結論(30秒でわかる要点)
特定技能1号の外国人介護士が介護福祉士国家試験に合格するためには、日本語力の強化と計画的な試験対策が不可欠です。
- 特定技能1号の合格率は33.3%(第37回)と、全体平均78.3%を大きく下回っている
- 2025年度(第38回)からパート合格制度が導入され、段階的な合格が可能になった
- 介護福祉士に合格すれば在留資格「介護」へ変更でき、長期就労が実現する
対象者:特定技能1号で働く外国人介護士、および外国人介護士の採用・育成を担う施設担当者
⚠️ 記事は2026年時点の公表資料をもとに作成しています。制度は随時更新されるため、最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁・社会福祉振興・試験センター等の公式資料でご確認ください。
はじめに

「うちの外国人スタッフが介護福祉士の試験を受けるけれど、合格率はどのくらいなの?」「特定技能1号で在留期間が5年しかないのに、試験に落ち続けたらどうなるの?」——介護現場でこんな不安の声を耳にすることが増えています。
厚生労働省のデータによると、2024年12月末時点で特定技能1号の外国人介護士は44,367人に達しており(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)、その数は今後もさらに増加が見込まれています。しかし、介護福祉士国家試験の合格率を見ると、特定技能1号の外国人は全体平均の半分以下にとどまっており、合格への道のりは決して平坦ではありません。
この記事では、以下のポイントを詳しく解説します。
- 外国人介護士の介護福祉士合格率の現状と、その背景にある要因
- 特定技能1号から介護福祉士合格・在留資格「介護」取得までの具体的なステップ
- 2025年度から始まったパート合格制度の内容と、在留期間延長への活用方法
- 施設が実践できる効果的なサポート体制の整え方
外国人介護士の介護福祉士合格率の現状

介護福祉士国家試験とは(定義)
介護福祉士国家試験とは、介護の専門的な知識・技術を有することを証明するための国家資格試験であり、年1回、日本国内35か所の試験地で実施されるマークシート方式の試験です(試験時間220分)。
第37回・第38回の合格率データ
2025年1月に実施された第37回介護福祉士国家試験の全体合格率は78.3%(受験者数75,387人・合格者数58,992人)でした。一方、2026年1月実施の第38回では合格率70.1%(受験者数78,469人・合格者数54,987人)となり、近年は70〜80%前後で推移しています。
しかし、外国人受験者に限定すると状況は大きく異なります。
| 在留資格 | 第36回(2024年1月)合格率 | 第37回(2025年1月)合格率 |
|---|---|---|
| 全体平均 | 82.8% | 78.3% |
| 特定技能1号 | 38.5% | 33.3% |
| 技能実習 | 47.0% | 32.3% |
| EPA介護福祉士候補者 | 43.9% | 37.9% |
| 留学生 | — | 35.1% |
(出典:厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験合格発表について」、「第37回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果」)
第37回では、特定技能1号の合格率が33.3%と、全体平均78.3%の半分以下にとどまっています。第36回の38.5%からさらに低下しており、受験者数が増加する中で合格率の改善が急務となっています。
合格率が低い4つの要因
外国人介護士の合格率が低い背景には、複合的な要因があります。
- 日本語力と専門用語理解の不足:試験問題には「喀痰吸引」「褥瘡」「嚥下障害」といった高度な専門用語が多数含まれます。N2相当以上の読解力がなければ、長文の事例問題で大幅に失点してしまいます。実際に、日本語レベル別の合格率データを見ると、N1保有者が86.7%であるのに対し、N4保有者は25%、N5保有者は12.5%と、日本語力が合否に直結していることがわかります(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。
- 勤務優先の環境による学習時間不足:特定技能1号や技能実習の外国人は、フルタイムで勤務しながら試験勉強を進める必要があります。シフトの調整や学習時間の確保が難しく、計画的な準備が困難なケースが少なくありません。
- 施設によるサポート体制の格差:留学生やEPA候補者は養成校や受入調整機関による学習支援を受けやすい環境にあります。一方、特定技能1号は学習支援が施設の自主性に委ねられることが多く、サポートが手薄になりがちです。
- 制度理解の不足:受験資格の要件(実務経験3年以上・1,095日以上、540日以上の従事日数、実務者研修の修了)や、試験の合格基準、配慮申請の手続きなどを正確に理解できていない外国人も多く見られます。
特定技能1号から介護福祉士合格までのステップ

受験資格を得るための条件
介護福祉士国家試験を受験するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 実務経験:介護業務に3年以上(1,095日以上)従事し、従事日数が540日以上であること
- 実務者研修:養成施設等で実務者研修を修了していること(または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の修了でも可)
特定技能1号の在留期間は最長5年です。入職後すぐに実務経験を積み始め、3年目以降に実務者研修を修了すれば、4年目以降の試験に挑戦できる計算になります。
入職から合格までの標準的なスケジュール
- 1年目:日本語学習(N4→N3を目指す)、介護業務の基礎習得、初任者研修の取得
- 2年目:日本語をN3→N2レベルへ強化、介護技術の向上
- 3年目:実務者研修の受講・修了、試験勉強の開始
- 4年目以降:介護福祉士国家試験の受験(パート合格制度を活用しながら段階的に合格を目指す)
外国人受験者が受けられる試験上の配慮
外国人受験者は、受験申込時に申請することで以下の配慮を受けることができます。
- ルビ付き問題用紙:すべての漢字にふりがなを付記した問題用紙が配布される
- 試験時間の延長:通常220分の試験時間が1.5倍(330分)に延長される
EPA介護福祉士候補者については申請不要で自動的に対応されます。特定技能1号・技能実習の外国人は受験申込時に必ず申請手続きを行いましょう。
2025年度から導入!パート合格制度と在留期間延長の特例

パート合格制度とは何か
2025年度(第38回)から、介護福祉士国家試験に「パート合格(合格パートの受験免除)制度」が導入されました。これは、試験を3つのパートに分け、合格したパートは翌年・翌々年の受験が免除される制度です。
介護福祉士国家試験の3パート構成は以下の通りです。
- パートA:人間と社会(人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解)
- パートB:介護(介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程)
- パートC:こころとからだのしくみ(こころとからだのしくみ、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、医療的ケア、総合問題)
なお、不合格パートのみの受験(免除を使った受験)は2026年度(第39回)から対応予定です。
在留期間延長の特例措置(重要)
特定技能1号の最大の課題は、在留期間が最長5年という制限です。5年以内に介護福祉士に合格できなければ帰国しなければならないケースもあります。
この問題に対応するため、厚生労働省は令和8年1月21日付通知(社援発0121第10号)に基づき、パート合格による在留期間延長の特例措置を設けました。
延長措置の主な条件(令和8年3月30日改正通知に基づく):
- 5年目の国家試験において、1パート以上合格していること
- かつ、合格基準点(64点)の8割以上(52点以上)の総得点があること
- 学習計画(別紙様式2)を作成し、厚生労働省に確認依頼書類を提出すること
- 申請期限:令和8年4月30日(木)消印有効
注意点:
- 本措置は「特定技能1号」のみが対象。技能実習・EPA(特定活動)は対象外
- 5年目の試験では、前年にパート合格済みであっても全パートを受験する必要がある
- 帰国後に要件を満たすことが判明した場合も申請可能だが、帰国日から1年以内に入国する場合に限られる
施設が実践できる合格サポート体制

効果的な学習支援の3ステップ
外国人介護士が合格率を高めるためには、施設側の積極的な支援が不可欠です。令和6年度老人保健健康増進等事業調査によると、外国人介護士が受けた職場からの支援として「施設職員に勉強を教えてもらった(36%)」「日本語の先生に教えてもらった(26.7%)」「勤務時間やシフトの調整(24.8%)」が上位に挙げられています。
Step 1:日本語学習環境の整備
- N2取得を明確な目標として設定し、具体的な期限を伝える
- eラーニングや介護専門の日本語教材を活用する
- 母国語での解説や質問対応ができる環境を整える
Step 2:学習スケジュールの共同設計
- 試験日から逆算した学習計画を本人と一緒に作成する
- 勉強に集中できるシフト調整や、勉強スペースの提供を検討する
- 過去問(社会福祉振興・試験センターのウェブサイトで直近3回分が無料公開)を活用する
Step 3:進捗の見える化と継続的なフォロー
- 定期的な面談で学習状況を確認する
- 模擬試験を実施し、弱点科目を早期に把握する
- パート合格制度を活用した段階的な目標設定を行う
日本語レベル別の合格率から見える対策の優先順位
先述のデータが示すように、日本語能力と合格率には強い相関があります。
| 日本語レベル | 合格率 | 優先すべき対策 |
|---|---|---|
| N1保有者 | 86.7% | 専門知識の深化・過去問演習 |
| N2保有者 | 53.4% | 専門用語強化・読解力向上 |
| N3保有者 | 25.2% | 日本語力の底上げが最優先 |
| N4保有者 | 25.0% | 基礎日本語から再構築が必要 |
| N5保有者 | 12.5% | まず日本語学習に専念 |
(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」)
N3以下のレベルでは、試験対策よりも日本語力の向上を最優先にすることが合格への近道です。N2以上を目指してから試験対策に本格的に取り組むスケジュールを立てることをおすすめします。
よくある質問(専門家に聞く)
介護ケアジャパン・GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏(元看護師・介護福祉士)に、外国人介護士の採用・育成に関する疑問をうかがいました。
Q. これから外国人介護士を検討する施設に、最初に伝えたいことは何ですか?
「これは、本当に大切なメッセージなので、丁寧にお伝えしたいです」と大町は真剣な表情で語ります。
一番伝えたいこと
「外国人介護士は、『人手不足の穴埋め』ではなく、『一緒に成長する仲間』だと思っています」
私が元看護師・介護福祉士として現場で働いてきた経験、そしてフィリピンで10年以上人材事業を続けてきた中で確信していること。
それは:
1. 受け入れる側の覚悟
- 最初は時間がかかることを理解する
- 「教える」ではなく「一緒に育つ」気持ち
- 文化の違いを楽しむ心
2. 外国人介護士のポテンシャル
- 真面目で一生懸命
- 学ぶ意欲が高い
- 利用者様を大切にする心
3. 長期的な視点
- すぐに結果を求めない
- 信頼関係を築くのに時間をかける
- 3年、5年後の姿を一緒に描く
「私たちは、ただ人を紹介するだけではなく、施設と外国人介護士、両方の『幸せな未来』を一緒に作りたいと思っています」
「不安や疑問があれば、どんなことでも相談してください。一緒に考えましょう」
最後に
「外国人介護士との出会いは、施設にとっても、職員にとっても、そして利用者様にとっても、きっと良い変化をもたらすと信じています」
「一歩を踏み出す勇気を、私たちが全力でサポートさせていただきます」
Q. 元看護師・元介護士が関わると、採用や教育は何が違うのですか?
「これは、私たちの一番の強みだと思っています」と大町は語ります。
元看護師・介護福祉士としての経験があるからこそ:
1. 現場目線での人材選考
- 「この人は現場で活躍できるか」を肌感覚で判断
- 技術だけでなく、人柄や適性を重視
- 受け入れ施設の文化に合う人材を選ぶ
2. 実践的な教育プログラム
- 現場で本当に必要な技術を優先
- 教科書的な知識より、実際の動きを重視
- 日本の介護現場特有の「細やかさ」を教える
3. 施設側の悩みに寄り添える
- 「受け入れる側」の大変さを理解している
- 現実的なアドバイスができる
- 一緒に問題を解決する姿勢
「単なる人材紹介ではなく、『介護の現場を知っているパートナー』として、一緒に良いチームを作っていければと思っています」
制度に関するよくある質問
Q1. 特定技能1号の外国人は、介護福祉士に合格しないと必ず帰国しなければなりませんか?
A. 特定技能1号の在留期間は最長5年で、介護分野には特定技能2号が設けられていません。そのため、5年以内に介護福祉士国家試験に合格して在留資格「介護」に変更できなければ、原則として帰国が必要となります。ただし、2025年度から導入されたパート合格制度の活用により、一定の条件を満たせば在留期間の延長(特例措置)が認められるようになりました。在留期間が迫っている場合は、早めに施設担当者や登録支援機関に相談することをおすすめします。
Q2. 介護福祉士国家試験の合格基準はどのように設定されていますか?
A. 介護福祉士国家試験の合格基準は、3つのパート(A・B・C)すべてで基準点をクリアし、かつ総得点が合格基準点(例:第38回は64点)以上であることが求められます。1つのパートでも基準点を下回ると不合格となります(ただし、パート合格制度導入後は合格パートの免除が可能)。なお、合格基準点は試験の難易度によって毎年変動します。
Q3. 特定技能「介護」の受入上限はありますか?
Q3. 特定技能「介護」の受入上限はありますか?
A. はい、あります。特定技能「介護」の国全体の5年間の受入見込数(上限)は135,000人と定められています(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。
なお、特定技能外国人は原則として直接雇用ですが、訪問系サービスについては、2025年4月から一定の要件を満たす場合に従事できるようになりました。実際に訪問介護等へ配置する場合は、介護職員初任者研修課程等の修了、介護事業所等での実務経験、同行訓練、緊急時対応体制など、最新の要件を確認する必要があります。
2024年12月末時点の特定技能「介護」の在留者数は44,367人であり、
制度開始(2019年)からの約5年間で急速に増加しています。
Q4. 介護福祉士合格後、在留資格「介護」に変更するメリットは何ですか?
A. 在留資格「介護」は、4つの介護関連在留資格の中で最も安定的な資格です。主なメリットは以下の通りです。
- 在留期間の更新回数に上限がなく、長期的な就労が可能
- 将来的な永住申請の要件を満たしやすくなる
- 家族の帯同が認められる場合がある
- 訪問介護など、特定技能では認められていないサービスにも従事できる
Q5. パート合格制度の在留期間延長措置は、技能実習やEPA候補者にも適用されますか?
A. いいえ、適用されません。この措置は「特定技能1号」のみを対象としています。技能実習(技能実習)や特定活動(EPA介護福祉士候補者)に係る在留申請は本措置の対象外です(出典:厚生労働省Q&A「パート合格(合格パートの受験免除)の導入に基づく在留期間延長について」)。
まとめ
この記事では、介護福祉士合格率と特定技能の関係について、最新データと制度情報を交えて解説しました。
- 合格率の現実:特定技能1号の合格率は33.3%(第37回)と全体平均78.3%を大幅に下回っており、日本語力(特にN2以上)の有無が合否を大きく左右する
- パート合格制度の活用:2025年度(第38回)から導入された新制度を活用すれば、段階的な合格が可能になり、在留期間延長の特例措置も受けられる
- 施設のサポートが鍵:日本語学習支援・シフト調整・学習計画の共同設計など、施設側の積極的な関与が合格率向上に直結する
まずは、在籍している外国人介護士の日本語レベルの確認と、試験までのスケジュール設計から始めてみてください。不安な点があれば、専門家や登録支援機関への相談も積極的に活用しましょう。
【YMYL注意】本記事の制度・数値情報は執筆時点のものです。介護福祉士国家試験の合格基準・パート合格制度・在留期間延長措置の詳細は随時更新されます。最終判断は必ず厚生労働省・出入国在留管理庁の最新公的資料、または専門家(行政書士・社会保険労務士等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日(https://www.mhlw.go.jp/)…特定技能1号在留者数44,367人・受入上限135,000人・国籍別ランキング・施設種別データの根拠
- 厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験合格発表について」(https://www.mhlw.go.jp/)…全体合格率78.3%・在留資格別合格率(特定技能1号33.3%等)の根拠
- 厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験合格発表について」(https://www.mhlw.go.jp/)…第38回合格率70.1%・受験者数78,469人・合格者数54,987人の根拠
- 厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果」(https://www.mhlw.go.jp/)…EPA候補者合格率37.9%の根拠
- 厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)の導入に基づく在留期間延長について(社援発0121第10号・社援発0330第27号)」(https://www.mhlw.go.jp/)…パート合格制度・在留期間延長特例措置の条件・手続きの根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率(N1:86.7%〜N5:12.5%)・職場支援内容・受験理由データの根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年必要数240万人・2040年必要数272万人の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
