結論(30秒でわかる要点)
特定技能でN3レベルの日本語力を持つ外国人材は、制度上の最低基準(N4)を上回る即戦力として、介護・サービス業など多くの現場で高く評価されています。
- N3は「日常的な場面の日本語をある程度理解できる」レベル(JLPT公式定義)
- 特定技能1号の制度要件はN4以上だが、介護・宿泊など対人業務ではN3が実質的な採用基準となるケースが多い
- 特定技能2号では、漁業・外食業においてN3以上が明示的に必要とされる分野がある
- 対象者:特定技能外国人の採用を検討している施設・企業の担当者、日本語学習中の外国人本人
> ⚠️ 特定技能制度の要件や試験基準は更新されることがあります。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式資料でご確認ください。
はじめに

「特定技能でN3って、実際どのくらい日本語が話せるの?」「N4で採用要件は満たせるのに、なぜN3が求められるの?」——そんな疑問を持つ採用担当者や、これから日本で働こうとしている外国人の方は多いのではないでしょうか。
特定技能制度の普及に伴い、外国人材の受け入れは年々拡大しています。厚生労働省のデータによれば、特定技能1号の在留者数は2024年12月末時点で44,367人に達し、制度開始直後(2019年12月末:19人)から約5年で劇的に増加しました(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
この記事でわかること:
- 特定技能N3とは何か、N4・N2との違いを具体的に解説
- N3レベルの外国人材が現場でどう活躍できるか
- 採用・教育の際に施設・企業が押さえておくべきポイント
特定技能 N3とは何か?日本語レベルの基礎知識

用語の定義
特定技能N3とは:日本語能力試験(JLPT)において「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」と認定されるレベルであり、特定技能1号の制度要件(N4)を上回る水準のことを指します。
JLPTの全体像とN3の位置づけ
日本語能力試験(JLPT)は、国際交流基金と日本国際教育支援協会が運営する世界最大規模の日本語試験です。年間100万人以上が受験し、毎年7月と12月の年2回(第1日曜日)に実施されます。試験はN1〜N5の5段階に分かれており、数字が小さいほど難易度が高くなります。
各レベルの目安は以下のとおりです。
| レベル | 公式目安 | 特定技能との関係 |
|---|---|---|
| N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解できる | 介護福祉士国家試験合格率86.7%(N1保有者) |
| N2 | 日常的な場面に加え、より幅広い場面の日本語をある程度理解できる | 介護福祉士国家試験合格率53.4%(N2保有者) |
| N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる | 介護・サービス業で実質的な採用基準。国家試験合格率25.2% |
| N4 | 基本的な日本語を理解できる | 特定技能1号の制度上の最低要件。国家試験合格率25% |
| N5 | 基本的な日本語をある程度理解できる | 特定技能の要件を満たさない。国家試験合格率12.5% |
(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」)
N3レベルの日本語力:具体的にどのくらい話せる?
N3レベルの外国人材が「実際に何ができるか」は、採用担当者にとって最も気になるポイントでしょう。公式定義の「日常的な場面の日本語をある程度理解できる」をもう少し具体的に言い換えると、次のようなことが可能です。
- 職場での基本的な指示・連絡・報告(ホウレンソウ)ができる
- 利用者・患者・お客様との日常的な会話が成立する
- 漢字混じりの業務マニュアルや掲示物をある程度読み取れる
- 同僚と雑談を交わし、職場内で孤立しにくい
- スーパーや病院など生活場面でのやり取りを自立して行える
一方で、N3レベルには限界もあります。専門用語が多い文書の読解や、複雑な状況説明、抽象的な議論などはまだ難しいケースがあります。業務内容によっては、N3でも十分ではない場面も出てくるため、採用前に業務内容との照合が欠かせません。
特定技能の日本語要件とN3の関係

特定技能1号に必要な日本語レベル
特定技能1号を取得するための日本語要件は、以下のいずれかの合格です。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上(250点満点中200点以上)
つまり、制度上はN4で要件を満たします。しかし、N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルであり、対人コミュニケーションが多い介護・宿泊・外食などの現場では、業務を円滑に進めるには力不足と感じる施設も少なくありません。
なぜ現場ではN3が求められるのか
N4合格者とN3合格者では、実務上の日本語運用能力に大きな差が生まれることがあります。その理由として挙げられるのは以下の点です。
- JLPTはマークシート方式であるため、同じ合格者でも実際の会話力にばらつきがある
- N4では、利用者・患者への声かけや急な状況変化への対応が難しい場面がある
- 介護現場では「細やかな言葉のニュアンス」が利用者の安心感に直結する
- サービス業では、お客様からの多様な質問や要望に即座に対応する必要がある
こうした理由から、多くの施設・企業がN3以上を採用基準として設定しています。特に介護・宿泊・飲食など対人業務が中心の職場では、N3を「実質的な最低ライン」と考えるのが現実的です。
特定技能2号でN3が必要な分野
特定技能2号(在留期間の上限なし・家族帯同可)については、漁業分野と外食業分野においてN3以上の日本語能力が明示的に求められています。特定技能2号は1号よりも高い技能・知識・実務経験が必要とされるため、日本語力の要件も引き上げられています。
N3レベルの外国人材を採用・育成するための実践的ステップ

Step 1:採用時に日本語力を正確に見極める
JLPT合格証は「一定の基準を満たした」ことの証明ですが、実際の会話力は個人差があります。面接時には以下の点を確認することをおすすめします。
- 自己紹介・志望動機を日本語で話してもらう(流暢さ・語彙の豊富さを確認)
- 業務に関連する簡単な質問への回答(「利用者様が転倒した場合、最初に何をしますか?」など)
- 日本語での聞き取り能力(少し速いスピードで話しかけてみる)
- 表現が伝わらない場合の対応力(言い換えを求めた際の反応)
Step 2:受け入れ後の環境づくり
N3レベルの外国人材が職場に定着するためには、採用後の環境整備も重要です。
- 業務マニュアルをやさしい日本語(短文・ふりがな付き)で整備する
- 日本語の表現が通じない場合は「言い換え」で対応する習慣を職員全体で共有する
- 週1回30分でも業務時間内に日本語学習の時間を確保する
- 困ったことを相談できる担当者(メンター)を配置する
Step 3:N3からN2・介護福祉士資格取得を見据えたキャリア支援
N3取得者がさらに成長するためには、職場の継続的なサポートが欠かせません。令和6年度の調査によれば、外国人介護人材が介護福祉士国家試験を受けた理由として「日本で介護職として働き続けるため(68.9%)」「日本で長く住み続けたいため(55.2%)」が上位を占めています。
また、職場からの支援内容としては「施設職員に勉強を教えてもらった(36%)」「日本語の先生に教えてもらった(26.7%)」「勤務時間やシフトの調整(24.8%)」が挙げられており、施設側の関わりが合格率に直結していることがわかります(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
N3保有者の介護福祉士国家試験合格率は25.2%ですが、N2では53.4%、N1では86.7%と大幅に上昇します。N3を「ゴール」ではなく「スタートライン」と捉え、長期的なキャリア支援を設計することが、定着率向上につながります。
具体的な事例で見るN3レベルの活躍

事例①:介護施設でのN3人材の定着
関東のある特別養護老人ホームでは、N3レベルのフィリピン人介護士を複数名採用したケースがあります。当初は「言葉の壁が心配」という声もありましたが、入職後3か月で基本的な申し送りや記録業務をこなせるようになったといいます。特に、利用者様への声かけや笑顔でのコミュニケーションが評価され、「この方がいると雰囲気が明るくなる」という声も聞かれました。
ポイントとして挙げられたのは、「業務マニュアルをやさしい日本語に書き直した」「先輩職員がペアを組んで最初の1か月をサポートした」という二点でした。
事例②:サービス業でのN3人材の活躍
ある飲食チェーンでは、N3レベルのベトナム人スタッフが採用後1年でリーダー職に就いた事例があります。日本人のパートスタッフへの指示出しや、お客様からのクレーム対応も日本語で行えるまでに成長しました。
この事例から学べるのは、「N3は決して限界ではなく、現場経験を積むことで急速に伸びる」という点です。採用時の日本語力だけでなく、「学ぶ姿勢」「職場への適応力」も同様に重視することが大切です。
よくある質問(専門家に聞く)
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏は、「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています。一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町氏は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
特定技能 N3に関するよくある質問
Q1. 特定技能1号の取得にN3は必須ですか?
A. 制度上の要件はN4以上(またはJFT-Basic合格)です。N3は必須ではありませんが、介護・宿泊・外食など対人業務が多い職場では、N3以上を採用基準とする企業・施設が多くなっています。制度要件と現場要件は異なる点に注意が必要です。
Q2. N3とN4では現場での働きやすさにどのくらい差がありますか?
A. 大きな差があると言えます。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルであり、複雑な指示や利用者との細かいやり取りが難しい場面があります。一方、N3になると日常的なコミュニケーションが自立してできるようになるため、申し送り・記録・利用者対応などの業務がスムーズになります。ただし、同じN3合格者でも実際の会話力には個人差があるため、面接での確認が重要です。
Q3. N3取得にはどのくらいの学習時間が必要ですか?
A. 一般的にN3の合格には500時間程度の学習が目安とされています。ただし、母語や学習環境によって大きく異なります。職場での日本語使用機会が多いほど習得スピードは上がるため、業務を通じた自然な日本語習得の機会を増やすことが効果的です。
Q4. N3を持つ外国人材が介護福祉士を目指せますか?
A. 目指せますが、合格率には差があります。令和6年度の調査では、N3保有者の介護福祉士国家試験合格率は25.2%でした。N2では53.4%、N1では86.7%と大幅に向上するため、N3を取得した後もN2・N1を目指して継続的に学習することが、国家資格取得への近道です(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
Q5. 特定技能2号でN3が必要な分野はどこですか?
A. 漁業分野と外食業分野において、特定技能2号の取得にN3以上の日本語能力が必要とされています。その他の分野については、各分野の運用方針や所管省庁の最新情報をご確認ください。なお、特定技能2号は在留期間の上限がなく家族帯同も可能なため、長期的なキャリア形成を目指す外国人材にとって重要な目標となっています。
まとめ
この記事では、特定技能N3とは何か、制度要件との関係、現場での活用法について解説しました。要点を整理します。
- N3は「日常的な場面の日本語をある程度理解できる」レベルで、特定技能1号の制度要件(N4)を上回る。介護・サービス業など対人業務の多い職場では、N3が実質的な採用基準となるケースが多い
- N3保有者の介護福祉士国家試験合格率は25.2%。N2(53.4%)・N1(86.7%)と比べると差があり、長期的なキャリア支援がカギとなる
- 採用時は面接での会話確認が必須。JLPT合格証だけでなく、実際のコミュニケーション能力を直接確かめることが重要
外国人材の受け入れを検討されている施設・企業の方は、まずは専門家への無料相談から始めてみてください。日本語レベルの見極め方から受け入れ後のサポート体制まで、現場経験を持つ専門家が一緒に考えます。
> ⚠️【YMYL注意】特定技能制度の要件・試験基準・在留資格に関する情報は制度改正により変更されることがあります。最終的な判断は出入国在留管理庁・厚生労働省の最新公式資料、または専門の行政書士・社会保険労務士にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能1号在留者数の推移・国籍別ランキング・受入施設種別・受入上限の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数データの根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別介護福祉士国家試験合格率・受験理由・職場支援内容の根拠
- 国際交流基金・日本国際教育支援協会「日本語能力試験(JLPT)公式ウェブサイト」(https://www.jlpt.jp/)…N1〜N5各レベルの公式定義・試験概要の根拠
- 国際交流基金「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」(https://www.jft-basic.jp/)…特定技能1号の日本語要件としてのJFT-Basicの根拠
- 出入国在留管理庁「特定技能制度 よくある質問」(https://www.moj.go.jp/isa/)…特定技能1号・2号の制度概要・要件・手続きに関する根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
