結論(30秒でわかる要点)
外国人介護士の離職率は、日本人介護職員全体の離職率よりも低い傾向にあるが、今後の制度拡充にともない状況は変化しつつある。
- 重要ポイント①:特定技能外国人の自己都合離職率は10.6%で、介護職員全体(12.4%)より低い
- 重要ポイント②:離職理由の第1位は「介護以外の職種への転職(52.1%)」、第2位は「賃金への不満(36.3%)」
- 重要ポイント③:定着率向上には、生活支援・キャリアパス提示・異文化理解の3本柱が有効
対象読者:外国人介護士の採用・定着に課題を感じている施設管理者・介護事業者の方
> ⚠️ 本記事で紹介する制度・統計データは更新される可能性があります。最終判断は厚生労働省や出入国在留管理庁の最新公的資料、または専門家にご確認ください。
はじめに

「採用してもすぐ辞めてしまうのでは…」。外国人介護士の受け入れを検討する施設から、こうした不安の声をよく耳にします。確かに、言語・文化・生活習慣の違いを抱えながら働く外国人介護士には、日本人とは異なる課題があることも事実です。
しかし、統計データを見ると「外国人はすぐ辞める」という印象は必ずしも正確ではありません。適切なサポート体制があれば、長期的に活躍する人材も多く存在します。
この記事でわかること:
- 外国人介護士の離職率の実態と、日本人との比較データ
- 離職につながる3つの根本原因と、その具体的な対処法
- 定着率を高めるための優先度の高い施策と成功事例のポイント
外国人介護士の離職率の実態|データで見る現状

「外国人介護士の離職」とは何か:定義
外国人介護士の離職とは、在留資格(特定技能・技能実習・EPA・在留資格「介護」など)を持つ外国人介護職員が、雇用契約を終了し現在の施設を退職することを指す。在留資格の制限があるため、転職先は外国人を受け入れられる施設に限られる点が日本人と大きく異なる。
統計データ:日本人 vs 外国人の離職率比較
外国人介護士の離職率について、まず全体像を数字で把握しておきましょう。
| 対象 | 離職率 | 出典・時点 |
|—|—|—|
| 介護職員全体 | 12.4% | 令和6年度「介護労働実態調査」 |
| 特定技能外国人(自己都合) | 10.6% | 出入国在留管理庁資料(令和5年2月時点) |
特定技能外国人の離職率を年換算に慣らすと、さらに低い水準(約2.89%)になるという試算もあります。在留資格の制限により、仮に転職を希望しても外国人を受け入れられる施設を探す必要があり、選択肢が限られることが離職率を低く抑えている一因です。
また、全国老人福祉施設協議会の「令和4年度外国人介護人材に関する実態調査結果」によると、外国人介護人材を受け入れている施設の割合は全体の約42%にとどまっており、転職先が容易には見つからない現状があります。
今後は状況が変化する可能性がある
ただし、楽観視はできません。令和6年3月の閣議決定により、令和6年4月からの5年間における特定技能「介護」分野の受入見込数は135,000人と設定されました(厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
これは制度開始からの最初の5年間と比べ、2倍以上の規模です。実際、特定技能「介護」の在留者数は以下のように急増しています。
- 2019年12月末(制度開始時):19人
- 2023年12月末:28,400人
- 2024年12月末:44,367人(約5年で約2,300倍)
受け入れ規模が拡大し、外国人介護士が転職できる施設の選択肢が増えるにつれ、今後は離職率が上昇していく可能性があります。施設側が早い段階で定着対策を講じることが、これまで以上に重要になっています。
外国人介護士が離職する3つの根本原因

原因①:仕事内容と生活実態のギャップ
来日前に想定していた仕事内容と、実際の現場の間に大きなギャップが生じるケースは少なくありません。
特定技能・技能実習の在留資格認定基準では、日本語能力試験JLPTのN4レベル(一般的に小学生低学年程度)が最低ラインとされています。しかし、「日常会話ができる」と聞いていたにもかかわらず、来日してみると意思疎通が難しい場面が多く、受け入れ側が驚くケースも珍しくありません。
また、来日前に現地送り出し機関やブローカーに30〜50万円程度を支払っているケースが多く、その借金返済のプレッシャーを抱えたまま働き始める外国人介護士もいます。昨今の円安はこの問題をさらに深刻にしており、賃金への不満につながりやすい状況です。
原因②:サポート体制の不備と孤立
全国老人福祉施設協議会が実施した最新調査(2025年1〜2月、192施設回答)によると、外国人介護人材の離職理由は以下のとおりです。
- 介護以外の職種への転職:52.1%(過去5年間)
- 賃金への不満:36.3%
- 病気のため:26.8%
- 他の施設への転職:22.3%
離職理由の第1位が「介護以外への転職」であることは、職種そのものへの定着が課題であることを示しています。また、賃金への不満が第2位に挙がっていることから、「離職には賃金の満足度が影響している」と分析されています。
登録支援機関が実質的に機能していないケースも問題です。行政書士事務所が片手間で登録支援を兼ねていたり、母国語での対応ができなかったりする場合、外国人介護士がSOSを出しても誰にも届かず、孤立してしまうことがあります。
原因③:メンタルケアと生活支援の不足
仕事以外の悩みも、離職の大きなきっかけになります。
- 人間関係のストレス(文化・価値観の違いによるすれ違い)
- 家族の病気や家庭の事情による帰国
- 将来への不安(在留資格の更新、キャリアの見通しが不明確)
特に入国直後は日本語能力が低く、先輩や上司に相談できずに自信を失い、塞ぎ込んでしまうケースもあります。やる気がないと誤解されるケースもあり、適切なメンタルケアの仕組みが求められます。
外国人介護士の離職を防ぐ5つの対策

Step 1:生活基盤の安定(住居・福利厚生の整備)
最初に取り組むべきは、生活の安定です。全国老人福祉施設協議会のアンケートによると、外国人介護士を受け入れている施設のうち、寮を設置している割合は61.9%にのぼります。
- 寮の提供または家賃補助の実施
- 銀行口座開設・携帯契約など生活手続きのサポート
- 食事・宗教的配慮(ハラール食など)への対応
生活の不安が取り除かれることで、仕事への集中度が高まります。
Step 2:明確なキャリアパスの提示
「この施設で働き続けると、どんな未来があるのか」を具体的に示すことが、長期定着のカギです。
令和6年度老人保健健康増進等事業の調査によると、外国人介護人材が介護福祉士国家試験を受けた理由(複数回答)は以下のとおりです。
- 日本で介護職として働き続けるため:68.9%
- 日本で長く住み続けたいため:55.2%
- 専門職として介護の知識技術を得るため:51.7%
多くの外国人介護士が「長く日本で働きたい」という意欲を持っています。介護福祉士取得後のリーダー・主任への昇格、社会福祉士やケアマネージャーへのステップアップなど、1年後・3年後・5年後のキャリアを一緒に描くことで、学習意欲と定着率の両方が高まります。
Step 3:日本語・業務サポートの継続的な提供
同調査によると、外国人介護人材が職場から受けた支援の内訳は以下のとおりです。
- 施設職員に勉強を教えてもらった:36%
- 日本語の先生に教えてもらった:26.7%
- 勤務時間やシフトの調整:24.8%
入職後も継続的な日本語教育や業務サポートを提供することが、定着率向上に直結します。また、なお介護福祉士国家試験の合格率は日本語レベルによって大きく異なります。
- N1保有者:86.7%
- N2保有者:53.4%
- N3保有者:25.2%
- N4保有者:25%
N3以上を目標とした日本語教育の支援が、資格取得・長期定着の両面で効果的です。
Step 4:異文化理解と職場の相互理解
「報連相は当然」「言わなくてもわかってほしい」という日本特有の感覚は、文化的背景の異なる外国人介護士には通じないことがあります。
- 朝礼やミーティングで5分程度、お互いの文化・習慣を紹介し合う
- 外国人介護士の母国語や伝統料理を職場に紹介する機会をつくる
- 日本人職員向けの異文化理解研修を実施する
相互理解を深めることで、職場内の孤立を防ぎ、チームとしての一体感が生まれます。
Step 5:採用の多国籍化と継続的な採用体制の整備
どれほど手厚いサポートをしても、在留資格の制限や家庭の事情で離職するケースはゼロにはなりません。そのため、一定割合の離職を見越した採用体制を整えることも重要です。
- 複数の国籍から採用することで、特定国への依存リスクを分散
- 外国人材を受け入れやすい書類・手続き体制を整備しておく
- 紹介会社・登録支援機関の質を事前に十分確認する
定着した施設に共通する3つの成功パターン
成功事例①:丁寧なマッチングと入職後フォローで定着
東日本のある介護施設では、ベトナム・ミャンマー出身の特定技能人材を複数名受け入れました。当初は気候・文化の違いへの不安がありましたが、入職前の段階から現場のリアルな情報を共有し、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぐ取り組みを行いました。
入職後も母国語でのサポートや書類作成の支援を継続した結果、外国人介護士が現場に定着。「最初の不安は時間とともに消え、今では欠かせない存在」という声が現場から聞かれるようになりました。
学び:採用して終わりではなく、入職後の継続的なフォローが定着のカギ。
成功事例②:最初は消極的だった施設が即戦力を確保
外国人採用に不安を抱えていたある施設では、ミャンマー出身の特定技能人材を受け入れました。言語の細かいニュアンスが伝わりにくい場面もありましたが、母国語でのサポートにより業務への支障を最小限に抑えました。
真面目に努力を重ねる姿勢が日本人スタッフにも好影響を与え、「受け入れてよかった」という評価に変わっていきました。
学び:外国人介護士の「真面目さ・学ぶ意欲」は職場全体のモチベーションにも波及する。
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、フィリピンでの人材事業を10年以上手がけるGENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、外国人介護士の離職・定着に関する疑問を聞きました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」で受け入れられる人数に上限はありますか?
A. はい、あります。令和6年3月の閣議決定により、令和6年4月からの5年間における特定技能「介護」分野の受入見込数は135,000人と設定されています(厚生労働省、令和7年3月28日公表)。また、訪問系サービスは対象外で、直接雇用のみが認められています。なお、2025年4月からは特定技能・技能実習の外国人が訪問介護に従事できるよう制度が改正されており、今後の動向に注目が必要です。
Q2. 外国人介護士の離職率が今後上がると言われているのはなぜですか?
A. 現在、外国人介護士の離職率が低い背景には「在留資格の制限により転職先が限られる」という事情があります。しかし、特定技能「介護」の受け入れ施設が増えるにつれ、転職の選択肢も広がります。また、全国老施協の調査では離職理由の第1位が「介護以外の職種への転職(52.1%)」であることからも、制度の拡充とともに離職率が変化する可能性があります。早期の定着対策が求められます。
Q3. 外国人介護士の採用にかかるコストの目安はどのくらいですか?
A. 採用ルートや国籍・エージェントによって異なりますが、海外から招聘する場合は教育費・渡航費・登録支援費用などを含めると、1人あたり数十万円〜100万円程度かかるケースが一般的です。なお、外国人介護士自身も来日前に現地送り出し機関等へ30〜50万円程度を支払っているケースが多く、この負担が本人の賃金への不満や早期離職につながることもあります。コスト重視だけの採用は、かえって定着しにくくなるリスクがあります。
Q4. 技能実習と特定技能では、離職リスクに違いがありますか?
A. 技能実習の外国人介護士は、「優良で技能実習を終えること」を目標としているため、環境を変えることへの抵抗感が比較的強い傾向があります。一方、特定技能は転職が認められているため、より良い条件の施設へ移る選択肢があります。特定技能の在留者数が急増している現在、転職市場も活発化しており、施設としては処遇改善・サポート体制の整備が一層重要です。
Q5. 外国人介護士が介護福祉士を取得すると、在留資格はどうなりますか?
A. 介護福祉士を取得すると、在留資格「介護」への移行が可能になります。この資格は更新が可能で、家族の帯同も認められるため、長期定着につながりやすいとされています。令和6年度の調査では、国家試験を受けた理由として「日本で介護職として働き続けるため(68.9%)」「日本で長く住み続けたいため(55.2%)」が上位に挙がっており、資格取得支援は定着率向上の有効な投資といえます。
まとめ
外国人介護士の離職問題は、「外国人だから辞めやすい」という思い込みではなく、データと現場の実態に基づいて理解することが大切です。
- 現状:特定技能外国人の自己都合離職率は10.6%と、介護職員全体(12.4%)より低い水準にある
- 課題:今後の制度拡充により転職の選択肢が増え、離職率が上昇する可能性がある。離職理由の第1位は「介護以外への転職(52.1%)」、第2位は「賃金への不満(36.3%)」
- 対策:生活基盤の安定・明確なキャリアパスの提示・異文化理解の促進・継続的な日本語サポートの4本柱が定着率向上に有効
外国人介護士を「人手不足の穴埋め」としてではなく、「長期的に一緒に育つ仲間」として迎え入れる姿勢が、施設にとっても外国人介護士にとっても、より良い未来につながります。
まずは現在の受け入れ体制を見直し、不安な点があれば専門家への相談から始めてみてください。
> ⚠️【YMYL注意】本記事の情報は執筆時点のものです。在留資格・制度・統計データは随時更新されます。最終的な判断は、厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公的資料、または専門の行政書士・社会保険労務士にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」(令和7年3月28日)…特定技能「介護」受入上限・在留者数推移・国籍別ランキング・施設種別受入状況の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数(250万人・272万人)の根拠
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査 結果の概要」…介護職員全体の離職率12.4%の根拠
- 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第3回)資料」(令和5年2月)…特定技能外国人の自己都合離職率10.6%の根拠
- 全国老人福祉施設協議会「令和4年度外国人介護人材に関する実態調査結果」…外国人受け入れ施設の割合(約42%)・寮設置率(61.9%)の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・国家試験受験理由・職場からの支援内容の根拠
- Joint編集部「外国人介護人材、離職の半数超が『介護以外へ転職』賃金への不満など影響=老施協調査」(2025年8月16日)…離職理由の内訳(介護以外への転職52.1%・賃金不満36.3%等)の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
