
【転職率は3年連続で低下中】
出入国在留管理庁が2024年に公表したデータによると、2021年から2024年の間に転職を経験した特定技能者は全体の22.4%。しかし年度別に見ると、2021年の29.2%から2024年には12.2%へと、3年連続で低下しています。
日本国内の大学新卒者が就職後3年未満で転職する平均値が約35%であることを考えると、特定技能外国人の転職率は相対的にかなり低い水準にあります。
業種別の転職率に大きな差がある
転職率は業種によって大きく異なります。専門性が高く就労環境が整いやすい業種ほど低い傾向があります。
| 業種 | 自己都合離職率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 航空 | 8.0% | 最も低い。高い専門性・資格が必要 |
| 自動車整備 | 8.9% | 専門技術が定着を促進 |
| 建設 | 10.8% | 長期プロジェクトが多く転籍制限あり |
| 介護 | 10.6% | 人間関係の構築が定着に寄与 |
| 農業 | 20.1% | 季節労働の影響で転職率が高め |
| 飲食料品製造業 | 19.3% | 労働条件の変動が影響 |
(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」)
介護分野の離職率は10.6%と全業種平均(16.1%)より低く、人間関係や利用者との絆が定着に大きく貢献していると考えられます。
離職後の「その後」——「辞める=帰国」ではない
特定技能外国人が自己都合で退職した後の状況を見ると、「日本を去る」ケースは全体の約31.4%にとどまります。
| 退職後の状況 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 帰国 | 6,061人 | 31.4% |
| 特定技能資格内での転職 | 5,852人 | 30.3% |
| 別の在留資格への変更 | 2,915人 | 15.1% |
| その他(求職活動中など) | 4,471人 | 23.2% |
(出典:出入国在留管理庁「論点第2の1関連資料」)
退職者の約45%(転職30.3%+在留資格変更15.1%)が日本国内での就労を継続しています。これは、「日本で働き続けたい」という外国人材の強い意欲を示しています。裏を返せば、企業が魅力的な職場環境を整えることで、離職を防げる可能性が十分にあるということです。
特定技能外国人が転職・離職する主な原因

転職理由のトップは「より良い条件を求めて」
現場での調査やヒアリングをもとに整理すると、特定技能外国人が転職・離職する主な原因は以下の5つに集約されます。
- 賃金・待遇への不満:より高い給与や好条件の職場へ移る動きが最も多い
- 仕事内容とのミスマッチ:採用前の説明と実際の業務内容が異なる
- コミュニケーション・孤立感:日本語の壁や職場での孤立が精神的な負担になる
- キャリアパスの不透明さ:将来の昇給・昇格・特定技能2号取得の見通しが見えない
- 生活面のサポート不足:住居・銀行口座・日常生活の困りごとへの支援がない
転職率が高い時期は「就労開始から3年未満」
出入国在留管理庁のデータによると、転職を経験した特定技能者の約98%が就労開始から3年未満で転職しています。特に入社直後から1年目にかけての時期が最も転職リスクが高く、この時期のフォローアップが定着率を左右します。
「国内転職採用」と「海外直接採用」で定着率に差
採用ルートによっても定着率には差が出ます。ある登録支援機関の調査によると、国内で転職してきた特定技能外国人の定着率は約60%であるのに対し、海外から直接採用した場合の定着率は85%と高い傾向が見られます。
海外直接採用では、入国前から日本語研修・生活支援・文化適応のサポートを行えるため、入社後のギャップが生まれにくいことが一因と考えられます。
定着率を高める5つの具体的な対策

Step1:採用段階でのミスマッチを防ぐ
定着の問題は、採用の段階から始まっています。業務内容・勤務条件・職場環境を採用前に明確に伝えることが、最初の一歩です。
- 実際の業務内容を動画や写真で事前に共有する
- 給与・残業・休日などの条件を母国語で説明する
- 可能であれば「現場体験」や「ショートインターン」を実施する
Step2:キャリアパスと昇給制度を明確に示す
「この職場で頑張れば、どんな未来が待っているか」を見える化することが、長期定着の大きな動機づけになります。
- 特定技能2号取得支援の有無と内容を明示する
- 昇給・昇格のロードマップを入社時に共有する
- 介護福祉士国家試験の受験支援(勉強時間の確保・費用補助など)を整備する
なお、介護福祉士国家試験の合格率は日本語能力と強い相関があります。N2保有者の合格率は53.4%、N3では25.2%と大きな差があるため(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)、日本語学習支援もキャリア支援の一環として位置づけることが重要です。
Step3:生活面・コミュニケーション支援を強化する
外国人材が「孤立感」を感じると、離職リスクが急激に高まります。職場内外での支援体制を整えることが不可欠です。
- バディ制度(日本人スタッフとの1対1のサポート)を導入する
- 月1回以上の交流会や食事会を実施する
- 母国語での相談窓口(支援機関や社内担当者)を設ける
- 日本語学習支援(社内レッスン・オンライン教材)を整備する
Step4:福利厚生を充実させ、給与以外の満足度を高める
給与だけでなく、「この職場で働いていて良かった」と感じられる環境づくりが定着に直結します。
- 社宅・寮・家具付き住居の提供
- 食費補助・まかない制度の導入
- 初期生活費(銀行口座開設・スマートフォン契約など)のサポート
- 交通費補助や帰省費用の支援
Step5:定期面談とフォローアップ体制を構築する
問題が大きくなる前に早期発見・早期対処するための仕組みが必要です。
- 入社後3〜6か月以内に複数回の面談を実施する
- 面談では「業務面」だけでなく「生活面・メンタル面」も確認する
- 面談結果を記録・可視化し、企業と支援機関が情報を共有する
- 最低でも月1回、定期的にフィードバックの機会を設ける
具体的な事例から学ぶ定着のポイント

事例①:介護分野で定着率90%以上を実現した施設の取り組み
関西のある特別養護老人ホームでは、特定技能外国人を複数名同時に採用し、入社前から日本語研修を実施。入社後は先輩スタッフとのバディ制度を導入し、業務上の疑問だけでなく生活面の困りごとにも対応できる体制を整えました。
その結果、採用から3年後の定着率が90%を超え、外国人介護士が利用者様との信頼関係を築き、チームの中核を担うまでに成長した事例があります。
ポイントは「最初から即戦力を求めず、一緒に育つ姿勢を持ったこと」と、施設長が語っています。
事例②:転職率を下げた「見える化」の取り組み
東京都内のある介護施設では、外国人スタッフの不安度・満足度を定期的にスコア化して可視化する仕組みを導入。「日本語不安度」「人間関係不安度」「業務負荷」などを数値で把握し、問題が顕在化する前に対策を打てるようになりました。
入社から1年以内の離職率が従来比で約半減し、採用コストの回収期間も大幅に短縮されたとのことです。
学び:外国人材の定着は「感覚」ではなく「データ」で管理することが、再現性のある改善につながります。
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、現場目線での疑問に答えていただきました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護士・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能外国人は自由に転職できるのですか?
A. はい、特定技能1号の外国人は、同一の分野・業種内であれば転職が認められています。これは技能実習制度との大きな違いです。ただし、転職先も特定技能の受入れ要件を満たしている必要があります。また、転職の際には出入国在留管理庁への届出が必要です。「転職が自由=すぐ辞める」ではなく、実際のデータでは転職率は年々低下しており、2024年には12.2%まで改善しています。
Q2. 特定技能2号に移行すると定着率は上がりますか?
A. 特定技能2号は在留期間の上限がなく、家族帯同も可能になるため、長期定着を考える外国人材にとって大きなメリットがあります。ただし、2号の試験はハードルが高く、企業のサポートなしでは合格が難しいとされています。施設側が特定技能2号取得を積極的に支援する姿勢を示すことが、定着率向上に直結します。
Q3. 介護分野の特定技能外国人はどのくらいいますか?
A. 厚生労働省の公表データによると、特定技能1号「介護」の在留者数は2024年12月末時点で44,367人に達しています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。制度開始の2019年末には19人だったことを考えると、約5年で約2,300倍という急速な増加です。国籍別では、インドネシア(27.6%)、ミャンマー(26.4%)、ベトナム(20.1%)が上位3か国を占めています。
Q4. 特定技能外国人の受け入れには上限がありますか?
A. 特定技能「介護」分野には5年間の受入見込数として135,000人の上限が設けられています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。なお、訪問系サービスは対象外で、直接雇用のみが認められています。
Q5. 転職率が高い時期はいつですか?対策はありますか?
A. 転職を経験した特定技能者の約98%が就労開始から3年未満で転職しています。特に入社後6か月以内が最も離職リスクの高い時期です。この時期に定期面談・バディ制度・生活支援を集中的に行うことが、最も効果的な定着対策となります。「入社直後の集中フォロー」が、長期定着への最大の投資といえるでしょう。
まとめ
特定技能外国人の転職率・離職率について、データと現場の知見をもとに解説してきました。最後に重要なポイントを整理します。
- データで見ると離職率は低い:特定技能外国人の自己都合離職率16.1%は、日本人新卒者(大卒31.5%)より大幅に低く、「すぐ辞める」という印象は実態と異なる
- 転職率は改善傾向にある:2021年の29.2%から2024年には12.2%へと3年連続で低下しており、制度が成熟しつつある
- 定着は「受け入れ体制の質」で決まる:採用段階のミスマッチ防止・キャリアパスの可視化・生活支援・定期面談の5つの対策が定着率向上の核心
「外国人だから難しい」ではなく、「働く人として当たり前の環境整備」が定着率向上の本質です。まずは自社の受け入れ体制を見直すところから始めてみてください。
不安や疑問がある方は、登録支援機関や専門家への相談から一歩を踏み出してみましょう。
> ⚠️【YMYL注意】本記事の制度情報・統計データは執筆時点のものです。特定技能制度は随時改正される可能性があります。最終判断は出入国在留管理庁・厚生労働省の最新公式資料、または専門家(行政書士・登録支援機関)にご確認ください。
出典・参考
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」…特定技能外国人の自己都合離職率16.1%・業種別離職率・退職後の状況の根拠
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人の転職状況」(2024年)…年度別転職率(2021年29.2%→2024年12.2%)の根拠
- 出入国在留管理庁「論点第2の1関連資料」…退職後の在留状況(帰国31.4%・転職30.3%等)の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能1号介護在留者数44,367人・国籍別ランキング・受入上限135,000人の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別介護福祉士国家試験合格率(N2:53.4%等)の根拠
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和元年3月卒業者の状況)」…日本人学歴別3年以内離職率(大卒31.5%等)の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。