結論(30秒でわかる要点)
外国人介護士の定着率は、適切な受け入れ体制と継続的なサポートによって大幅に改善できる。
- 特定技能外国人介護士の自己都合離職率は2019年4月〜2022年11月の累計で約10.6%と報告されており、
「外国人介護士はすぐ辞める」というイメージほど離職は多くない - 定着率を左右するのは「入職前の期待値調整」「入職後の生活支援」「キャリアパスの明示」の3点
- 2040年度には介護職員が約272万人必要とされ、2022年度比で約57万人多くの人材確保が求められる見通しで、外国人介護士の活用は今後ますます重要になる
対象者: 外国人介護士の採用・定着に悩む施設長・人事担当者の方向けの記事です。
> ⚠️ 本記事で紹介する制度・統計データは執筆時点の情報に基づいています。特定技能制度や在留資格の要件は変更されることがあるため、最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁の公式資料でご確認ください。
はじめに:「採用しても定着しない」という悩みの正体

「せっかく採用したのに、1年も経たずに辞めてしまった」「日本語の壁があって、現場に馴染めなかった」——外国人介護士の採用に踏み切った施設から、こうした声を耳にすることは少なくありません。
しかし実際のデータを見ると、外国人介護士の離職率は日本人介護職員と比べても決して高くはありません。定着するかどうかは、採用後の「受け入れ体制」と「継続的なサポート」によって大きく変わるのです。
この記事では、以下の3点を中心に解説します。
- 外国人介護士の定着率・離職率の実態(最新データ付き)
- 離職につながる根本原因と、施設が取るべき具体的な対策
- 定着率を高めた施設に共通する成功パターン
外国人介護士の採用を検討中の方も、すでに受け入れていて定着率に課題を感じている方も、ぜひ最後までお読みください。
外国人介護士の定着率・離職率の実態

用語の定義
外国人介護士の定着率とは、採用した外国人介護士が一定期間を経過しても継続して就労している割合のことで、離職率(1から定着率を引いた値)と対比して語られることが多い指標です。
数字で見る「外国人介護士の離職率」
まず、外国人介護士の離職率が実際にどの程度なのかを確認しましょう。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」によると、介護職員全体の離職率は12.4%です。一方、出入国在留管理庁の資料(令和5年2月時点)によれば、特定技能外国人介護士の自己都合離職率は10.6%と報告されています。
さらに、この10.6%という数値は、2019年4月〜2022年11月という複数年にまたがる累計データをもとに算出されたものです。同じ期間を年単位に換算すると、年換算で約2.89%という非常に低い水準になります。
ただし、この10.6%は自己都合離職に限った複数年の累計値であり、年単位・全離職ベースで算出される12.4%とは算定基準が異なります。両者を厳密に比較できるわけではなく、「外国人介護士の離職が特別に多いわけではない」ことを示す参考値として捉えてください。
つまり、「外国人介護士はすぐ辞める」というイメージは、データ上は必ずしも正確ではありません。
なぜ外国人介護士の離職率は低いのか
外国人介護士、特に特定技能・技能実習の在留資格で働く方の離職率が低い背景には、主に以下の3つの理由があります。
- 在留資格の制約:離職すると在留資格の維持が難しくなるため、転職の選択肢が限られる
- 受け入れ施設の少なさ:全国老人福祉施設協議会の調査(令和4年度)によると、外国人介護人材を受け入れている施設は全体の約42%にとどまっており、転職先を見つけにくい
- キャリア形成への意欲:特定技能から在留資格「介護」への移行を目指して勉強しながら働く方が多く、環境を変えたくないという動機がある
ただし、今後は状況が変わる可能性があります。特定技能「介護」の受入見込数は、令和6年4月からの5年間で135,000人(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)と大幅に拡大されており、受け入れ施設の増加とともに転職先の選択肢も広がっていくことが予想されます。施設側が早めに定着率向上の施策を講じることが、今後ますます重要になってきます。
外国人介護士が離職する3つの根本原因

定着率を高めるためには、まず「なぜ離職が起きるのか」を正確に把握する必要があります。現場の声をもとに整理すると、主な原因は以下の3つに集約されます。
原因①:仕事内容・生活実態とのギャップ
入職前に抱いていたイメージと、実際の職場環境が大きく異なる場合、早期離職につながりやすくなります。
- 業務内容が事前説明と違った(身体介護の比率が高すぎた、夜勤が多かったなど)
- 給与や勤務条件が期待と異なっていた
- 日本での生活コスト(家賃・食費など)が想定より高く、生活が苦しかった
こうしたミスマッチを防ぐには、採用前の段階で施設の実態を正直に伝え、「期待値の調整」をしっかり行うことが欠かせません。
原因②:登録支援機関・紹介会社のサポート不足
特定技能外国人を受け入れる際には、登録支援機関による支援が義務付けられています。しかし、登録支援機関の質にはばらつきがあり、本来の支援機能を果たせていないケースも存在します。
- 外国人からの相談に母国語で対応できない
- 入職後のフォローアップが形式的で、実質的な支援がない
- 行政手続きや生活トラブルへの対応が遅い・不十分
登録支援機関を選ぶ際は、介護現場の経験者がスタッフとして在籍しているか、母国語対応が可能かどうかを確認することが重要です。
原因③:孤独感・メンタルケアの不足
異国での生活は、想像以上に精神的な負担を伴います。仕事面での困りごとだけでなく、以下のような生活面・感情面の課題が離職の遠因になることがあります。
- 職場での人間関係のストレス(文化・価値観の違いによる摩擦)
- 家族への思いや将来への不安
- 日本の行政手続きや医療機関へのアクセスに困る
- 職場以外に相談できる人がいない孤立感
「辞めたい」という気持ちは、ある日突然生まれるものではありません。小さなストレスが積み重なって限界に達するケースがほとんどです。日頃からコミュニケーションを取り、早めにSOSをキャッチできる体制が定着率を大きく左右します。
外国人介護士の定着率を上げる5つの取り組み
では、具体的にどのような施策が定着率向上に効果的なのでしょうか。優先度の高い5つの取り組みを解説します。
Step1:住居・生活基盤のサポートを整える
外国人介護士が安心して働くためには、生活の基盤を整えることが最優先です。全国老人福祉施設協議会の調査(令和4年度)によると、外国人を受け入れている介護施設のうち、寮を設置している割合は61.9%に上ります。
- 寮の提供または家賃補助の実施
- 銀行口座開設・携帯電話契約などの手続きサポート
- 病院受診時の付き添い・通訳手配
- 行政手続き(在留資格更新など)の案内
生活面の不安が解消されることで、仕事への集中力と職場への帰属意識が高まります。
Step2:入職後の日本語・業務教育を継続する
特定技能「介護」の在留資格には、日本語能力試験N4以上の合格が必要です。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルであり、日常的な声かけはできますが、介護記録の作成や家族への説明には苦労する場面もあります。
入職後も継続的な日本語教育を行うことが、定着率向上に直結します。
- 申し送りは口頭だけでなく、ホワイトボードや書面でも共有する
- 介護記録はテンプレートを用意し、定型文で書ける仕組みにする
- 緊急時の対応フレーズ(「○○さんが転倒しました」など)を一覧化して携帯させる
なお、介護福祉士国家試験の合格率は日本語レベルによって大きく異なります。N1保有者の合格率が86.7%であるのに対し、N3では25.2%、N4では25%と低下します(出典:令和6年度老人保健健康増進等事業調査)。資格取得を支援することが、長期定着につながります。
Step3:メンター制度と定期面談を導入する
職場内で「困ったときに相談できる人」を明確にすることが、孤立感の解消に効果的です。
- 教育担当(メンター)を1名専任で配置する(できれば手当を付与)
- 入職後3ヶ月は月1回以上の1対1面談を実施する
- 面談では仕事面だけでなく、生活面・精神面の状況も確認する
- 日本人スタッフと最初の1〜2ヶ月はペアで業務に入る体制をつくる
施設の規模を問わず、「最初の1〜2ヶ月のペア体制」は定着率を高める上で非常に有効です。外国人介護士も利用者も、双方が安心して関係を築けます。
Step4:キャリアパスを明確に示す
「この施設で働き続けると、将来どうなれるのか」が見えないことも、離職の一因になります。令和6年度老人保健健康増進等事業の調査によると、外国人介護士が介護福祉士国家試験を受験した理由として、「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%、「日本で長く住み続けたいため」が55.2%と上位を占めています。
長期定着の意欲が高い人材が多いからこそ、施設側がキャリアパスを提示することが重要です。
- 1年後・3年後・5年後の昇給・昇格の目安を明示する
- 介護福祉士・ケアマネジャーへのステップアップ支援を行う
- 資格取得のための勉強時間確保・受験費用補助を検討する
- 帰国を予定している場合は、帰国後のキャリアに活かせる経験を積める機会を提供する
Step5:多国籍採用と文化理解の促進
同一国籍の職員に偏ると、採用の柔軟性が下がる場合があります。複数の国籍から採用することで、通訳の偏りや国籍バランスの問題を回避できます。
また、職場内の相互理解を深めるための取り組みも効果的です。
- 朝礼やミーティング時に5分程度、お互いの文化・習慣を紹介し合う時間を設ける
- 外国人介護士の母国の伝統料理や行事を紹介してもらう機会をつくる
- イスラム教徒の職員がいる場合は、礼拝時間や食事制限への配慮を行う
定着率向上に成功した施設の事例

事例①:小規模施設(グループホーム)でのメンター制度導入
関東のあるグループホームでは、外国人介護士を受け入れた当初、業務上のコミュニケーションに課題を抱えていました。そこで、日本人ベテランスタッフを教育担当として1名専任し、日々の業務の中で困ったことをすぐ相談できる体制を整えました。
また、利用者・ご家族への事前説明会を実施し、外国人スタッフが入職することを丁寧に案内。業務開始前に顔合わせの機会を設けたことで、利用者の不安感が大幅に軽減されました。
その結果、入職から1年が経過しても全員が継続就労しており、「外国人スタッフが来てから職場全体が明るくなった」という声も聞かれるようになったといいます。
学び: 少人数だからこそ、担当者を明確にすることが大切。距離の近さを活かしたメンター制度が信頼関係の早期構築につながった。
事例②:大規模施設(老人保健施設)での段階的配置
西日本のある老人保健施設では、外国人介護士を受け入れるにあたり、一度に全部署に配置するのではなく、まず日勤帯の特定フロアからスタートする方針を取りました。最初の2ヶ月間は日本人スタッフとのペア体制で業務に入り、慣れてから配置を広げていきました。
また、リーダー層への事前研修を実施し、多国籍チームのマネジメントに必要な知識を共有。介護記録はテンプレートを整備し、チェックリスト方式で業務を細分化することで、OJTの負担を最小限に抑えました。
学び: 組織として受け入れ体制を一度構築すれば、2人目以降の受け入れがスムーズになる。制度として「回せる仕組み」をつくることが大規模施設の強み。
よくある質問(専門家に聞く)
元看護師・介護福祉士であり、GENSAI Career Consulting Corp代表の大町潤一氏に、外国人介護士の定着に関するよくある疑問をお聞きしました。
Q1. 過去に外国人介護士が定着しなかったのですが、原因は何だったのでしょうか?
「その気持ち、よく分かります」と大町は共感を示します。
定着しなかった理由で最も多いのは、「入職前の期待値と、入職後の現実のギャップ」です。
よくあるケースとして:
- 日本語レベルが実際の業務に追いついていなかった
- 生活面でのサポートが不十分だった
- 職場の受け入れ体制が整っていなかった
「ただ、これは改善できるポイントなんです」と大町は前向きに語ります。
私たちは、現地での面接時に「ここまでできるか」を丁寧に確認し、入職後も定期的にフォローする体制を整えています。
「一度失敗した経験があるからこそ、次はしっかりサポートさせていただければと思います」
Q2. 途中で辞めてしまうリスクは、どうやって減らしていますか?
「過去に失敗された経験があるなら、その原因をまず一緒に確認したいです」と大町は言います。
離職を防ぐための仕組みとして、大町氏は4つのアプローチを挙げます。
1. 入職前のミスマッチ防止
- 現地面接で施設の実態を正直に伝える
- 労働条件・生活環境を明確にする
- 「期待値調整」をしっかり行う
2. 入職後の定期フォロー
- 月1回の面談(最初の3ヶ月)
- 困りごとを早めにキャッチ
- 施設側と本人、両方の話を聞く
3. 生活面のサポート
- 住居トラブルの対応
- 病院の付き添い
- 行政手続きのサポート
4. キャリアパスの提示
- 昇給・昇格の基準を明確に
- 資格取得のサポート
- 将来の可能性を示す
「『辞めそうだ』と感じた時には、もう手遅れなことが多いです。日頃からコミュニケーションを取ることが一番の予防だと思います」
制度に関するよくある質問
Q3. 外国人介護士の定着率を上げるために、施設側に必要な資格・認定はありますか?
特定技能外国人を受け入れる場合、施設は「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、支援義務を果たす必要があります。自社で対応することも可能ですが、登録支援機関(月2〜4万円/人程度が相場)に委託することで、事務負担を大幅に軽減できます。定着率向上のためには、登録支援機関の質を見極めることが重要です。介護現場の経験者がスタッフとして在籍しているか、母国語対応が可能かどうかを確認しましょう。
Q4. 外国人介護士の定着率と日本語レベルには関係がありますか?
大きな関係があります。入職時の日本語レベルが低いと、業務上のコミュニケーション不足からストレスが蓄積しやすくなります。特定技能「介護」ではN4以上が必要ですが、N3以上で入職する人材が増えており、定着率も高い傾向にあります。また、介護福祉士国家試験の合格率はN1保有者で86.7%、N3で25.2%と大きく差があるため(令和6年度老人保健健康増進等事業調査)、入職後の継続的な日本語教育が資格取得と長期定着の両面で効果を発揮します。
Q5. 特定技能の外国人介護士はどの国籍が多いですか?定着率に国籍差はありますか?
2024年12月末時点の特定技能「介護」在留者44,367人のうち、国籍別の上位5か国はインドネシア(27.6%)、ミャンマー(26.4%)、ベトナム(20.1%)、フィリピン(10.2%)、ネパール(8.1%)で、この5か国で全体の9割以上を占めます(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日)。国籍によって文化的背景や宗教的習慣が異なるため、一概に「この国籍が定着しやすい」とは言えません。それぞれの文化・習慣への理解と配慮が、定着率向上の鍵となります。
参考:在留者数 約6万8千人(2025年12月末速報値)
Q6. 訪問介護でも外国人介護士を受け入れられますか?
2025年4月から、特定技能および技能実習の外国人介護士が一定の条件のもとで訪問系サービスに従事できるようになりました。それまで施設内に限られていた活躍の場が広がっています。ただし、訪問介護は「1対1」での対応が基本となるため、同行訪問からの段階的な独り立ちや、訪問先ごとの対応シートの整備など、施設介護とは異なる受け入れ体制が求められます。制度の詳細は最新の厚生労働省・出入国在留管理庁の公式情報でご確認ください。
Q7. 外国人介護士の採用コストはどの程度かかりますか?
在留資格や採用ルートによって異なります。特定技能の場合、紹介会社への手数料(無料〜数十万円)、登録支援機関への委託費(月2〜4万円/人程度)、住居の準備費用などが主なコストです。技能実習の場合は送り出し機関への費用や監理団体への管理費が加わります。初期投資は必要ですが、長期定着した場合の採用コスト削減効果は大きく、定着率を高める施策への投資は中長期的に見てコストパフォーマンスが高いといえます。
まとめ
外国人介護士の定着率について、この記事で解説した要点を整理します。
- データ上、外国人介護士の離職が特別に多いわけではない:特定技能外国人介護士の自己都合離職率は複数年累計で約10.6%と報告されている
(※年間・全離職ベースの12.4%とは算定基準が異なるため、単純比較ではなく参考値) - 定着率を左右するのは「受け入れ体制」:離職の主な原因は、入職前のミスマッチ・生活支援の不足・孤立感の3つ。いずれも施設側の工夫で改善できる
- 早めの対策が競争優位につながる:特定技能「介護」の受入見込数が5年間で135,000人に拡大されるなか、受け入れ施設間の「定着率の差」が人材確保の優劣を分ける時代が来ている
まずは自施設の受け入れ体制を見直し、「メンター制度の導入」「定期面談の実施」「キャリアパスの明示」から始めてみることをおすすめします。外国人介護士の採用・定着に関して専門家への相談をご希望の方は、GENSAI Career Consulting Corpの無料相談をご活用ください。
> ⚠️【YMYL注意】本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。特定技能制度・技能実習制度・在留資格に関する要件は変更されることがあります。採用・受け入れに際しては、必ず最新の公的資料および専門家(行政書士・登録支援機関等)にご確認ください。
出典・参考
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」令和7年3月28日…特定技能受入上限135,000人・国籍別ランキング・在留者数推移の根拠
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」…2026年・2040年の介護職員必要数(240万人・272万人)の根拠
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」…介護職員全体の離職率12.4%の根拠
- 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第3回)資料」…特定技能外国人介護士の自己都合離職率10.6%の根拠
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」…日本語レベル別合格率・国家試験受験理由・職場支援内容の根拠
- 全国老人福祉施設協議会「令和4年度外国人介護人材に関する実態調査結果」…外国人受け入れ施設割合(約42%)・寮設置割合(61.9%)の根拠
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れに関する調査」(2020年)…外国人介護人材のサービスに「満足」と回答した利用者割合(65.1%)の根拠
この記事の監修者
大町潤一(看護師・介護福祉士)
GENSAI Career Consulting Corp 代表
フィリピン人介護士の人材紹介・送り出し事業に2015年〜現在(10年以上)携わる。
