結論(30秒でわかる要点)
特定技能「介護」の外国人は、法令上の制限なく夜勤に従事でき、入職初日から人員配置基準に算入できる。技能実習生とは異なり、複数体制の義務規定がないため、即戦力として夜勤シフトに組み込める点が大きな強みだ。
- 特定技能「介護」は入職当日から配置基準に算入でき、夜勤も法令上は制限なし
- 安全確保のため「一定期間のチームケア」が求められており、段階的な夜勤導入が現場の標準
- 夜勤手当は日本人職員と同等の設定が制度上の要件(差別的な賃金設定は違反)
対象読者:特定技能外国人の夜勤導入を検討している介護施設の管理者・採用担当者
> ⚠️ 本記事の内容は公開時点の情報に基づいています。制度は更新されることがあるため、最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁の公式資料でご確認ください。
はじめに

「特定技能の外国人に夜勤を任せてもいいの?」「いつから1人夜勤にできる?」——介護施設の管理者からこうした質問が後を絶たない。慢性的な夜勤人材不足に悩む現場にとって、特定技能外国人が夜勤戦力になるかどうかは、採用判断の核心部分でもある。
厚生労働省のデータによれば、2022年時点で介護職員は約215万人だが、2040年には約272万人が必要とされており、今後さらに57万人規模の不足が見込まれている(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。夜勤帯の人員確保は、この不足問題の最前線にある。
この記事では、以下の疑問を一つひとつ解消していく。
- 特定技能外国人は法令上、夜勤に入れるのか
- 技能実習・EPAと何が違うのか
- 1人夜勤に向けた現実的な段階的導入の進め方
- 夜勤手当の正しい計算・設定の考え方
特定技能「介護」夜勤の基礎知識|技能実習・EPAとの違いを整理する

「特定技能「介護」夜勤」とは
定義:特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人が、介護施設において夜間帯(おおむね16時〜翌9時)に介護業務を行うことを指し、法令上は1人での単独夜勤も認められている就労形態。
特定技能「介護」で夜勤に従事できる業務は、日本人職員と基本的に同等の範囲だ。具体的には以下が含まれる。
- 身体介護(食事・排せつ・入浴・移乗などの介助)
- ナースコール対応・夜間巡回
- 緊急時の看護師への連絡・報告
- 申し送り・記録業務
なお、「お泊りデイ」と呼ばれる介護保険適用外のデイサービス宿泊サービスには従事できないため、注意が必要だ。
在留資格別・夜勤ルールの比較
在留資格によって夜勤のルールは大きく異なる。混同が現場トラブルの原因になりやすいため、正確に把握しておきたい。
| 在留資格 | 夜勤の可否 | 配置基準算入時期 | 単独夜勤 |
|---|---|---|---|
| 特定技能「介護」 | 法令上の制限なし | 就労と同時(入職初日から) | 一定期間のチームケア後、施設が判断 |
| 技能実習「介護」 | 複数体制が必要 | 原則6か月経過後(2024年度改定で例外あり) | 実習生以外の介護職員との同時配置が必須 |
| EPA介護福祉士候補者 | 慎重運用が必要 | 原則6か月経過後(2024年度改定で例外あり) | 非EPA職員の配置または緊急連絡体制の整備が必要 |
| 在留資格「介護」 | 制限なし | 就労と同時 | 日本人と同等の運用が基本 |
特定技能が「入職初日から算入できる」根拠
厚生労働省の通知(平成31年3月29日 社会・援護局長ほか連名通知)には、次のとおり明記されている。
> 「介護分野の1号特定技能外国人については、法令に基づく職員等の配置基準において、就労と同時に職員等とみなす取扱いとしても差し支えないものであること。ただし、一定期間、他の日本人職員とチームでケアに当たる等、受入施設における順応をサポートし、ケアの安全性を確保するための体制をとることを求めることとする。」
つまり入職初日から配置基準上の介護職員として数えられる。これは技能実習・EPAとの決定的な差であり、「今すぐ夜勤の人手を増やしたい」施設にとって特定技能を選ぶ最大の実務的な理由になる。
また、国際厚生事業団(JICWELS)のFAQでは「安全に業務を行えるまでの一定期間(目安6か月)は、経験のある職員とチームでケアに当たるなど、就労先事業所で順応を支援する体制が求められる」とされており、最終的な夜勤導入の判断は就労先事業所が行うと整理されている。
特定技能「介護」夜勤を成功させる3つのステップ

Step 1:夜勤前の準備と「見える化」を徹底する(入職〜3か月目)
まずは日勤帯での業務習熟を優先する。この期間に「見える化」を徹底することが、後々の夜勤導入の安心感につながる。
準備チェックリスト
- [ ] 緊急対応フローチャートを多言語(日本語+母国語)で作成する
- [ ] ナースコール対応・急変時の連絡先を一覧化して貼り出す
- [ ] 申し送りシートの記入項目を固定化し、数値や選択式で記入できる形式にする
- [ ] 「やさしい日本語」で業務マニュアルを整備する(「嘔吐」→「吐いた」など)
- [ ] オンコール担当の日本人職員を明確にし、「迷ったらすぐ連絡」のルールを共有する
夜勤で使う緊急フレーズの事前練習例
| 場面 | 使用フレーズ例 |
|---|---|
| 転倒発見 | 「○○さんが転倒しました。意識はあります/ありません」 |
| 体調急変 | 「○○さんの熱が38度以上です。すぐに看護師に連絡します」 |
| ナースコール対応 | 「○○さん、どうしましたか?痛いところはありますか?」 |
| 救急要請 | 「救急車をお願いします。施設名と住所をお伝えします」 |
Step 2:夜勤同行期間を設ける(3〜6か月目)
日勤での業務習熟が確認できたら、次は夜勤への同行期間に移行する。日中のOJTだけでは夜勤特有の状況に対応しきれないことがあるため、夜勤に特化した研修を組み込むことが重要だ。
この期間に実施すること
- 経験のある日本人職員と2名体制で夜勤に入る
- 月1回の夜勤シミュレーション訓練を実施する
- 夜勤後の振り返りミーティングを短時間(15分程度)で行う
- 心理的な不安がないか定期的に1on1で確認する
Step 3:1人夜勤への移行(6か月目以降)
業務習熟度を確認した上で、1人夜勤に移行する。「いつから1人夜勤を任せてよいか」は期間だけでなく、以下の習熟度チェックリストで判断するのが現実的だ。
1人夜勤移行の判断基準(チェックリスト)
- [ ] ナースコールへの対応を一通り1人でこなせる
- [ ] 急変時の連絡フローを口頭で説明できる
- [ ] 申し送りを正確に記録・報告できる
- [ ] 夜間巡回の手順を自立して実施できる
- [ ] 困ったときに自分から連絡・相談できる
初めて1人で入る夜は、オンコールで日本人職員にすぐ連絡が取れる体制を整えておくと、本人も安心して業務に集中できる。
特定技能「介護」夜勤の現場事例|施設が直面した課題と改善のポイント

事例①:夜勤導入初期に「急変対応」で不安が生じたケース
関西のある特別養護老人ホームでは、特定技能外国人スタッフを採用して3か月目に夜勤同行を開始した。しかし夜間に利用者が急変した際、スタッフが「何から報告すればいいかわからない」と焦ってしまい、連絡が遅れるケースが発生した。
この施設では、その後、緊急報告専用のテンプレートシートを多言語で作成し、夜勤前に必ず確認する習慣をつけた。また月1回の夜勤シミュレーション訓練を導入したことで、外国人スタッフが自信を持って対応できるようになったという。
学び:マニュアルの整備は「採用後」ではなく「採用前」から着手しておくことが理想。急変対応フローは多言語化しておくと安心感が大きく変わる。
事例②:夜勤リーダーへのステップアップで定着率が向上したケース
東日本のある介護老人保健施設では、特定技能外国人スタッフを採用して2年が経過した段階で、本人の希望と施設の判断により夜勤リーダーを任せる取り組みを始めた。段階的な研修プログラムと日本人メンターによるOJTを組み合わせた結果、本人のモチベーションが大きく向上し、周囲の日本人スタッフとの信頼関係も深まった。
学び:夜勤を「負担」として捉えるのではなく、「キャリアアップの機会」として位置づけることで、外国人スタッフの定着率向上にもつながる。特定技能「介護」の離職率は約10.6%(制度施行から2022年11月まで)と、特定技能全分野の平均離職率16.1%より低く、長期的な戦力として期待できる。
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表で、元看護師・介護福祉士の大町潤一氏に、現場でよく聞かれる疑問についてお答えいただいた。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています。一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
特定技能「介護」夜勤に関するよくある質問
Q1. 特定技能外国人は入社直後から夜勤に入れますか?
法令上は入社直後から夜勤に従事することは可能だ。ただし、施設の環境やその方の習熟度によって実際の配置タイミングは異なる。夜勤前に施設の緊急対応マニュアルや連絡体制を十分に共有し、日中のOJTで業務に慣れてもらってから段階的に夜勤シフトへ移行するのが現実的な進め方だ。法令と現場の実情を踏まえた柔軟な判断が大切になる。
Q2. 夜勤中に利用者が急変した場合、特定技能外国人は対応できますか?
事前の準備次第で十分に対応できる。重要なのは「急変時に何をすべきか」「誰にどう連絡するか」をフローチャートや多言語マニュアルで明確にしておくことだ。緊急報告テンプレートを用意し、定期的なシミュレーション訓練を行うことで、焦った状況でも正確に対応できる力が身につく。また、オンコール担当の日本人スタッフを明確にし、「迷ったらすぐ連絡する」というルールを徹底することも重要だ。
Q3. 特定技能外国人の夜勤手当は日本人と同じにする必要がありますか?
特定技能「介護」の外国人を雇用する際は、「同等の技能を持つ日本人と同一またはそれ以上の賃金」を設定することが制度上の要件となっている。夜勤手当についても、日本人職員と同等の扱いが求められる。差別的な賃金設定は制度違反となる可能性があるため、労働条件の整備には十分注意が必要だ。
なお、労働基準法では午後10時〜午前5時の深夜帯に働いた場合、通常賃金に対して25%以上の割増賃金(深夜手当)を支払うことが義務付けられている。これは国籍に関係なく全労働者に適用されるルールだ。
Q4. 特定技能外国人が夜勤に慣れるまで、どのくらいの期間が必要ですか?
個人差はあるが、JICWELSのFAQでは「安全に業務を行えるまでの一定期間(目安6か月)」という目安が示されている。ただしこれはあくまで目安であり、最終的な判断は施設側が習熟度を見て行う。日勤での業務習熟(1〜3か月)→夜勤同行(3〜6か月)→1人夜勤移行(6か月以降)という3段階のステップを踏むと、本人も施設も安心して移行できる。
Q5. 特定技能外国人の夜勤導入で、日本人スタッフの負担は減りますか?
適切に準備を進めれば、夜勤シフトの分散につながり、日本人スタッフの負担軽減が期待できる。特定技能「介護」の在留者数は2024年12月末時点で44,367人(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)と急増しており、夜勤戦力としての存在感が高まっている。受け入れ体制の整備と段階的な夜勤導入を組み合わせることで、施設全体の夜勤体制の安定化が図れる。
Q6. 技能実習生との夜勤ルールの違いで、現場が混乱しないようにするには?
在留資格ごとのルールを一覧表にして、管理者・現場リーダーが共有しておくことが第一歩だ。特定技能は入職初日から配置基準に算入でき、夜勤も法令上の制限がない。一方、技能実習は技能実習生以外の介護職員との複数体制が必要で、単独夜勤は想定されていない。この違いを正確に把握せずにシフトを組むと、制度違反や安全上のリスクにつながる。採用時に在留資格の種別を確認し、シフト管理システムにも種別を明記しておくと混乱を防ぎやすい。
Q7. 2025年4月の制度改正で、訪問系サービスへの夜勤対応は変わりましたか?
2025年4月21日の制度改正により、一定の要件を満たした特定技能「介護」外国人が訪問系サービスに従事できるようになった。訪問系サービスへの夜勤対応も、この改正の範囲内で検討が可能になっている。主な要件は以下の3点だ。
- 研修修了:介護職員初任者研修・生活援助従事者研修・介護職員基礎研修・実務者研修のいずれかを修了していること
- 実務経験:介護事業所(施設・通所・短期入所系サービス)での実務経験が原則として通算1年以上あること
- JICWELS適合確認:受入機関が必要書類をJICWELS(国際厚生事業団)へ提出し、「適合確認書」の発行を受けること
なお、実務経験1年未満の場合は、JLPT N2合格+同行訪問(原則6か月)+JICWELS適合確認という追加要件が必要となる。制度の詳細は厚生労働省の最新通知を必ず確認してほしい。
まとめ
特定技能「介護」の夜勤に関する要点を整理する。
- 法令上の制限はなし:特定技能「介護」外国人は入職初日から配置基準に算入でき、夜勤も法令上は1人でも可能。技能実習生の複数体制義務とは根本的に異なる
- 段階的な導入が現場の正解:JICWELSが示す「目安6か月のチームケア」を参考に、日勤習熟→夜勤同行→1人夜勤という3ステップで進めることが安全かつ定着率向上につながる
- 夜勤手当は日本人と同等が原則:深夜割増(25%以上)の適用と、日本人と同等の夜勤手当設定は制度上の要件。適正な賃金管理が施設の信頼を守る
次のステップへ:まずは自施設の夜勤シフトの現状と、受け入れ体制の整備状況を確認してみよう。マニュアルの多言語化や緊急対応フローの整備は、採用前から着手しておくと導入後の混乱を大幅に減らせる。不安な点があれば、介護現場を知る専門家への無料相談から始めるのが近道だ。
> 【YMYL注意】本記事に記載の制度・法令情報は公開時点のものです。特定技能制度は随時更新されるため、最終的な判断は厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公式資料、または行政書士等の専門家にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2040年に272万人必要・57万人不足の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能「介護」在留者数44,367人・国籍別ランキング・施設種別受入状況の根拠
- 厚生労働省・平成31年3月29日通知(社会・援護局長ほか連名)「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」…特定技能1号が就労と同時に配置基準に算入できる根拠
- 国際厚生事業団(JICWELS)FAQ「Q2-13 介護分野の特定技能外国人は夜勤業務を行うことができますか」…目安6か月のチームケア・単独夜勤の考え方の根拠
- 厚生労働省「夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」(告示第29号)…施設種別ごとの夜勤人員配置基準の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(社援発0331第40号・老発0331第12号、2025年3月31日付)…2025年4月21日施行の訪問系サービス解禁・要件の根拠
- 労働基準法第37条・第61条…深夜割増賃金(25%以上)・年少者の深夜業禁止の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
