結論(30秒でわかる要点
2025年4月21日に特定技能「介護」外国人の訪問系サービス従事が解禁され、慢性的な人手不足に悩む訪問介護現場に新たな選択肢が生まれた。
- 重要ポイント①:訪問介護の有効求人倍率は2022年度に過去最高の15.53倍を記録し、2023年度も14.14倍と高止まり。施設系の3〜4倍に達する深刻な状況
- 重要ポイント②:解禁には「研修修了・実務経験1年以上・JICWELS適合確認」の3要件が必要
- 重要ポイント③:2040年には介護職員が2022年比57万人不足する見通しで、外国人材活用は不可避
- 重要ポイント④:2024年時点で訪問系サービスに従事できなかった外国人介護人材は約4万6,000人規模(特定技能・技能実習・EPA候補者の合計)
対象者:訪問介護事業所の管理者・経営者、外国人介護士の受け入れを検討している施設担当者
⚠️ 制度は更新されるため、最新情報は必ず厚生労働省の公式資料でご確認ください。
はじめに:訪問介護の人手不足は「限界」を超えつつある

「ヘルパーが足りなくて、利用者様の希望する時間帯にサービスを提供できない」「求人を出しても応募が来ない」——訪問介護の現場では、こうした声が日常的に聞かれるようになっています。
厚生労働省の統計によると、訪問介護員の有効求人倍率は2022年度に過去最高の15.53倍を記録し、直近公表されている2023年度も14.14倍という高水準が続いています(出典:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」資料)。施設系介護職員の3〜4倍という数字は、訪問介護の人手不足がいかに特殊で深刻な状況にあるかを物語っています。
そこに2025年4月21日、大きな転換点が訪れました。特定技能「介護」外国人が、一定の要件を満たせば訪問系サービスに従事できるようになったのです。
この記事でわかること
- 訪問介護の人手不足がなぜここまで深刻になったのか、その構造的な原因
- 2025年4月解禁の新制度の具体的な要件と手順
- 外国人ヘルパー活用で訪問介護はどう変わるのか、リアルな予測と事例
- 施設が今すぐ準備すべき受け入れ体制のポイント
訪問介護の人手不足はなぜここまで深刻なのか

「訪問介護の人手不足」の定義
訪問介護の人手不足とは、利用者の自宅を訪問して身体介護・生活援助を提供するホームヘルパーの供給が需要に著しく追いつかない状態を指し、2022年度に過去最高を記録した有効求人倍率15.53倍(2023年度も14.14倍)という数字がその深刻さを端的に示している。
需要と供給のギャップ:数字で見る現状
厚生労働省の推計によると、介護職員の必要数は以下のように増加する見通しです(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。
| 年度 | 必要な介護職員数 | 2022年比 |
|---|---|---|
| 2022年(実績) | 215万人 | 基準 |
| 2026年 | 240万人 | +25万人 |
| 2040年 | 272万人 | +57万人 |
この数字は介護職員全体のものですが、訪問介護員の不足は施設系と比べてさらに深刻です。訪問介護のサービス受給者は介護サービス全体の約2割に過ぎないにもかかわらず、ヘルパーの確保は圧倒的に困難な状況が続いています。
訪問介護の人手不足が特に深刻な4つの理由
訪問介護は施設介護と比べて、なぜここまで人材確保が難しいのでしょうか。主な要因を整理します。
- 一人で利用者宅に訪問する孤独感:施設のようにチームで働く環境と異なり、一人で判断・対応する場面が多く、精神的な負担が大きい
- 移動時間が賃金に反映されにくい:利用者宅間の移動時間が労働時間として認められにくく、実質的な時給が低くなりやすい
- スキマ時間の多い不規則な勤務形態:朝夕の需要が集中し、日中は空き時間が生まれる「分断勤務」が多いため、生活設計がしにくい
- 高齢化するヘルパー層:現役のホームヘルパーは高齢者が多く、若い世代への世代交代が進んでいない
さらに深刻なのが地域格差です。都市部では事業所間での限られたヘルパーの奪い合いが起きる一方、訪問介護事業所が1か所もない自治体は全国で100町村を超えています。政府資料では2024年12月末時点で107町村とされ、その後2025年12月末時点では116町村に増えたことが国会答弁で確認されています。特に人口減少が進む中山間地域等では、訪問介護サービスの提供体制の維持そのものが政策課題となっています(出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、内閣府「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024に関する財政制度等審議会における議論の状況について」2025年4月28日、第221回国会衆議院予算委員会 2026年3月11日)。
2025年4月解禁:外国人ヘルパーが訪問介護に入るための手順と要件

Step1:制度の全体像を正確に把握する
2025年4月21日に施行された制度改正により、特定技能「介護」外国人が訪問系サービスに従事できるようになりました(出典①:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」社援発0331第40号・老発0331第12号、2025年3月31日付)。
この制度変更以前、訪問系サービスに従事できなかった外国人介護人材は約4万6,000人規模(特定技能28,400人・技能実習14,751人・EPA介護福祉士候補者約2,600人の合計、2024年3月時点)にのぼりました。この規模の人材に訪問介護の道が開かれたことは、画期的な転換といえます。実際の従事には研修修了・実務経験・同行OJTなどの要件がありますが、技能実習は2025年4月1日、特定技能は同年4月21日から要件を満たせば従事可能になっています(EPA介護福祉士候補者は調整中で、対象時期は別途通知予定です)。
Step2:3つの原則要件をすべて満たす
訪問系サービスに従事させるためには、以下の3要件をすべて満たす必要があります。
要件①:研修修了
以下のいずれかを修了していること。
- 介護職員初任者研修
- 生活援助従事者研修
- 介護職員基礎研修
- 実務者研修
要件②:実務経験(原則1年以上)
介護事業所(施設・通所・短期入所系サービス)での実務経験が、通算で原則1年以上あること。
⚠️ よくある誤解:「6か月」という数字は実務経験の要件ではありません。これは実務経験が1年未満の例外的なケースで適用される「同行訪問(OJT)期間」のことです。混同しないよう注意が必要です。
要件③:JICWELS適合確認
受入機関が必要書類をJICWELS(国際厚生事業団)へ提出し、当該外国人について「適合確認書」の発行を受けること。この手続きは実務経験1年以上・未満にかかわらず、訪問系に従事させる全員に必要です。
Step3:実務経験1年未満の場合の例外対応
実務経験が1年に満たない場合でも、以下の追加要件を満たせば例外的に従事させることが可能です。
- 日本語能力:JLPT N2以上の合格(通常の特定技能より高い水準)
- 同行訪問(OJT):利用者1人あたり原則6か月の同行訪問を実施
- ※利用者・家族の同意+ICT常時連絡体制整備がある場合は、3か月同行後にICT活用方式への移行も可
- JICWELS適合確認申請:全員共通で必要
受入事業所が守るべき5つの遵守事項
受け入れ側の事業所にも明確な義務が課されています。
- 訪問介護業務の基本事項等に関する研修の実施
- サービス提供責任者等による同行訪問(OJT)の実施(適切に業務できると判断されるまで継続)
- 利用者・家族への事前説明と書面による同意取得
- ハラスメント防止対策(相談窓口・対応マニュアルの整備)
- ICTを活用した緊急連絡体制の整備
外国人ヘルパー解禁で訪問介護はどう変わるのか:現場から見た変化の予測

事例①:特定技能外国人の段階的な訪問介護導入
関東のある訪問介護事業所では、施設系での実務経験を1年以上積んだ特定技能「介護」外国人を訪問介護部門に異動させる計画を立てました。
まず初任者研修の修了を確認し、JICWELS適合確認の手続きを進めながら、サービス提供責任者が同行訪問を実施。利用者・家族への事前説明では「外国の方でも丁寧にサポートしてもらえるなら」と好意的な反応が多かったといいます。
この事例から学べるポイント
- 施設系での実務経験を積ませてから訪問介護に移行する「段階的導入」が現実的
- 利用者・家族への丁寧な事前説明が受け入れの鍵
- ICT連絡体制の整備は早めに着手しておくことが重要
事例②:地方の訪問介護事業所における人材確保の変化
中山間地に近い地方の訪問介護事業所では、長年ヘルパーの確保に悩んでいました。日本人の応募はほぼゼロ、既存スタッフの高齢化も進む中、外国人介護士の受け入れに踏み切ったケースがあります。
施設系の関連事業所で1年間実務経験を積んでもらい、初任者研修も修了。その後、訪問介護部門に配属し、同行訪問を経て独立したサービス提供が可能になりました。
この事例から学べるポイント
- グループ内の施設系事業所と連携した「育成ルート」の構築が有効
- 地方ほど外国人介護士への依存度が高まる可能性がある
- 長期的な定着を促すためのキャリアパス設計が重要
訪問介護の未来予測:外国人ヘルパー解禁の影響
現在、特定技能「介護」の在留者数は2025年12月末時点で67,871人(受入見込数13.5万人に対する充足率50.3%)に達しており、制度開始の2019年末(19人)から約6年で約3,600倍に増加しています。
国籍別では、
インドネシア(21,139人・31.1%)、
ミャンマー(19,803人・29.2%)、
ベトナム(10,401人・15.3%)が上位を占め、
上位5か国で全体の9割以上を占めています。
これまで施設系に集中していた外国人介護人材が、訪問系にも広がることで、以下のような変化が予測されます。
- 人材獲得競争の激化:施設系と訪問系の両方が同じ人材プールを取り合う構造に
- 初任者研修修了者の価値上昇:訪問介護従事の前提要件となるため、研修修了者の採用競争が激しくなる
- JICWELS手続きの習熟が差別化要因に:適合確認の手続きをスムーズに進められる事業所が優位に立つ
- 地方の人材確保に光明:都市部からの応募が見込めない地方の事業所にとって、外国人材は現実的な選択肢になる
よくある質問(専門家に聞く)
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 看護師・介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」外国人は訪問介護でどんな業務ができますか?
A. 2025年4月21日以降、3つの要件(研修修了・実務経験原則1年以上・JICWELS適合確認)を満たした場合、身体介護・生活援助を含む訪問介護業務全般に従事できます。ただし、受入事業所は利用者・家族への事前説明と書面による同意取得が義務付けられています。なお、在留資格「介護」(介護福祉士資格保持者)は以前から訪問介護に従事可能です。
Q2. JICWELS適合確認とは何ですか?手続きはどのくらいかかりますか?
A. JICWELS(国際厚生事業団)が、訪問系サービスに従事させる外国人介護人材について、要件を満たしているかを確認し「適合確認書」を発行する手続きです。実務経験1年以上・未満にかかわらず、訪問系に従事させる全員に必要です。手続きの具体的な期間や必要書類については、JICWELSの公式サイトまたは厚生労働省の最新資料でご確認ください。
Q3. 実務経験1年未満の外国人介護士を訪問介護に従事させることはできますか?
A. 例外的に可能ですが、追加要件があります。JLPT N2以上の日本語能力と、利用者1人あたり原則6か月の同行訪問(OJT)の実施が必要です。また、利用者・家族の同意とICT常時連絡体制の整備がある場合は、3か月の同行訪問後にICT活用方式に移行することも認められています。さらに全員共通でJICWELS適合確認が必要です。
Q4. 外国人介護士が介護福祉士資格を取得するとどうなりますか?
A. 介護福祉士を取得すると、在留資格を「介護」に変更することが可能になります。在留資格「介護」は在留期間の更新が認められる限り永続的に日本で働くことができ、訪問介護を含む全ての業務に制限なく従事できます。外国人介護人材が介護福祉士国家試験を受けた理由として、「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%と最多でした(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
Q5. 訪問介護事業所が外国人介護士を受け入れる際のコストはどのくらいですか?
A. 受け入れ形態によって異なります。特定技能の場合、人材紹介会社を利用すると採用費用が発生するほか、JICWELS適合確認の申請費用、初任者研修の受講費用、登録支援機関への委託費用などが必要です。また、ICT連絡体制の整備や同行訪問期間中のサービス提供責任者の工数も考慮が必要です。具体的な費用は規模や状況によって大きく異なるため、専門の支援機関に相談することをお勧めします。
まとめ:外国人ヘルパー解禁が訪問介護の未来を変える
訪問介護の深刻な人手不足は、構造的な問題であり、一朝一夕には解決しません。しかし2025年4月21日の制度解禁は、これまで手が届かなかった外国人介護人材という選択肢を訪問介護事業所にもたらした、歴史的な転換点です。
この記事の3つの要点
- 制度の正確な理解が第一歩:訪問系従事には「研修修了・実務経験原則1年以上・JICWELS適合確認」の3要件が必要。「6か月」は実務経験ではなく同行訪問(OJT)期間であることを混同しない
- 段階的な育成ルートの設計が成功の鍵:施設系での実務経験を積ませてから訪問系に移行する計画を、採用時点から描いておくことが重要
- 長期的な視点で関係を築く:外国人介護士を「穴埋め」ではなく「一緒に成長する仲間」として受け入れる組織文化が、定着率と現場の質を高める
次のステップへ:まずはJICWELS適合確認の手続きを確認し、受け入れ体制の整備から始めてみましょう。不安な点は、介護現場を熟知した専門家(介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp)への無料相談もご活用ください。
【YMYL注意】本記事の制度情報は執筆時点のものです。特定技能制度・介護保険制度は随時更新されるため、最終判断は必ず厚生労働省の公式資料および専門家にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2022年・2026年・2040年の介護職員必要数の根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況」…特定技能「介護」在留者数67,871人・国籍別ランキング(2025年12月末時点)の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能受入上限(135,000人)・施設種別データの根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(社援発0331第40号・老発0331第12号、2025年3月31日付)…2025年4月21日施行の訪問介護解禁要件・遵守事項の根拠
- 厚生労働省「職業安定業務統計」(2023年6月公表)…訪問介護員の有効求人倍率15.53倍(2022年度・過去最高)の根拠
- 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」資料(2024年9月12日公表)…訪問介護員の有効求人倍率14.14倍(2023年度)の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和5年度第1回介護分野における特定技能協議会運営委員会 資料2(2024年3月27日)…約4万6,000人規模(特定技能28,400人・技能実習14,751人・EPA候補者約2,600人)の内訳根拠
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、内閣府「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024に関する財政制度等審議会における議論の状況について」(2025年4月28日)、第221回国会衆議院予算委員会(2026年3月11日)…訪問介護事業所ゼロ自治体数(107→116町村)の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…介護福祉士試験の日本語レベル別合格率・受験理由・職場支援の根拠
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」…訪問介護員の不足感・採用率・離職率データの根拠
- JICWELS(公益社団法人国際厚生事業団)公式サイト…適合確認手続きの詳細確認先
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。