結論(30秒でわかる要点)
特定技能外国人にも日本の労働基準法がそのまま適用され、労働時間の上限は1日8時間・週40時間が原則です。
- 残業をさせるには「36協定」の締結と労働基準監督署への届出が必須
- 残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間以内(特別条項でも年720時間が上限)
- 深夜・休日労働には割増賃金(25〜35%)の支払い義務があり、日本人と同等の扱いが必要
対象者:特定技能外国人を雇用中または採用検討中の施設・企業の担当者
> ⚠️ 本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。労働基準法や特定技能制度は改正されることがあるため、最新の公的資料や専門家にご確認ください。
はじめに

「特定技能の外国人を採用したいが、労働時間のルールがよくわからない」「残業をお願いしたいとき、何か特別な手続きが必要なのか」――そんな疑問を抱える採用担当者や施設管理者の方は少なくありません。
特定技能制度は2019年4月にスタートし、2024年12月末時点で特定技能1号の在留外国人数は44,367人(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)にまで増加しています。人手不足が深刻な介護・外食・製造業などで欠かせない存在になりつつある一方、労働法規への理解不足から思わぬトラブルに発展するケースも報告されています。
この記事でわかることは以下の3点です。
- 特定技能外国人に適用される労働時間の基本ルールと上限
- 残業・深夜・休日労働を命じる際に必要な手続きと注意点
- 変形労働時間制やシフト勤務を活用した柔軟な労務管理の方法
「知らなかった」では済まされない法令違反を防ぐために、ぜひ最後までご覧ください。
特定技能の労働時間上限とは|基本ルールを整理する

「特定技能 労働時間 上限」の定義
特定技能外国人の労働時間上限とは、日本の労働基準法に基づき、国籍を問わずすべての労働者に適用される「1日8時間・週40時間」という法定労働時間の上限規制のことです。
特定技能という在留資格は、あくまで「どの仕事に就けるか」を定めるものであり、就労後の労働条件については日本人と完全に同じ労働基準法が適用されます。外国人だからといって特別に長く働かせたり、逆に就労時間を短く制限したりするルールは存在しません。
対象・非対象の整理
労働時間規制が適用される(対象)
- 特定技能1号・2号のすべての在留資格者
- 正社員・契約社員・パートタイムを問わず雇用されるすべての労働者
- 夜勤・シフト勤務・交替制勤務で働く外国人材
労働時間規制の例外となりうるケース(非対象)
- 管理監督者に該当する立場(ただし深夜割増は適用)
- 高度プロフェッショナル制度の対象者(特定技能には通常該当しない)
なお、特定技能はフルタイム就労が前提の在留資格です。出入国在留管理庁の定義では「週労働時間が30時間以上、かつ週5日以上・年間217日以上」がフルタイムの目安とされており、アルバイトやパートタイムでの就労は認められていません。
労働基準法が定める休憩・休日のルール
労働時間の上限と合わせて、休憩と休日のルールも正確に把握しておく必要があります。
休憩時間の義務
- 1日の労働時間が6時間を超える場合:45分以上の休憩が必要
- 1日の労働時間が8時間を超える場合:60分以上の休憩が必要
休日の義務
- 原則として1週間に1日以上、または4週間に4日以上の法定休日を付与
介護や宿泊業など、繁忙期や夜勤が多い職場では、シフトの組み方によって休憩が取りにくくなりがちです。あらかじめ勤務表に休憩時間を明記し、上司が「○時になったら休憩に入ってください」と声をかけるなど、現場レベルの工夫が不可欠です。
特定技能の残業・上限規制と36協定の実務対応

Step1:36協定の締結と届出
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業を命じるには、「36(サブロク)協定」の締結と労働基準監督署への届出が必須です。これは特定技能外国人に対しても、日本人まったく同様に求められます。
36協定には以下の内容を明記する必要があります。
- 時間外労働・休日労働の限度時間
- 労使の合意内容
- 特別条項の有無と適用条件
36協定を締結・届出せずに残業をさせた場合は労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になる可能性があります。また、特定技能制度では受入れ企業に「過去5年以内の労働関係法令違反がないこと」が求められているため、違反が発覚すると受入れ資格を失うリスクもあります。
Step2:残業時間の上限を把握する
36協定を締結した場合でも、残業時間には明確な上限が設けられています。
特別条項を設けた場合でも、原則の月45時間を超えてよいのは年6か月までという制限は変わりません。これを超えると罰則の対象となります。
Step3:割増賃金の支払い義務を確認する
残業・深夜・休日労働に対しては、通常賃金に割増率を上乗せして支払う義務があります。特定技能外国人も例外ではありません。
割増賃金の支払いを怠ると、未払い賃金として訴訟や是正命令の対象となります。特に外国人材は賃金計算の仕組みを十分に理解していないケースもあるため、給与明細を丁寧に説明する姿勢が大切です。
注意点:変形労働時間制の活用
介護や宿泊業など、繁忙期と閑散期の差が大きい業種では、変形労働時間制を導入することで柔軟なシフト設計が可能になります。
1か月単位の変形労働時間制を採用すると、繁忙期に1日8時間・週40時間を超える勤務を設定できる代わりに、閑散期の勤務時間を短くすることで全体の平均を法定内に収めることができます。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 就業規則への記載
- 労使協定の締結
- 事前にシフト表を確定させること(後から変更は原則不可)
急な変更や不規則なシフトへの対応には限界があるため、現場管理者との密なコミュニケーションが欠かせません。
業種別の労働時間管理と実際の課題

介護施設における夜勤シフトの注意点
介護業界では24時間体制のサービス提供が求められるため、日勤・夜勤の交替勤務が一般的です。夜勤は16時間連続(仮眠含む)や2交替・3交替制など施設によって運用が異なります。
関東のある特別養護老人ホームでは、夜勤シフトの連続勤務が問題視され、記録上は8時間勤務でも実態は16時間以上の拘束が続いていたことが判明し、是正勧告を受けた事例があります。こうしたケースを防ぐには、勤務記録と実態の乖離をなくすための定期的なモニタリングが不可欠です。
特定技能外国人を含む外国人介護士の受入れ状況を見ると、特別養護老人ホームが7,827件と最多で、次いで病院(2,446件)、認知症対応型共同生活介護(2,340件)と続きます(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日・2024年7月19日時点)。夜勤を伴う施設形態が多いだけに、労働時間管理の重要性は特に高いといえます。
外食・宿泊業における深夜勤務対応
外食業や宿泊業では、22時以降の深夜勤務が常態化しやすい傾向にあります。深夜割増賃金(25%以上)の支払いはもちろん、公共交通機関が終了した後の帰宅手段の確保も施設側の配慮として求められます。
繁忙期に残業が集中しやすい業種では、特別条項付き36協定の整備と、月ごとの残業時間の適切な管理が経営上のリスク管理につながります。
勤怠管理システムの選択と保存義務
外国人材を雇用する企業では、勤怠記録を正確に残すことが在留資格更新時や監査対応においても重要な証拠となります。
- タイムカード:安価で導入しやすいが、手書きや打刻忘れのリスクあり
- ICカード・顔認証:正確性が高いが、導入コストと教育が必要
- クラウド型勤怠管理システム:リモートでの確認・集計が可能
労働基準法上、勤怠記録には3年間の保存義務があります。在留資格の適正管理という観点からも、より長期の保存と定期的なバックアップが推奨されます。
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表で、元看護師・介護福祉士の大町潤一氏に、外国人介護士の受入れに関する現場目線の疑問をぶつけました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
特定技能の労働時間に関するよくある質問
Q1. 特定技能外国人にも36協定は必要ですか?
はい、必須です。特定技能外国人も日本の労働基準法の適用を受けるため、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業を命じる場合は、36協定の締結と労働基準監督署への届出が不可欠です。国籍による例外はありません。
Q2. 特定技能外国人の残業時間の上限は日本人と同じですか?
はい、まったく同じです。原則として月45時間・年360時間が上限で、特別条項付き36協定を締結した場合でも年720時間(時間外のみ)が上限となります。外国人だからといって上限が緩和されることはなく、違反した場合の罰則も同様に適用されます。
Q3. 変形労働時間制は特定技能外国人にも使えますか?
使えます。介護や宿泊業など繁閑の差が大きい業種では、1か月単位または1年単位の変形労働時間制を導入することで、繁忙期に長い勤務時間を設定しつつ、全体の平均を法定内に収めることが可能です。ただし、就業規則への記載と労使協定の締結が前提条件となります。
Q4. 特定技能外国人に深夜勤務をお願いする際の注意点は?
深夜(午後10時〜翌午前5時)の勤務には、通常賃金の25%以上の割増賃金を支払う義務があります。また、深夜勤務が時間外労働と重なる場合は割増率が合算されます。外国人材に対しては、給与明細で割増計算の内訳をわかりやすく説明することも、信頼関係の構築につながります。
Q5. 特定技能外国人の雇用契約期間に上限はありますか?
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。また、雇用契約の期間を定める場合、労働基準法により1回の契約期間の上限は原則3年となっています。継続して雇用するためには、在留資格の更新と雇用契約の更新を合わせて行う必要があります。
まとめ
特定技能外国人の労働時間管理は、日本人と同じ労働基準法のルールに則って行うことが大原則です。最後に重要ポイントを整理します。
- 労働時間の上限は1日8時間・週40時間。残業には36協定の締結と届出が必須で、上限は原則として月45時間・年360時間
- 割増賃金の支払いは義務。時間外25%以上・深夜25%以上・休日35%以上を正確に計算し、給与明細で丁寧に説明する
- 変形労働時間制や勤怠管理システムの活用で、繁忙期に対応しながら法令遵守の体制を整えることが長期的な人材定着につながる
まずは自社の36協定の内容と勤怠管理体制を見直すところから始めてみてください。不安な点があれば、社会保険労務士や登録支援機関への相談も有効な選択肢です。
> 【YMYL注意】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の労務管理に関する最終判断は、最新の公的資料の確認および社会保険労務士等の専門家へのご相談をお勧めします。制度は随時更新されることがあります。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能1号在留者数44,367人・受入見込数135,000人・国籍別ランキング・施設種別データの根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年に240万人・2040年に272万人の介護職員が必要とされる根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」(https://www.moj.go.jp/isa/)…特定技能1号・2号の在留資格要件、フルタイム定義、対象16分野の根拠
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」(https://www.mhlw.go.jp/)…36協定・月45時間・年360時間・特別条項の上限規制の根拠
- 厚生労働省「労働基準法における労働時間制度の概要」…1日8時間・週40時間の法定労働時間、休憩・休日・割増賃金ルールの根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別国家試験合格率・職場支援の実態データの根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
